19. とある二人の難儀
またもや3ヶ月以上ほっぽり出していたわけですが、ぼちぼち書いてた割には書き上がりが遅く文字数も少なめと……
待ってる人もいるのかわかりませんがもう少し続きますので!更新はゆったりお待ちください!
夕暮れの街中、人々がようやく仕事を終えて帰宅する時間。人だかりの中を俺たちは二人並んで歩いていた。
特に会話もなく、ただぼーっと商店街をうろつく。今の今までいろんなことがあって疲れてしまっていた。そのせいか口数も少なくなり、それでも家に帰るにはどこかで落ち着きたいということで二人で歩いている。
「ねえ、あそこどう?」
彼女が指さした先はよくあるファーストフード店。少ない小遣いの中でそこそこ満足に注文できるその店で休憩を取ることにした。
店内は時間帯のためか駄弁る学生や小腹満たしに食事をする人で席が埋まっていた。
たまたま二人用の席が空いていたので彼女に席を取ってもらうことにした。
「あっ、注文なんだけど・・・・・・「ポテトとストロベリーシェイクだろ? ポテトは二人でLサイズでいいか?」あ~うん、それでよろしく」
俺は荷物を預けるとレジへと並んでいく。アイツの好みは把握していた。昔はよく食べに来てたしな。俺は店員に注文すると自分用に飲み物も追加で頼む。会計を済ませて品物を受け取ると席へと戻っていく。
「ほら、シェイク」
「ありがと」
こういうやりとりが心地よく感じつつもようやく俺たちは一息つくことが出来た。
「ふー、ようやく落ち着いたよ」
「お腹が?」
「いや違うから」
と言いつつも手は既にポテトへと伸びている彼女、友井美香。俺はそんな彼女の様子を見つつ、ドリンクに口を付ける。
「翔こそようやく落ち着いたんじゃない? 可愛い女の子とおしゃべりして疲れたんでしょ」
美香の言葉に俺は飲んでいた飲み物を吹きそうになってしまった。
「ちげーよ! 第一あんなことあったら誰だって驚くだろ」
「そりゃ、ねー」
当たり前だ、女の子関係なくあんなことを見せられたら誰だって冷静さを欠くに決まってる。
久しぶりに喧嘩別れした友達が、女になってたりしたら。
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数時間前、俺たちはとある公園で真実を聞いた。ここ数か月の間にであった少女、柏木奏向。彼女が俺たちの昔の親友であり男であるはずの奏本人だというのだ。
正直今でも嘘なんじゃないかとも思う。だが、あの時奏向という少女が奏へと姿を変えたのを目の当たりにしたことがすべてを物語っていた。
奏と共にいた少女、エリス。彼女の話は天使や魔法など俺たちの理解の範疇を越えたものだった。それでも、ここ数か月奏向と行動したこと、奏としての昔の思い出などを話されると確証が増した。
結局のところは完璧に消化しきれたわけではない。ただあの場ではそれよりも、昔の親友との再会と三人での仲直りが出来たことが何より大事だったのだ。
だからこうして奏たちと別れた俺たちは残った消化物をどうにかしようと一度落ち着ける場所で話し合うことにした。
「で、私の事好きとか言ってた翔さんはどうして女の子になった親友に抱き着いたわけ?」
正直に言うと消化不良はもうよくわからない場外乱闘へと発展した。
奏向が奏であると証明するために話したここ最近の出来事の中で、俺はあらぬ誤解をかけられていた。俺の学校まできた奏向に痴漢したと言うと脅され半ば強制的に話をさせられた時のことだ。
「だから! 別にそんなんじゃないし逆だから、抱き着かれた方」
「ふーん」
シェイクを飲みながら睨みつけてくる美香。本当にあの時は奏向の方から抱き着いてきたんだ。いや、そういう話じゃなくて。
「そもそも今はさっきの件を整理するために来たんじゃ」
「はいはーいそうですねー」
ぶっきらぼうな顔がようやく元に戻った。未だに女子とのこういうやり取りは慣れない。ちなみに俺はまだ彼女と付き合ってはいない、美香から言われて気が付いたが前に好きだったと送ったメールが告白みたいになっていた。
そのことについては俺は正直に言っただけなのだが、美香からはデリカシーなさすぎと怒られしばらくは付き合うことはないだろうと思う。
要は今の関係は昔の中が良かった頃の親友同士の付き合いというやつだ。
「で、どうするのこれから?」
美香から投げかけられた質問に俺は首をかしげる。奏との付き合い、それについて俺たちは悩んでいた。久しぶりに再会した親友との付き合い方で悩むのもあるが、一番の問題はそこではなかった。
