表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/19

3. 天使と母の面談

めちゃくちゃ投稿頻度遅くなってますが、月に3話くらいのペースで投稿していきたいと思ってます。次の話は近日中に投稿する予定です。

 奏向が女の子になった連休の終わり、奏向のお母様は突然現れた。奏向から聞いてた話でもそろそろ合う頃合いだろうと思ってはいたが、余りにも急な事態に私は取り乱してしまった。

 何とか事情を説明して、私のことや奏向が女の子になったことを認めてもらうことが出来た? のだが……。


「あ、エリスちゃん。少しだけお話しいいかしら」


 お母様に声をかけられ、私はそれに答える。


「はい? いいですけど。えと、奏向呼びましょうか?」


 今は丁度奏向がお風呂に入ってる時だった。多分私と奏向の話だろうからと私は答えたのだが。


「あー、いいのいいの。エリスちゃんに聞きたい事があるから」

「私に、ですか」


 とりあえず座ってと言われて、私はリビングのテーブルに向かい合うように座った。私は今更ながら少し緊張していた。何せ、私はお母様の大事な息子さんをあれやこれやといろいろしたわけで。

 昼間は奏向が一緒だったしお母様も困惑していたからなあなあで受け入れてもらえたものの、冷静になってみると私にいろいろ言いたい事が出てくるのではないかと思う。

 つまり、これはお母様の私に対しての最終面接なのでは!?


「そんなに気を張らないでいいから。ちょっとした話を聞きたいだけなの」

「は、はい」


 お母様の言葉に応えるように、にまーっと作り笑いしてみせる。しかし、額には冷や汗をかいていた。

 何を聞かれるのか、何を問いただされるのか、いろんな考えが頭をぐるぐる巡っている。


「えーとね、エリスちゃんの話の中で助ける人に奏向を選んだって言ってたでしょ?」

「あっ、はい。そうです」

「それで、なんで奏向を選んだのか理由が知りたいのよ」

「理由、ですか?」


 多分お母様は私が天使としての手助けの対象に奏向を選んだ理由を聞いてるのだろう。

 私が奏向を選んだ理由は、昔助けてもらって興味を持ったから。それは、さっきお母様にもお話しした内容なのだけど。


「そう、エリスちゃんが奏向のどんなところに興味を持ったのか気になるのよ。だから、エリスちゃんが奏向のどんなところに惹かれたのか教えて欲しいの」


 私が初めて奏向を知った時、私は奏向にどんな思いを持っていたのか。あの時のことを思い出すと、私はお母様に語り始めた。


「私が初めて奏向と会った時のことは話しましたよね。その時は、この子は何でこんなに人の笑顔のために行動するんだろうって不思議に思ってました」


 お母様はずっと私を見つめたまま、時々うなづいて話を聞いている。


「私が今までこの仕事で会ってきた人たちには、そんな人はなかなかいませんでしたし。それで奏向のことが、人となりが気になるようになってました」


 あの時から、私は天界で奏向のことを見るようになって。奏向の、本当の気持ちを知った。


「それから私はずっと奏向のことを見てて、この子は本当に純粋に人の喜んでる姿が好きな子なんだなって思ったんです」


(だって、誰かが悲しんでるよりもみんなが笑ってる方がいいじゃん!)

