四話
いきなりですが、合宿に行くことになりました。
いや、私は漫画で読んでたから知ってたよ?GWに合宿行くこと。
でもみんなにとっては寝耳に水だったんじゃないかな。
その前日に『お菓子に着替えパンツにブラ~♪』と歌いながら荷物を詰める。
旅行ってこういう荷物の準備をしている時が一番楽しいよね。
それに
「デジカメも買っちゃったし!!!!」
カメラを手にとった瞬間興奮で独り言を大声で言ってしまった。
いかんいかん、と手で口を抑え下で親たちが聞いてないか耳をすます。
特になにも聞こえなかったので声がとどかなかったのだろう。
「これでみんなを撮るんだ…ふひひ」
そっと荷物にカメラを入れて明日に思いを馳せた。
「おっまえ!荷物多すぎだろーが!!」
クロクロに怒られつつ私は反省0のいい笑顔でそのまま荷物をぎゅむっと空いている席に置く。
みんな私の荷物に呆れつつ、好きな席をとっている。
無論私は桜ちゃんの隣、といいたいところだけれど桜ちゃんは酔いやすい日向くんの面倒をみていた。
クロクロと山田が隣で、猫神くんはバスの椅子二個使って寝てるし・・・
とくると
「蒼天くんお菓子食べる?」
「・・・・」
「甘いもん嫌いなの?」
「ああ、長月は…ってそれ食べ過ぎじゃないかっ!?」
空のお菓子の袋をみつめて蒼天くんはいつものクール顔を崩す。
そして胸焼けといった具合に青ざめた顔で私を見る。
「いやぁ、朝食食べてなくって」
「そう、なのか…それにしても…お前、食いすぎだろ」
と蒼天くんはドン引きしたようにいう。
「今蒼天くんに言葉の暴力受けてる気がする。
女の子に食い過ぎなんていっちゃだめだぞー☆彡」
私はにっこりと力を込めた拳をみせると蒼天くんは黙った。
バスから降りると海でした。
流石に海には入れないけど気温的には足くらいなら浸かれるだろう。
「ここで練習をする」
ゴローちゃんがそういうとみんなが驚く。
私と桜ちゃんは選手が説明を受けている間に砂浜にガラスが落ちてないか確認する。
結構綺麗な海だったのでゴミはそんなになかった。
桜ちゃんは監督のサポート、私は拾ったガラスなんかのゴミを捨てにいくことに。
磯の香りを楽しみながら道路横の道を歩く。
ん~夏にきたらさぞ楽しいだろう。
こんなにも綺麗な海があるなんて知らなかった。
・・・いや、多分元の世界にはここはないだろうから知らなくて当然か。
そんな風に考え事をしながら歩いていると
「てか合宿所はどこだーーーーーッ!!!!!」
よく通る大声が聞こえてきた。
反対側の歩道をみてみるとジャージの集団の先頭に地図を持った男が発信源だろうと気づく。
まさか、まさかあれは
「多分、…学校名忘れたけどライバル校の…」
主将の…うーん、ほにゃららさん…。
顔だけは覚えていたが出てくるキャラが多すぎる為名前が覚えられない現象。
「困ってるっぽいなぁ」
確かにこの辺の地理ってわかりづらいってゴローちゃんいってたんだよね。
ちなみに彼らとは同じ旅館に泊まると知っているので案内できるといえばできる。
「ま、なにかの縁か。
どうかされましたー?」
私は車が通ってないことをいいことにさっと反対側に渡るとその集団に話しかけた。彼らは大げさに驚いたあと、思った通りの目的地を告げた。
道を教えてやると大げさに喜び、彼らは野球部らしくひとりひとり頭を下げてってくれた。
ゴミを捨て終えコンビニでみんな分の飲み物をうんしょと運んでいると。
「ここはどこだーーーーーー!!!」
あいつら、まだいやがった!!!!!!
結局みかねて声をかけ、自分が付き添っていくことに。
運んでいた飲み物は持ってもらえてとても楽だ。
「地元の方なんですか?」
主将の硬派そうな眉毛太いイケメンが聞いてくる。
この世界ね、美形率が高いから最近イケメン耐性つきまくってるので平常心は崩れない。
それにこの人機械音痴で作中で携帯ぶっ壊したりビデオぶっ壊したり残念なところを見てたので余計に。
「いえ、ちょうど同じ場所で合宿をしてまして
でもさっきはごめんなさい、案内わかりづらかったですよね」
「いえ、こちらこそすいません!
実はまた道に迷ったのは、ええっと、こっちの方が近道になるだろうと・・・小道に入ったのが原因でして!!!」
「あ、そうなんですか」
目を泳がせながら言う眉太主将さんかわいい。
ああ~確か、BL同人界隈では一年の生意気そうな金髪に攻められてた気がする。私は興味なかったから詳しくはないけど友達が非常に萌えて2人の抱き枕を制作していたの思い出した。
眉太主将さん…強く生きてね。
そのあと妙に優しい顔で彼の話を聞いてしまった。
旅館についたので、皆と手を振って分かれる。
またうんしょうんしょと飲みものを持っているとひょいっと荷物を取られた。
これはひったくりか!!?と思い見上げると
「あ、その…持ちます」
「え、あ、いいですよ!」
先ほどの眉太主将さんが。
お礼に浜辺まで持ってってくれるそうだ。
原作にこんな描写はなかったし、秘密の特訓をみせるのも気が引ける。
何度か断ったが粘り強くてさすがにしつこく断るのも怪しいので渋々うなづいた。
眉太主将さんは暑いのか顔を赤くして汗ダラダラで頑張って間を持たせようとどもりつつ話しかけてくる。
「それに、今日は!個人練習のつもりだったので!!」
「あ、それならよかったです~」
それにしてもこの眉太主将さんでかいな。
もしかして2Mくらいあるんじゃないの?私はチビだから余計顔見て話すのがつらい。
「あそこの浜辺です」
指を指すとちょうど選手たちは休憩していて、ほっと胸をなでおろす。
砂浜に降りる階段手前で彼に静止の声をかける。
「靴に砂、入ると面倒なのでここで大丈夫です」
「いえ!でも」
「練習頑張ってくださいね!ここまで本当にありがとうございました!」
やや強引に荷物を奪いそのまま階段を降りる。
手を振ると、彼もはっとしたように眩しい笑顔で振り返してくれた。
あーあ、それにしてもなんか毒気抜けるなぁ。
明日の練習試合、大敗する相手、彼らなんだよね。
別に悩むことでもないか!と思い直して私は笑顔でみんなに飲み物を渡した。