104 真っ直ぐ
静かな空気の中。
愛菜は、何度も息を吸って̶̶吐いた。
うまく呼吸ができていない。
それでも、顔を上げる。
「……私さ」
声が震える。
もう、それを隠そうともしない。
「ずっと……」
言葉が止まる。
喉が詰まる。
少しだけ俯く。
それでも、続ける。
「ずっと……言えなかったことがあって」
蒼は、何も言わない。
ただ、見ている。
愛菜は、笑おうとする。
でも̶̶
全然うまくいかない。
「ちゃんと終わったって……思ってたのに」
声が崩れる。
「全然……終わってなくて」
ぽろ、と涙が落ちる。
一滴。
止まらない。
「私……」
息が乱れる。
言葉がうまく出てこない。
「蒼のこと……」
また詰まる。
唇を強く噛む。
涙がどんどん溢れる。
「忘れようって、いっぱい思ったのに……!」
少しだけ声が大きくなる。
感情が、漏れる。
「会わなければ大丈夫って思ったし……!」
「時間経てば平気になるって思ったし……!」
首を振る。
何度も。
「でも全然ダメで……!」
涙が、ぼろぼろこぼれる。
「何してても思い出して……!」
「ふとした時に、蒼のことばっかり考えて……!」
呼吸が乱れる。
言葉が途切れ途切れになる。
「もういい加減、忘れなきゃって思っても……!」
「無理で……!」
「無理で……っ」
声が震える。
完全に、抑えきれていない。
「……好きで」
小さく、でもはっきりと。
「ずっと好きで……!」
顔を上げる。
涙でぐしゃぐしゃのまま。
それでも逃げない。
「今でも……」
一瞬、詰まる。
息を吸って̶̶
「今でも、大好きで……!」
声が震える。
でも、強い。
愛菜は、もう涙を拭こうともしない。
「どうしたらいいか分かんなくて……」
「このまま何も言わずに終わるの、嫌で……」
一歩、近づく。
震えながら。
「だから̶̶」
まっすぐ蒼を見る。
逃げずに。
「伝えたかった」
声はボロボロなのに。
想いだけは、まっすぐだった。
「私……」
息を吸う。
そして̶̶
「蒼のことが、大好き」
その言葉は。
泣きながらなのに。
誰よりも、真っ直ぐだった。




