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召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?  作者: 島ノ松月
地球激動編

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地球激動編 1-172 タチアナの2度目の帰還 (前編)

タチアナの2度目の帰還 (前編)


M&Mの最神玲、物部かすみ、神室霊華の3人と、大召喚術師エンペラールとその愛弟子のセラスティナことタチアナ・エグリスコバ、そして都市国家ロムリアの王女であり、現在は地球のロンドンに住む2人の子供を持つヴェレニエラの3人を加えた6人は、只今M&Mの別荘のリビングにて、余りの疲労からかソファーにぐったりともたれかかっている。彼らがここまで疲労困憊(こんぱい)した原因、それはその日の午前中、6人で月旅行を楽しみ、昼食を挟んだ午後からは、更に遠いどこにあるか分からない惑星に飛ばされてしまい、今何とか無事に戻って来たためである。日帰りの海外旅行ではなく、日帰りの宇宙旅行からの帰宅であった。


 更にその道中で宇宙人に遭遇するし、物部かすみが言うところのデス・スターと呼べそうな謎の巨大衛星への訪問までおまけとしてついて来る。流石に6人の中では一番若いM&Mの3人でも、宇宙と地球を何往復もするという体験は当然したことは無く、しかも宇宙人達からは何時襲われて命を失うか、ハラハラドキドキしながら時間を過ごすという行為は、肉体的な疲労だけでなく、精神的な疲労も負わされてしまう。そのためか、もう夕方でありこれから夕飯の準備をしないといけないと思いつつ、どうしても体が動かない。このような心身ともに疲れた時は、やはり


  「こういう時こそ温泉やー!」


とかすみが気力を振り絞って声を上げるが、この時ばかりは全員同じ思いであったようだ。そして重い腰を上げた一行は露天風呂に直行した。


  「うわ~、まじ生き返る~」


  「本当に、そうですね。

   疲れが全て綺麗に無くなる感じです」


とかすみと神室霊華の師弟コンビはお互いにそのような感想を口にした。そして神室霊華は、何時ものように真ん中の仕切りを外すと、やはり玲も心から楽しそうな表情で湯に浸かっている姿を目にした。そしてお約束のように


  「何や、玲、自分も入ってるんか?」


とかすみが嫌味を言うのだが、玲は「あー、はい、はい」と軽くあしらうに留めた。何時ものかすみなら、そんな不遜な態度を許すはずもないのだが、この時はやはり疲れが溜まっていたため「ちっ」と舌打ちするだけに留めた。そしてそんな2人を他所に、他の4人は温泉に浸かってゆったりとした時間を過ごすのだった。


 露天風呂で心身ともにリラックスした6人だが、母屋に戻って来た途端、やはりあの人の体内時計は正確なようで、直ぐに「ぐぅー」と言う音を立てた。かすみは照れながらも


  「ははは、全く、うちの体内時計は正確やねんなー」


と口にするが、実はかすみだけでなく、全員が丁度空腹を感じ始めていたところである。そんな時、神室霊華が今ある食材をチェックし始めた。


  「野菜は十分にありますね。

   後は牛肉と豚肉の冷凍スライスがありますから、

   野菜炒めとかは直ぐに出来そうですね」


  「えっ、野菜と肉があるんやったら、

   カレーにせぇへん?」


  「でも師匠、カレールーがありませんけど...」


  「ほな、玲に買いに行かせよか!」


と何やら献立は決まったのだが、その中に何故か玲が買い出しに行くことまで勝手に決められたようで、玲は憮然とした表情でかすみを睨み付けていた。こういう場合、この2人はまた何やら言い合いをして収拾が付かなくなりそうな予感しかしない神室霊華が


