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召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?  作者: 島ノ松月
地球激動編

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地球激動編 1-184 異世界の大召喚術師、故郷に帰還する (前編)

異世界の大召喚術師、故郷に帰還する (前編)


惑星サモナルドに温泉施設を造る計画を立てている大召喚術師エンペラールは、物部かすみと神室霊華の2名を伴って、日本にある温泉施設を見学した。そしてその成果を元に自分でも満足の行く施設を設計することが出来て、今はほぼ日課となっている朝の露天風呂に浸かりながら、昨日の事を思い出していた。そんなエンペラールの元に、「おはようございます」とかすみが挨拶を掛けながら露天風呂にやって来た。そして朝の新鮮な空気を胸一杯に吸いながら2人で温泉ライフを楽しんでいる。


  「エンペラールさん、今日でお別れですよね」


とかすみは防水処理を施した翻訳イヤホンをエンペラールに渡してから、その件を確認した。エンペラールは頷いて、


  「はい、今日で皆さんとはお別れになりますね。

   何だか長いような、短いような感じです」


  「うちは短く感じたから、もしかして

   エンペラールさんは凄く濃い1日を

   送ってたんとちゃいますか?」


  「そうね~、レイさんと召喚術の話をしていると、

   まさにそうなるのよね~」


何時も驚きっ放しでそれを処理するのに脳を働かせ過ぎてたからだ、と笑いながらかすみにそう答えた。かすみも苦笑いを浮かべながら


  「まあ、あいつと召喚術の話を始めると、

   確かに見境が無くなるからなー」


相手の事はお構いなしに、周りのことが見えなくなると嘆くのである。


 さてかすみとエンペラールが朝の楽しみを堪能した所で、母屋に戻ると玲が朝食の準備を終えたところであった。


  「あっ、丁度できたところだから、

   良かったら食べようか?」


と言うことで、エンペラールの日本での最後の和食となった。


  「はぁ、これで玲さんの作った和食を

   食べ収めですね~」


と溜息をつきながらエンペラールは寂しくそう呟いた。玲も彼女にかける言葉が見当たらない。だがかすみは、


  「でも、サモナルドなら1年後には

   また召喚されんねんから、

   1年後の楽しみにしておくのも

   ありと思いますよ!」


とにこやかな表情で前向きな言葉をエンペラールにかけた。エンペラールもかすみのその言葉で元気づけられたのか、


  「そうですよね~、ロムリアの1年後には

   またお邪魔できますから、

   その時にじっくりと堪能しますね~」


と笑顔になって玲とかすみにそう答えた。玲は、こういう時のかすみの受け答えの絶妙さに、何時もながら感心してしまう。そして


  「エンペラールさんを気遣ってくれて

   有難うね、かすみ」


と真面目な表情でかすみにお礼を伝えるので、かすみはあたふたしてしまう。そんな2人を優しい眼差しで見つめるエンペラールは、


  「ロムリアの半年後、地球だと1年後ですね、

   お2人を必ずロムリアに召喚しますから、

   それまで心待ちにしていてくださいね!」


と2人への感謝の意味を込めてそう伝えた。そして3人の少し賑やかな朝食を終えた所で、かすみは一度自分の離れに戻って行った。そして直ぐに母屋に戻ってきた時、手にしたフォトブックをエンペラールに渡した。


  「うわー、これってセラちゃんが

   貰ったのと同じですよね?」


とエンペラールは目を輝かせながら早速フォトブックのページを開いた。そこにはこの1カ月程の間に撮られたエンペラールを中心とする写真が収められていた。初めて地球にやって来た時の緊張した表情のエンペラールや、タチアナから送ってもらった視察先でのエンペラールの様子を目にすることが出来る。そして最近撮ったユニバでの楽しい時間を過ごした神室霊華を含む3人の姿や、つい先日の水着姿の3人まで、意外と多いボリュームで構成されていた。そして全てに目を通し終えたエンペラールは、フォトブックを大事に胸に抱えて、


  「カスミさん、これ大事にしますね。

   有難うね!!」


とお礼を伝えた。かすみも喜んでもらえれて何よりであった。その後かすみは、「ほな、うちはちょっと神薙家に行ってくるな!」と言ってそのまま差間見町に転移した。今日は週末のため神社仕事は休みなのだが、何やら神薙家からの呼び出しがあるようで、かすみは渋々と言う感じで神薙家に向かった。


 一方の玲は、今日一日、エンペラールに付きあう心算なのだが、エンペラールに何かやり残したこととか、行きそびれた所とか無いかを尋ねるも、特にないとのこと。そうであれば、後は何時もの召喚術談議となるのだが、丁度その時、神室霊華が自宅から転移してやって来た。


