地球転生編 2-26 最神玲と物部かすみの卒業旅行inパリ(後編)
最神玲と物部かすみの卒業旅行inパリ(後編)
ロムリアのファッションショーが無事終わったことで、残りの時間は、最神玲と物部かすみの自由行動となった。ただし、自由行動とは言っても、言葉の通じない世界であるため、結局は案内をゲラルドにお願いすることになった。一応、定番の観光スポットとして、エッフェル塔、ルーブル美術館、ベルサイユ宮殿などなどを見て回ったが、特に玲が興味と言うか、ある意味親近感を持ったのが、オペラ座ガルニエ宮である。玲がそんなにオペラ好きかと言うとそうではなく、ガルニエ宮そのものへの興味であった。玲ことカーンフェルトがガルニエ宮の外観や内部の大階段を見た時、そこに纏う雰囲気がどことなくケンタリアの議会議事堂を思わせるものを感じたため、ほんの一瞬だが自分がケンタリアに居る錯覚をしたのであった。ケンタリアの議会議事堂は、その外観の豪華さから人気の観光地である。そして、内部にはガルニエ宮と同じ大階段があるものの、階段の踊り場には歴代の執政官の肖像画や議会議長の彫像などが飾られているのに対し、ガルニエ宮は天井が高いお陰で非常に立体的な印象を与え、更に大階段の上り口にある燭台を掲げる女性の彫像を始め数々の彫刻や彫像で大階段が彩られ、加えて豪華な天井画という、ある意味美術館に居るような印象を受けた。
後は、折角だからということで、あまり知られていない観光スポットや隠れ家的な店などをゲラルドに案内してもらい、玲もかすみも満足のいく日々を送った。そして、日本人あるあるではないが、やはりお土産は不可欠と言うことで、お土産を買って帰ることになるのだが、とある免税店で
「かすみ、心霊サークルへのお土産とかどうする?」
「ん?あぁ、彼らのへの土産ね。
そうね、饅頭とか煎餅とかでええんとちゃう?」
とは冗談か本気か取れない玲である。しかし、流石の玲でも、かすみの謎の方言から察して「パリに饅頭や煎餅が売ってる訳ないやん」とかすみに突っ込んだのであったが、これはかすみにとっては大正解。玲のこの的確な突っ込みに対し満足したかすみは、
「いやいや、冗談やて。
それよりも、玲君も腕上げたねー。
うん、感心感心!
あー、それで皆へのお土産ね。
チョコとかあったら良いかもしれないね。
どうだろう」
とアドバイスするのだった。後は、自分の両親へのお土産となるのだが、正直玲ことカーンは、玲の両親が何を好むのかが分からない。そのため、どうしようか悩むのであるが、ここでもかすみの的確なアドバイスが。
「玲のお父さんは、確かお酒が好きだったから、
ブランデーとかコニャックはどうかな?
確かコニャックってフランス原産の
お酒だったんじゃなかったっけ?
それと、玲のお母さんは甘い物が
好物だったと思うんで、
チョコとかクッキーとかってのはどう?」
と聞かれても酒の事は全く分からない玲である。そこで、案内してもらっているゲラルドに尋ねると、
「はい、コニャックはフランスの代表的なお酒で、
ブランデーの一種ですよ。
そうですね、日本でも名前が知られているのは、
ヘネシーとかレミーマルタンとかでしょうか。
その中でもV.S.O.P.とかXOの等級があるものが
人気ですね」
と言うことで、その名前のコニャックを買ってお土産とすることにした。ところで、かすみはと言うと
「うーん、何にしようか迷うな」
と言って見つめていたのは、化粧品。お母さんへのお土産なの、と尋ねると、自分用との返事が。えっ、自分用ですか。玲は自分用に土産を買うという考えが全くなかったので、かすみの言葉を聞いても「何言ってんのこの人」みたいな感覚になるのだった。そして、30分程悩んで漸く化粧品を買ったのだが、
「かすみ、ご両親へのお土産は?」
と尋ねると、いらないとの返事。え、何で、と誰もが疑問に思うことを口にしたが、かすみの返答は
「だって、うちの両親、
私がフランスに行くこと知らないし」