 昔、(・・)が言ったあの言葉を思い出す。


「そんな子が、傷ついてどんどん暗くなって、笑顔が消えていくのが見てられなくて。気づいたらこんな感じになってました、あはは……」


 お母様は特に曇った顔はせず、むしろ柔らかい表情を向けてくれている。


「奏向にはこんな無茶苦茶なこともしましたし、厳しいことも言いました。それでも私は奏向に、また笑って欲しくてそれで、えーとそんな感じが私の気持ち、です」


 私の気持ちをきちんと伝えられた自信はないが、それでも私の思いは言葉の通りである。

 お母様はお茶を一口飲んでから話始めた。


「はぁ、そうなのね。これならあの子に兄弟でも作ってあげればよかったかしら」

「えっ、それはどういう?」

「そのままの意味よ、今更な話だけどあの子にエリスちゃんみたいなお姉ちゃんがいたらまた状況は変わったのかもと思って」


 意外な言葉に私は驚いた。お母様は部屋の向こうを見つめながら話を続ける。


「あの子はお友達を信用できなくなっちゃったから。だからこそ、エリスちゃんみたいな破天荒な身内がいれば少しはよくなったかもと思ってね」

「は、破天荒……」

「いや別に悪く言ったわけじゃないのよ。言い方を変えれば、おてんば娘?」


 言い方を変えてもあまり意味合いが変わった気がしないけど、お母様は私のことを褒めてくださってるのでしょうか。


「今のあの子を見れば答えがわかるわ。エリスちゃんのお陰であの子は変わった。あの子の為を思ってしてくれる、お姉ちゃんがいたから」

「私はそこまでのことは。奏向自身の頑張りですし」

(けん)(そん)しないの。あなたが来たからあの子が変われたのは事実でしょ。あー、本当にこんな子娘に欲しいわ。って今は私の娘ってことなんだっけ?」


 そう言って嬉しそうに話してくれるお母様。初めに感じた緊張は既に消えてしまった。

 今の私には、ここまで思ってくれるお母様の気持ちに答えなきゃという使命感の方が大きくなっている。


「ただ、天使とか諸々は私の許容量をオーバーしちゃってるから完全に全てを信じられてるわけじゃないけどね」


 信用は……、されてるのかな? 主題の話を終えたからか、お母様は世間話をするような話し方に変えた。


「それにしても、まさか我が息子が少し家を開けている間に娘になってるとはねー」

「あはは、その節は本当に申し訳ないです」


 私は軽く謝るが、お母様はさらっと本音を吐き出した。


「いや、逆にこっちの方が可愛げがあっていいのよ」

「そう、なんですか?」

「ええ、ずっと暗い顔ばっかりしてたからあれくらい可愛らしい方が丁度いいのよ」


 きっと奏向がこのことを聞いたらなんやかんやと騒ぎ出すのだろう。その姿を想像するとクスっと笑みが溢れる。


「そういえばあの子学校に通うんだっけ?」


 お母様が思い出したように私に尋ねてきた。


「はい。そうですよ」


 私の答えにやや曇った顔を向けるお母様。そうなる答えは簡単なものだった。


「あの子、女子制服を着るの?」


 息子が娘になって女子制服を着る。多分この世でお母様だけが体験するようなことだろう。

 息子を育てていたお母様としては当然複雑な心境だろう。まあ私服も女物ではあったのだけど。


「はい。私の方で制服は手配しましたし、スカートを履く練習もしてるので」

「あの子が、スカートを履く練習……。ふっ、ふふふ」


 どうやら奏向のスカートを履く姿を想像して笑いそうになってるらしい。たしかに引きこもりの息子が急に女装? に目覚めるというのは笑ってしまうかも。


「それなら、一つお願いがあるんだけどいい?」


 そう言ってお母様は服のポケットからスマホを取り出した。素早く画面を操作して私に画面を見せる。


「まだ私も、全面的にエリスちゃんに任せるってわけにはいかないから出来ればこまめに連絡を取ってほしいの」


 見せられた画面にはお母様のSNSのアカウントが表示されていた。


「はい! そのくらいならお安い御用ですよ」


 私はそう答えるとスマホを取り出して、お互いに連絡先を交換する。それが終わると、少し笑いながらお母様がもう一つお願いを言ってきた。


「それと、よかったら奏向の制服姿を写メで送ってくれないかしら? 私、連休終わったら仕事が入ってて見れそうにないのよ。息子の女子制服姿なんてなかなか見れないでしょ?」


 お母様はいたずらっぽい笑顔でお願いしてきた。すると、バタンと扉が開いてお風呂に入ってた奏向が戻ってきた。


「ん? 二人で何話してたの?」

「別に大した話じゃないわよ。ねっ、エリスちゃん」

 お母様の言葉に私は笑顔で答える。


「そうですよ! 普通に世間話をしていただけです」

「うーん、本当かな?」


 奏向が疑いの目を向ける中、私は次にお風呂へ入るためにお風呂場へと向かおうとする。


「(写真、必ず送りますね)」


 去り際にお母様にそう耳打ちすると、そそくさとお風呂場へと歩いていく。当日に奏向が知ったらきっと怒るだろうか、それとも恥ずかしがるだろうか。

 そんなことを考えながら私はお風呂タイムへと突入するのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