「「正直女子としてのインパクトが強すぎる・・・・・・」」
そう、俺たちが最後に奏と会ったのはもう半年以上も前の話だ。そして、奏向という少女によって色々衝撃的なことがあったのがここ最近。
当たり前だが、今の俺たちにとってはあの奏向という少女の印象が強くそれが男友達の奏でした~と急に言われても正直切り替えがうまくいかないのだ。
「だってさだってさ、この間なんかカラオケ行った時にすっごいノリノリでアイドルソング歌ってたんだよ!」
先ほどの公園でもその話は聞いたが、奏向という少女が歌ったというのならば想像がつく、だが男友達の奏となると話は別だ。
嫌悪感を抱くわけでもないがそれでも男の時とのイメージの乖離により想像することが出来ない。
「俺の時だって、あんな積極的に抱き着いてきて・・・・・・あっ!」
「ふーん」
美香の視線が再び刺々しいものへと変化する。話の流れで口にしてしまったが、この話題で場が悪くなることはさっき学習済みのはずなのに。
「・・・・・・可愛かったの?」
「へ?」
美香からの言葉は激しい罵倒などではなく、まるで乙女心の嫉妬心から来たような質問だった。もしかして、美香はやっぱり俺の事を。
「いや正直私は女としてどうすればいいんだろうと思いましてね。悔しがればいいのか何なのか」
「あー」
なんか全然違うみたい。小さくため息をつく美香。
「でも、どうしてそうなったわけ?」
美香の疑問はごもっとも、ただ俺もどうしてそうなったのかはよくわかってない。ただ一つ言えることは。
「俺が、初めて奏向に会った時校門の前で待ち伏せされて無視しようとしたんだよ。そしたらいつの間にか追っかけてきた奏向の、その、胸に当たってて・・・・・・「そのまま無意識に抱き着いたと?」違うから! あいつの方が押し当ててきたんだよ、置換されたって言うぞって脅して」
その答えに美香は驚きの表情を浮かべた。
「それって、奏向が色目を使った上に女の武器で脅したってこと!? 確かに行動力がある子とは前々から思ってたけど、性別変わるとそこまで出来るのね」
なんか知らず知らずのうちに奏の株が急速に暴落している気がするけど、とりあえずは納得してもらえたようだ。
「というかお前に言われて話を聞きに来たって言ってたぞ!」
「えっ、いや~そうだったかな~?」
下手な口笛を吹きながら誤魔化す美香。昔っから面白そうなことについては適当なこと言って茶化そうとするんだよなこいつは。
とりあえずこの話題は置いといたほうがよさそうだし、別のことについて話を振ってみることにした。
「カラオケの方はどうだったんだよ。だいぶ楽しかったみたいだけど」
「ん、それがさ~」
どうやら奏向は結構ノリノリで歌っていたらしい。まぁアイドルソング歌ってたくらいだからな。エリスさんと一緒にデュエットしたり女子会カラオケを楽しんでたみたいだ。
「でも、なんで美香はカラオケに誘ったんだ?」
ふとした疑問。知り合ってそこそこの友人を早速カラオケなんかに連れていくだろうか? 美香の性格上そうはしないような気がするが。
すると、美香の形相がみるみるこわばったようなものへと変化していった。
「あんたの、性でしょうが!」
「いった!!」
思いっきり足を踏みつけられて激痛が走った。その後ポテトも食べ終わり飲み物も底をついたことで俺たちは店を後にすることになる。
結局なんでカラオケに誘ったのか、怒ったのかは分からずじまいだ。そうこうしているうちにそれぞれの帰路への分かれ道についてしまった。
日も暮れ街灯が道を照らしている。家に帰るために別れなければいけないが、肝心な部分だけ決着がついていなかった。
「翔、奏の事だけどさ」
でも、それも些細なことだというのはお互いにわかっていた。ただ事実が受け入れられる限界を超えてたためにある程度の時間が必要だっただけ。
「ああ、でも実際、何にも変わらないだろ?」
美香の顔を見ると笑顔で見つめている。きっと考えは同じなのだろう。
「うん、奏は奏だもんね。ただ帰ってきてくれただけだもんね」
いろいろあって一度は途絶えてしまった縁。でも今日、それは再び結ばれた。今まで失ってしまった分をこれから取り戻せばいい。
「今度どっか出かけようぜ、三人、いや四人でか?」
「そうだね! エリスさんも一緒にどっか遊びに行こう」
こうして話が付くとお互いの家へと分かれ始める。普通じゃ信じられない出来事が起きた日は、こうして終わりを迎えることになった。
しかし、俺たちが考えていた奏と出かけるという話はとある理由によって実現しなくなるのだが、それはまた別の話。