と言うことだった。な、な、何と言うドライな親子関係なのだろうか。まあ、他人の関係に口出しできる程に人生経験を積んでいる訳ではない玲なので、これ以上何も言わないが。結局、かすみはほぼ自分のための買い物と、後は友人用に幾つか化粧品を買っただけとなった。なお玲は、ゲラルドの2人の娘さんたちのために、ちょっとしたアクセサリーと言うか、ペンダントを購入して彼に渡した。このプレゼントには、流石にゲラルドも予想しておらず、思わず遠慮しそうになったのであるが、玲が彼への感謝を込めたプレゼントだと強調して受け取ってもらった。こうして、玲とかすみのパリ滞在は幕を閉じるのであった。
そして、玲とかすみの帰国する日を迎えた。長いような短いような日々を過ごしたホテル・リッツ・パリのスイート・アンペリアルとも別れを告げ、二人は見送りに来たタチアナと共に車に乗って、シャルル・ド・ゴール空港へ向かった。
無事日本に帰国して何時もの下宿で寛ぐ玲の元へ、タチアナから玲のお礼メールに対する返信が届いた。そこには、
[今回は余りお構いできなくてごめんね。
でも、レイ君とカスミさんと過ごした時間は、
とても楽しかったわ。
また何時でも良いのでこちらに遊びに来てね。
ちなみに、まだ私はサモナルドへ
帰還するかどうか迷ってますが、
近いうちに結論を出せたらと思ってます。
もしその時が来たら、
レイ君にもお手伝いしてもらうかもしれないので、
そのときは宜しくね。
タチアナ]
と書かれていた。何れは、タチアナはサモナルドに帰還するんだろうな、と心中で思う玲である。そしてもし自分だったらどうするんだろうと、思わずにはいられなかった。でも、お構いなくって、いやいや、十分過ぎる歓待を受けましたよ、と一人呟く玲である。彼の目の前には、ファッションショーで着たロムリアの衣装がハンガーに吊るされていた。
さて、玲とかすみがフランスから帰国したその日、パリのロムリア本社の社長室ではタチアナとゲラルドがサモナルド語で話し込んでいた。
「ゲラルド、お疲れ様。
どうでした、レイ君とカスミさんは。
なかなか面白い方達でしょう」
「どうも、お気遣い有難うございます、
セラスティナ先生。
ええ、彼らはユニークでしたね。
しかし、彼、レイさんの方は…」
「あら、あなたも気づいたのね。
まあ、当然か、私の弟子だもんね。
そうなのよ、あの馬鹿げた召喚エネルギーね、
エンペラール先生と同じか、
もしかしたら越えているんじゃないかな」
「えっ、そ、そんなに凄いんですか。
すいません、私にはそこまでは
把握できませんでした。
ただ、はい、失礼を承知で申しますと、
セラスティナ先生よりかは
確実に多いのは感じました」
そうなのよね、とタチアナはコロコロと笑うのである。
「ところで、先生、
例の計画はどうなんでしょうか。
実行に移せそうですか?」
「ええ、遂に最後のピースが嵌ったわ。
これで帰還計画は遂行できそうよ」
そうですか、それはおめでとうございます、とゲラルドは心から祝福した。
「それよりも、ゲラルド、
あなたの方はどうするの。
やはりここに残りますか?」
「はい、私には妻と娘がおりますので、
こちらに残って生涯を終えようかと思います」
ゲラルドも当初はタチアナとロムリアに帰還する日を夢見ていた。しかし何年経っても全く帰還の目途が立たず、転移術のエキスパートであるセラスティナを以てしてもロムリアへの帰還は一生適わないのだろうと諦めて、ゲラルドは地球で所帯を持つ決意を固めたのであった。
「そうか、残念ね。
でも、確かに霊界経由での転移となると、
私達ならまだしも、
子供たちが霊界で耐えられるかどうかは
分からないものね」
タチアナの帰還計画は、玲が見つけた降霊転移召喚門を経由して霊界に赴き、そこから転移でロムリアに帰還する計画である。しかも、霊界を熟知した円空なる僧形の人物(か霊体か)によると、ロムリアに通じる場所を知っているという。後は、タチアナの決心だけになったのである。
「まだ、何時帰還するかは決めてないんだけど、
そのうち決意が固まったら
あなたに真っ先に報告するわね」
はい、有難うございます先生、と言って、ゲラルドはタチアナの部屋から出て行った。一人残ったタチアナは、机の上で両手を組み、何かに祈るようにそこに額を預けて目を閉じた。