  「師匠、そうやって一人で色々と進めると

   また問題が起きますよ!」


と昨年末のことを踏まえてかすみにそう助言した。一方で、


  「買い出しであれば、私が行ってきますので、

   玲さん、こちらをお願いできますか?」


と玲にはこちらを手伝ってもらうことを提案した。そうなると玲としては、神室霊華の言葉に甘える訳にはいかないため、


  「大丈夫ですよ、神室さん。

   僕がちょっと行ってきますからね。

   カレー粉は中辛でよかったかな?」


と玲はかすみをあえて無視して神室霊華に尋ねた。神室霊華は苦笑いを浮かべつつ、「はい、それでお願いします」と伝えた。今度はかすみが何やら憮然とした表情で玲を睨み付けるが、そもそもこうなったのは自分の蒔いた種が原因であることを自覚すべきであろう。そして残った2人は、手分けしてカレーとご飯の準備を始めた。


 玲が戻って来て早速カレールーを鍋に投入すると、部屋中がターメリックを始めとする様々な香辛料が混ざった刺激的な香りで充満する。そして、その匂いに釣られて、誰のお腹であれ今直ぐに鳴りだそうとする。やがて全員分のカレーを盛りつけた皿がダイニングテーブルに並べられると、早速全員で「いただきます」と唱和して食べ始めた。やはり皆空腹であったのか、ただ黙々と食べ進める。そしてある程度空腹が緩和された所で、誰からともなく今日の出来事の感想を口にした。


  「しっかしなー、宇宙を2往復するとは

   思わんかったなー」


  「まあ、最初のは分かってやったことだけど、

   2回目は、あれ、かすみのせいだからな」


  「はぁ?何やろな、玲さん、

   うちに喧嘩売ってんのか?」


お腹が満たされたからか、玲とかすみは何やら不穏な空気を醸し出す。しかもかすみは、マキザッパのスタンバイオーケーだ。そしてこういう時は、神室霊華が1つ溜息をついて


  「2人とも、折角お腹が満たされたというのに、

   もう直ぐに運動ですか?」


と遠回しにだが2人を非難した。玲とかすみは、何時ものように縮こまって「ごめんなさい」と謝るのだが、そんな時にタチアナが笑いながら


  「もう、2人とも、一緒になったらどう?」


と思いっきり横からの奇襲攻撃を仕掛けて来た。これにはかすみが顔を赤くしながら「ムリ、ムリ、ムリ」と速攻で否定する。玲も同時に俯き加減で「ない、ない、ない」とこちらも否定する。こういう時だけは何やら息の合ったコンビである。そしてタチアナが


  「それだけ息がピッタリ合うんだから、

   お似合いだと思うけどなー」


とニヤニヤしながら玲とかすみを更に弄りだした。そして神室霊華に向かって


  「レイカさん、何とかこの子たちを

   一緒に出来ないかなー?」


と相談を始めた。これには神室霊華は「は、はぁ」と溜息をつくが、心の中では


  “私も独身なんですけど!!”


と叫んでいたが、残念ながら誰にも気づいてもらえない。そして何やら自分達の身に更に何かが降りかかりそうだと察知したかすみは、咄嗟に


  「タ、タチアナさん、そそ、そんなことより、

   ちょっ、ちょっとお願いがあるんですが...」


と言葉を詰まらせながらも、タチアナに向かってあるお願いを申し出た。それは、


  「来年のこの時期に、うちもロムリアに

   召喚して欲しいんですが...」


と言う突然のかすみからのロムリアへの召喚の申し出である。これには申し出をされたタチアナだけでなく、玲も神室霊華も驚きで目を丸くしていた。そんな3人の反応を他所に、かすみはなぜ召喚して欲しいのかを淡々と語った。


 かすみがロムリアに行きたい理由、それは自分のファッションデザイナーとしての更なる高みを目指してである。昨年のこの時期に玲がロムリアから持ち帰ったロムリアの端末。そこに表示されるロムリアの数々の衣装の色どりもそうだが、つなぎ服と言う一見するとワンパターンに陥りそうなデザインに対し、個性豊かな装いを目にしたかすみは、なぜこのようなデザインになったのか、どういう思考でそうなったのかが気になって仕方ないという。


