5 有名人
夕方、大学の講義を終えた蒼は、そのままバイト先のコンビニに向かった。
制服に着替え、レジの前で軽くストレッチをしていると、奥から牧原先輩がいつものように現れ
る。
「お、蒼。今日も店番か?」
「はい、よろしくお願いします」と蒼は軽く会釈する。
棚を整えながら牧原先輩は笑う。
「平日だからそこまで混まないだろうけど、油断すんなよ」
蒼は小さく笑って頷く。
そこへ自動ドアが開き、見慣れた二人の姿が入ってくる。
「よう!蒼!」と太陽。
「あーお!がんばってるかー?」と愛菜が少しからかうように声をかける。
蒼は少し驚きながらも、笑顔で応対する。
「おお、太陽、愛菜か。どうしたんだ?」
太陽は肩をすくめ、にこやかに言う。
「ちょっと買い物でな。…ちゃんとやってんじゃん」
蒼は思わず笑みを浮かべながら、頭の中でゴールデンウィークの話を思い出す。
――そうだ、連休の予定、誘おう。
「ところでさ、ゴールデンウィーク、何か予定あるか?」と蒼。
愛菜は少し考え込み、笑顔で首を振る。
「うーん、まだ決めてないね」
太陽も肩をすくめて、「俺も特にないな」と答える。
蒼は少し嬉しそうに、自然と口元が緩む。
「なら、みんなで一緒に遊びに行かないか? 三郎と最近大学で知り合った女の子と、その友達
とみんなで」
太陽は笑顔で「お、楽しそうだな!」
愛菜は少し驚いた表情で蒼を見つめ、興味を隠せずに問いかける。
「その女の子って、どんな子?」
蒼は少し焦ったように肩をすくめ、笑みを浮かべる。
「なんだよ急に…俺だって女友達くらいいるわ」
愛菜はからかうように目を細め、口を尖らせて言う。
「蒼と仲良いなんて、どうせ大した女の子じゃないんでしょー?」
太陽は首をかしげて、にやりと笑いながら聞く。
「そんで、なんて子なの?」
蒼は少し照れくさそうに目をそらし、濁した声で答える。
「えっと…新井凛ちゃんって言う子だ」
太陽と愛菜は同時に目を見開き、驚きの声を上げる。
「えっ!?新井凛って、あの…大学でもめちゃめちゃ可愛くて人気の子じゃん!」
太陽も思わず口をあんぐりと開ける。
「マジかよ、それ俺も知ってる!めっちゃ有名じゃん!」
愛菜は少し興奮しながらも、少し照れたように蒼を見る。
「うわー、そうなんだ…なんで蒼と知り合いなのよ!」
そこへ牧原先輩がゆったりと現れ、軽く笑う。
「おう、蒼、楽しそうに話してるな」
蒼は心の中で、ふと初めて凛に会ったバイト先でのことを思い出す。
――そういえば、あの子とはここで初めて会ったんだ…
太陽と愛菜にはその思いは伝わらないけれど、蒼の胸には当時の光景が鮮明に浮かぶ。
蒼は少し照れくさそうに笑いながら、太陽と愛菜に向き直る。
「まあとりあえず、ゴールデンウィークは二人とも空けといてくれよ!場所が決まったら、連絡す
るから」
太陽は元気にうなずく。
「おう、任せとけ!」
蒼は少し気まずそうに口を開く。
「えっと…太陽、野球サークルの試合はないのか?」
太陽はにこやかに笑いながら、蒼に気を使わせないように答える。
「試合なんてねーよ!あってもそっちのが大事だろ」
蒼は少し寂しそうな表情を浮かべながら、軽く頷く。
「じゃあ、よろしくな」
さらに気を取り直して、愛菜にも笑顔で声をかける。
「愛菜も、ゴールデンウィークよろしくな!」
愛菜は少し寂しそうな表情を浮かべながらも、小さく笑って頷く。
――なんだか、ちょっとだけ胸がざわつく…
今年の連休は、いつもと違う特別な時間になりそうだと、蒼は心の中で感じていた。