  「あぁー、良かった。

   まだ戻られてはいなかったんですね」


とエンペラールがまだ別荘に留まっている様子を目にして、安堵の表情を浮かべていた。


  「神室さん、お仕事は大丈夫ですか?」


と玲は心配そうに神室霊華に問い掛けると、今日は9時に1件と午後から立て続けに3件の予約があるという。ただし、その前にエンペラールに渡すものがあるということで、急ぎやって来たらしいのだ。


  「こちらをエンペラールさんに

   受け取ってもらおうと思いまして...」


と神室霊華がエンペラールに差し出したのは片手で持てるほどの細長い箱である。エンペラールが「開けてもいい?」と尋ねるので、神室霊華は「どうぞ、開けて見てください」と答えた。そして(おもむろ)に蓋を開けて中を見ると、そこには大粒のルビーをトップにあしらった装飾の見事なネックレスとルビーのイヤリングが収められていた。エンペラールは目を丸くして、その2つの品を凝視する。そして暫くして、我に返ったのか、一言「す、凄い」と呟いた。


 惑星サモナルドではルビーが殆ど産出されない。理由はよく分かっておらず、もしかして地中深くとか、あるいは膨大な広さの未開の土地のどこかに眠っているだけなのかもしれないが、何れにしても誰も確認したことは無い。そのため、エンペラールが手にしているこの大きさのルビーを見つけることは、至難の業とも呼ばれそうだ。エンペラールは手の震えを何とか抑えながら、それを箱から取り出した。玲が箱を受け取り、神室霊華がエンペラールの後ろに回ってネックレスをつける手伝いをする。エンペラールはイヤリングを自分の耳に付けた所で、玲が姿見を召喚した。そしてエンペラールは自分の姿をそこに見るのだが、Tシャツ姿にはやはりルビーの主張が強過ぎるようで、「これは正装した時に着用すべきですね~」との感想を口にした。それでも、やはりルビーの魅力にうっとりとした表情を漂わせている。そして漸く、隣でエンペラールの姿を見つめている神室霊華に向かって


  「レイカさん、こんな素敵なプレゼント、

   貰っても良いのかしら?」


と真剣な表情で尋ねるので、神室霊華は「是非、受け取ってください」と笑顔で答えた。するとエンペラールは、突然神室霊華を抱きしめて、「有難う、レイカさん、大事に使わせてもらうね」と感謝の言葉を伝えた。


 それから神室霊華は手にしているもう一つの箱をエンペラールに差し出す。それは


  「実は、タチアナさん、じゃなくて

   セラスティナさんにですが、

   これを渡して頂けますでしょうか?」


と装飾が異なるが同じ品質のルビーをあしらったネックレスとイヤリングをタチアナに渡して欲しいとお願いした。


  「本当はセラスティナさんが帰還される前に

   お渡ししたかったのですが――」


注文していた品物が運悪くタチアナが帰還した翌日に届けられたというのだ。それを聞いたエンペラールは、


  「もう、セラちゃんのせっかちな所が、

   こういう事になるんだよね~」


とここに居ないタチアナに文句を言い出すが、その顔に嫌悪感は一切なく、可愛い弟子の態度に愚痴を零していただけという雰囲気てある。勿論、エンペラールは二つ返事でそれを預かり、帰還後にセラスティナに渡したことは言うまでもない。


  「ところで玲さん、エンペラールさんは

   何時頃お帰りになられるのでしょうか?」


と神室霊華は玲に帰還スケジュールを尋ねた。もし間に合えば見送りたいというのだが、


  「タチアナさんと同じように、

   こちらの午後7時少し前に

   パリのタチアナさんの別荘に移動しまして、

   そこでお帰り頂く予定です」


と玲はそのようなスケジュールを神室霊華に伝えた。神室霊華はホッとした表情を湛えて、「では、夕方にまたご挨拶させて頂きます」と言いおいて、そのまま自宅に転移して戻った。


  「レイカさん、お忙しそうね~」


とエンペラールは心配そうな表情で玲にそう呟く。本来であれば、神室霊華も週末は休みなのだが、お盆の期間中に受けていた降霊の依頼を先送りしていたことのツケが回って来た訳である。とは言え、彼女もそれを承知で、やはり異世界からやって来たエンペラールとタチアナを持て成したかったため、週末の仕事も苦にならないのである。そのような事情を玲から打ち明けられたエンペラールは、少し目に涙を溜めて


  「私もセラちゃんも、ほんと、

   人に恵まれてるわよね~」


との感想を口にするのだった。

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