一匹狼クール系女子の様子が変
翌日、俺はいつも通りに自分が現在通っている高校――九十九高等学校に登校した。因みに俺はそこの一年生だ。一年生のクラスは三つあって俺は1の2に属している。
俺はいつも通りに教室に入ると真っ先に自分の席に向かい着席する。そして自分の視界に映っている光景をジッと眺める。
高校に入って二ヶ月。もう慣れてきた光景だ。俺より先に教室に入ってきたクラスメイト達は各々決まった人達と群れて楽しそうに話している。
そう――このクラスは皆友好的で和気藹々としている。え? じゃあなんでお前はぼっちなんだって? そりゃあ俺が孤独が好きだからだよ。
「おはよう悟」
「あぁ太一……おはよう」
そんなぼっちな俺にも一応友達……いや腐れ縁のような存在はいる。
保育園からの付き合いの野呂太一だ。コイツは異性から見たら爽やかイケメンという部類に入るらしい。
もうすでに太一が教室に入ってきた瞬間クラスメイトの女子達が黄色い声を上げている女子もいればチラチラと俺達に目を向けてくる女子もいる。まあ大半はチラチラと視線を向けてくる女子ばかりなのだが。
(あーうぜぇ)
基本目立ちたくない俺としてはこういう状況は一番困る。前に一度一人の女子が興味本位で聞いてきたことがあった。
『太一君と何で根暗陰キャのアンタが友達なの?』って。
随分と失礼な質問だとは思うが俺が根暗陰キャなのは敢えて否定はしない。何故なら自分でもその通りだなと思うからだ。
「ん? どうした悟?」
「いや単純に俺からさっさと離れてくんないかな、と」
「いきなり酷くないっ!?」
太一が引き攣った顔を浮かべ悲痛な声を上げる。
「いやだってお前が居ると周りの女子達の視線がこっちに向いて落ち着かないし……そもそも俺なんかと違ってこのクラスで話せる友達他に要るだろ」
そう。太一は無愛想な俺と違って気さくで誰とでもすぐ打ち解けられる人間なのだ。だから出来れば俺に構わず他の男子と会話をして欲しい。
「また悟はそんなこと言って」
太一が俺を呆れた目で俺を見る。がすぐに真剣味を帯びた目になり
「確かに仲の良いクラスメイトは居るけどさ。僕にとって悟が一番の親友だ」
「出来ればその台詞も俺じゃなくて他の奴に言って欲しいもんだけどな」
全く何で太一はいつも思うがこんな俺に対して全幅の信頼を寄せてるんだ……全く解せん。
中学になってから思っている事だが、せっかく女子にモテるんだから俺なんかに構うんじゃなくて少しは女子と交流を持つようにすれば良いのに。
「なあ悟。昔から思ってるんだけどさ」
「なんだよ」
「その両目を隠すほどに伸びてる前髪切ったらどうだ。そうすれば周りからの印象は多少変わると思うぞ」
「絶対嫌だ」
全く余計なお節介にもほどがある。俺は好きで伸ばしてるんだ。こうしてれば周りは気味悪がって近寄ってこないし、人と極力関わらなくて済むから楽だ。
「悟は性格良い方なんだし前髪切ればそこそこのイケメンだと思うけどな」
「お前が言うと嫌みにしか聞こえねえ」
「悟の素顔を知ってるからそう言ってるんだろ。保育園からの付き合いだからこそ言えるんだよ」
「はいはい、取り敢えず太一。もう俺との挨拶は済んだだろ。他の奴らのとこにも挨拶して来いよ」
俺が素っ気なく告げると太一は物悲しい表情を浮かべながら去って行く。その姿を見た女子達がキッと鋭い視線を俺に対して向けてくる。これ……俺が悪いのか? 全くこれだから嫌なんだ。イケメンと連むのは。
俺が落胆していると黒板に近い出入り口がガラガラッと音を立てながら開けられた。視線をそちらに向ければそこには神崎がいた。
彼女は相変わらず無表情で教室の中に入ってきた。が、すぐに自分の席に着くこともなく視線を周囲に向けている。一体何をやっているんだ? まあでも俺には関係ないか。俺は窓から見える外の景色へと目を向ける。
ん~やっぱ一番後ろの窓際の席は最高だな。授業中も基本教師は前の席の生徒に基本集中するし案外寝ててもバレないから楽だぜ。
そんなことを考えていると周りが騒がしい事に気付いた。なんだなんだ? 皆何にそんな反応してるんだ? まあでもいっか。俺には関係ない。
大方イケメンと美人が来たから皆有頂天になってるだけだろ。俺はそう思いながら尚も窓から見える景色を眺めていると――。
「ねえ」
と声を掛けられる。声の聞こえる方向に顔を向ければそこには神崎さんが立っていた。俺はあまりの事に呆然となり思考が停止する。
「――昨日はありがとう」
神崎さんの滑らかそうな頬がほんのり朱が指した状態でそんなことを言ってきた。
「じゃ、じゃあそれだけだから」
そう言うと彼女はそそくさと自分の席へと戻っていった。なんか神崎さん昨日と違って様子が変なんだが。俺は今起きたことが夢なんじゃないかと思いながら神崎さんの後ろ姿を眺めるのだった。




