お姉ちゃんに全部バレました
カイと一緒にお姉ちゃんと翔梧くんが入ってきて、わたしはビックリ。
「お姉ちゃん。翔梧くん……」
カイも困った顔をしています。
「優那が学校抜け出して外へ行くのが見えたって三ツ木くんが教えてくれたの」
お姉ちゃんが厳しい調子で言います。
わたしは頭を下げました。
「ごめんなさい、授業をサボったりして……」
「違う。そうじゃない。事情をちゃんと、言ってくれない?」
ずんずんと部屋を横切り、お姉ちゃんはわたしの隣に腰かけました。
「優那が出て行ってすぐ休み時間だったから、三ツ木くんは私のクラスまで来て。そこから私達も優那を追いかけたのよ。……空が一部だけ黒くなってて、優那はそっち方面に向かっていったようだと言われたからさ。ちょうどあの神社辺りだと思って、すっごくイヤな気分になった」
お姉ちゃんはカイに鋭い視線を向けました。
「神社周辺は真っ暗だった。そこへあなたがバイクで来て、集まってる人に手を振って。そしたら、みんな、そのまま何ごともなかったみたいに散っていくじゃない。どうして?って思った。その次にあなたは神社の方へ駆け込んで、しばらくしたら黒いモヤは完全に晴れて。……ねえ、優那と、あなたは何をしているの?あなたが、優那に危ないことをさせているの?」
お姉ちゃんの手が小さく震えているのが見えました。お姉ちゃんは本当にわたしのことを心配して、こうやって……駆けつけてくれたんですね。
カイが唇を引き締め、すっと右手を上げかけました。たぶん、忘却の魔法を掛けようとしたんでしょう。
「カイ、待って。お姉ちゃんには、ちゃんと話をしたい」
「しかし……」
信じてもらえるかどうかは分からないけれど。
こんなにもわたしを心配してくれるお姉ちゃんに、ウソをつくのはイヤだ……。
「前世?聖女??」
お姉ちゃんと翔梧くんは目を瞬かせました。
「うん。信じられないかも知れないけど……」
「ええ?どうしてそんなこと言うの!?優那はちょっと変わってるって思ってたけど、転生者だったって言われたら納得できるわ」
わたし、変わってると思われていたんですか?そして、ものすごく簡単に納得されたんですけど。
「そっか~、転生かぁ。すごーい、まさか私の身近にいたなんて!」
「こんなあっさり信じてもらえるなんて……」
「優那、知らないの?今、転生物の話ってありふれてるよ」
「え?でもそれ、フィクションでしょ?そこら辺にいっぱい転生者っていないよね?」
「でも優那がそうなんだから、意外といるんじゃない?」
そ、そうなのかな?
いや、でも、そしたら浄化できる人がわたし以外にもいるとか……?どうなんだろ?
「で、あんたが護衛?」
翔梧くんは不信感いっぱいの顔でカイを見ます。
「はい」
「今の日本に護衛なんていらないんじゃないのか?」
わたしは慌てて手を振りました。
「ううん!さっき、魔物もいたから。わたしも魔物を退治できるんだけど、浄化と同時は厳しくて。カイが来てくれなかったら、危なかったと思う」
「えっ、魔物なんかいるの?!襲われたの?!」
「避けたから大丈夫!」
胸を張って答えたら、お姉ちゃんの顔色が変わりました。
「待って。背中のここ、ケガしてる!」
髪に隠れた背中部分。制服が濃い灰色だったので分かりにくかったようですが、破けて血が滲んでいるようです。
……そういえば、痛い、かも。
久しぶりの魔物遭遇、広域の浄化(特訓の成果で倒れずに済みましたよ!)、お姉ちゃんたちの登場などで気持ちがいっぱいいっぱいになってたみたいです。言われて、初めて痛みを認識してきました。
カイの顔色も変わりました。
「ユーナ様!ケガをしていたんですか?!すぐに手当を」
「ちょっとかすっただけだから、大丈夫!」
「聖女って、ケガをぱぱっと治すのはムリなの?」
お姉ちゃんの不安そうな問いかけに、首を振りました。
「ううん。ケガの治療はムリ……。それは治癒専門の高位の神官さましかできないの」
「マジ?!ちょっと待ってよ、じゃあ、その神官がいない今の世界で、魔物が出てくる中、浄化をするのってめっちゃヤバいじゃない!」
「まあ……だけど、一応、結界を張って身は守れるから」
「そういう問題じゃないの!」
泣きそうな顔のお姉ちゃんは、ぎろっとカイを睨みました。
「私が手当するから!救急道具、貸して。……ううん、それより病院へ行く、優那?」
「お医者さまに説明が難しいし、お姉ちゃんが手当してくれると嬉しい。……前世では、聖力のおかげか聖女は一般の人より傷つきにくく、治りも早かったの。今世でも同じだといいんだけど」
はあ。今さらですけど、世界が違うと色々と面倒なことが増えるものですね……。




