151 仕舞い込んでいた思い
「おい」
低い声。
掴まれた胸ぐら。
「
……は?」
蒼が戸惑う。
「蒼、お前いい加減にしろよ」
その言葉に、蒼の表情が固まる。
「な、なんだよ急に」
「急にじゃねぇだろ」
太陽の声は、抑えているのに強かった。
「お前のその中途半端な態度で」
一瞬、言葉を詰める。
「愛菜がどれだけ苦しんでるか、分かってんのか?」
「
……っ」
蒼は、何も言えない。
ただ、見返すことしかできない。
「俺はな」
太陽が続ける。
「お前のこと、高校のときからずっと見てきた」
「バッテリーとしても、親友としてもな」
少しだけ力が強くなる。
「でもな」
その言葉のあと、少しだけ間が空く。
「俺は、愛菜のことを中学から見てきたんだよ」
「
……え」
蒼の表情が揺れる。
「お前、まさか——」
その言葉の先を、太陽は遮らない。
ただ、少しだけ視線を逸らす。
「
……あぁ」
短く、答える。
「そうだよ」
もう一度、視線を戻す。
「俺はずっと前から」
「お前が付き合う前から」
「愛菜が好きだったよ」
その言葉は、静かだった。
でも——
重かった。
蒼の思考が、一瞬止まる。
何も言えない。
「だからな」
太陽が続ける。
「お前と愛菜が付き合ったときも」
「正直、何も言えなかった」
「
……」
「でも」
少しだけ、息を吐く。
「相手がお前なら、文句はなかったよ」
その言葉に、嘘はなかった。
「だけど」
そのあとに続く言葉は、少しだけ強くなる。
「お前が肩を壊して」
「
……」
「お前の、どうしようもない気持ちも分かる」
「それくらいはな」
静かに言う。
「でもさ」
一瞬、言葉を詰める。
「それでも」
少しだけ、目を伏せる。
「ずっと辛そうな顔してる愛菜を見るのも」
顔を上げる。
「
……きつかったんだよ」
その言葉だけが、夜に落ちる。
蒼は、何も言えなかった。
ただ——
話を聞くことしか、できなかった。