  「うちは、玲みたいに召喚術が

   優れている訳ちゃうから、

   エンペラールさんやタチアナさんの

   お役には立たれへんと思うけど...」


でも仕事の邪魔をしないようにこれから玲にサモナルド語を教わる心算だとも付け加えた。そして


  「ただ、うちらの神社の仕事があるから、

   多分玲が戻って来てからになると思うねんけど...」


と独りでロムリアに召喚されることへの不安な心情を滲ませながら、そこで話を終えた。タチアナは腕組みをして考えるも、そこにはかすみを召喚するかどうかの判断は既に存在しない。むしろかすみが来たいのであれば大歓迎である。ただし、かすみ1人だけを後で召喚することに対する不安が無い訳ではなかった。


 そんな時、神室霊華がかすみに向かってこう伝えた。


  「師匠、神社の方は私がお手伝いに伺いますから、

   玲さんと一緒に行かれてはどうですか?」


  「霊華さん、その申し出は嬉しいねんけどな、

   やっぱ自分の勝手な都合で霊華さんに

   迷惑かける訳にはいかへんからな」


ここはちゃんとけじめをつけさせて欲しいとかすみは神室霊華にそう主張した。何時もの神室霊華であれば、かすみの必死の訴えをそのまま受けていたのだが、この時は少し違うようで


  「師匠、私の事を信用されてないんでしょうか?」


と神室霊華はかなり落ち込む素振りで、逆にかすみにそう訴えた。まさか神室霊華がそこまで自分の事を思っていたとは知る由もないかすみは、かなり動揺し出した。そして暫し2人の間に沈黙が降りたのだが、かすみが漸く口を開いた。そして、


  「霊華さん、有難うな。そんなにうちの事

   思ってくれてたんかと思うと、

   涙が出て来そうやわ」


と言いながら、本当に目に涙を溜めていた。


  「じゃあ、霊華さんの言葉に

   甘えさせてもろうてもええかな?」


  「はい、どんどん甘えて下さい。師匠!」


と何やら2人の間で意見がまとまったようで、かすみは


  「タチアナさん、ほな、

   玲と一緒に召喚してもらえますか?」


と今一度タチアナにお願いをした。タチアナは、ニコニコしながら


  「折角だから、2人の新婚旅行、じゃないか、

   婚前旅行と言うことにしようか!」


と再び核兵器級の爆弾をかすみに投下した。これには玲もとばっちりを受けたようで


  「タ、タ、タチアナさん。

   それはちょっと勘弁してくださいよ!」

  「うちも、まだこいつと一緒になる気は

   ありませんよ!」


とこういう時は何故か2人は息ピッタリで否定した。だがタチアナは


  「まあまあ、そんなこと言わずに、

   どうせ一緒に召喚するんだから、

   良いじゃないの!」


と彼らの否定を気にも留めない。そしてエンペラールに向かって


  「先生、と言うことで

   2人の婚前旅行を兼ねて召喚しますが、

   宜しいでしょうか?」


と確認を求めた。エンペラールはこの話の結末がどうなるか心配で仕方なかったが、どうやら無事に収まったようで


  「了解しました。では2人をロムリアに

   正式にご招待しますね!」


と言うことで、玲とかすみは2人揃って1年後にロムリアに召喚されることになった。そしてかすみはと言うと、まだ婚前旅行と言う言葉に動揺しつつも


  「ほ、ほな、後でうちを召喚してもらうための

   血液を用意しておきますね」


とタチアナにそう伝えた。そしてかすみも召喚されることになったことに対し、


  「カスミさんが一緒だと私も心強いですよ!!」


とヴェレニエラがかすみに向かって力強くそう伝えるが、やはり親しくなった仲間が一緒だと心強く感じるのだった。こうしてかすみの知らない所で、実は多くの人達がかすみのことを応援したり頼りにしていたのだということを、かすみはこの時強く感じた。そしてタチアナの帰還だが、日本時間の明日の夕方、召喚門を設置しているパリだと正午に帰還することに決まった。

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