地球転生編 2-1 最神玲、実家を出る
最神玲、実家を出る
最神玲が交通事故による意識不明の重体から奇跡の回復をして、2カ月程経過した7月上旬のある土曜日。この日は待ちに待った(?)彼の下宿への帰還日、いや、正確には実家を出る日となった。なぜ帰還日ではないのか? それはこの日よりも少し遡る必要がある。
玲ことカーンフェルトだが、彼は実のところ、現状に大きな不満などは無かった。実家に居る分は食と住は何の問題もなく、特に食に関しては母親の手料理(時にデリバリあり)を毎日頂けるので、玲からすると子供の頃を思い出して何か嬉しくなるはず。ところが、その中身であるカーンからすると、全く見ず知らずの赤の他人の家に上がり込んで、至れり尽くせりで歓迎されることと同じ。流石のカーンもそこまで神経が図太くはないので何か手伝おうとするも、「あなたは、先ずは自分の怪我の養生に努めなさい」などとやんわりと断られる次第で、何とも居たたまれない気持ちにされるのである。そのため、今の玲からすると、食住の保証された環境にいるよりも、大学のある東洛市に戻る方が気持ち的には楽になるので、両親に環境変えて生活すると何か思い出せるかも、などと頼むことに。最初は、移動手段をどうするんだ、あれはどうする、これはどうなんだ、などと問い詰められたが、結局は自分で何とかします、と大見得を切って、渋々ではあるが下宿に戻ることを了承してもらうことに。
ちなみに、玲であれば車とバイクの免許を持つので移動すること自体何の問題もないが、残念ながらカーンにはその移動手段は一切使えない。勿論、鉄道を使って移動することは可能だが、実は今まで一度も鉄道を利用したことが無く、そのためどこに行って何をどうすれば良いのか分からずじまい。従って、下宿に戻りたいなどと大見えを切った割には、移動手段に悩むという失態を親に見せてしまいそうなのである。迂闊である。勿論、ここで親に頼もうものなら、ほら見ろ、結局今の自分には何もできないではないか、などと延々と説教をされるに決まっている。そこで、頼みの綱である物部かすみにLINEで尋ねることにした。
[そろそろ下宿に戻りたいんだけど
肝心の移動手段がなくって困ってます]
[はあ? そんなん電車乗り継いできたら
ええんとちゃう]
[その電車に乗ったこと無くてww]
[君はどこのおぼっちゃまですか?
いい年して電車に乗れないって
あー まだ記憶が戻ってないのね]
[うん そういうことです]
[仕方ない このかすみ様が何とかしてみましょう
少し待ってなはれや]
何か微妙に方言らしきものが混じるかすみであるが、今は頼みの綱。日本であれば、かすみ大明神様にお願い奉る、というところか。
暫くして、チロリン♪とスマホから音が鳴った。あっ、LINEだ。
[一つ提案あり うちのサークル覚えてる?]
[えーと 確か心霊サークルだったかな]
[そう その心霊サークルの夏合宿を
東京方面で行うことにしまして
その時にあんたを一緒に連れていく
というのでどう?]
[なるほどね 迎えに来てもらって
そのままサークルの仲間と一緒に行動するんだね]
[ピンポーン 正解です
でも賞金は何も出ませーん]
ちょっと気が抜けるメッセージがかすみから送られてきたが、悪くない提案。いわゆる、渡りに船というところだろうか。
何だかんだと以上のようなやり取りがあり、遂に出発の日を迎えた玲である。
「かすみちゃん、玲のこと宜しくね」
「はい、おばさん、任せてください。
ちゃんと彼の記憶を取り戻して見せます」
何か、かすみも大見え切っているけど大丈夫か、とほんの少し目元に不敵な笑みを浮かべる玲。
「それでは、玲さん出発いたしましょうか?」
「れ、玲さんって、しかも丁寧な言い回しで..
まぁいいか。僕は準備できてますよ」
軽くかすみと玄関先でふざけ合いつつ母親とも別れて(ちなみに、父と兄は仕事で不在)、彼らは一路サークルの合宿先に向かうのであった。




