10. 体育祭と恋のエンジェル (3)
ごめんなさい!遅すぎました!筆が進まなくて……今回の話結構難しくて……(というか結構大雑把に書いた手前いろんなところでしわ寄せが来てたり)。
もう既にあれですが、次はなるべく早めにできるようにしたいです。気長にお待ちいただけるとありがたいです。
「奏向さんと海人を別れさせてほしいの」
野上恵那さんから話があると言われ、聞いてみるとそれは昨日告白された奏向とその相手の山上君を別れさせろという内容だった。
話から多分野上さんと山上君は恋心を抱くくらいの仲だったのだろうと察する中で、彼女が更に事情を話し始めた。
「あたしと海人は、昔っからよく遊んでて喧嘩もよくしてたんだけどそれでも仲は結構いい方だった。年が経つごとに海人に好意を感じるようになって、気づいたら海人に恋愛感情を抱くようになってたわ」
私の勘は当たっていたみたいで野上さんは山上君のことが好きだったみたいだ。でも、もしかして山上君は違ったのだろうか?
私と利麻は彼女の話を黙って聞く。彼女は話を続けた。
「海人の気持ちはわからなかったけど、海人もあたしを意識してくれているように感じてた。でも、多分あのことがきっかけで海人は奏向さんに告白したんだと思う」
「何かあったんですね」
彼女は悲しそうに顔を暗くした。多分よっぽどのことがあったんだと思う。彼女はゆっくりとその事実を口にした。
「前に、二つ上の親戚のことを恋人って言ってからかったことがあったのよ。多分それが原因だと思うの」「「・・・ん、え? それだけ?」」
彼女が発した事実は思ったよりも複雑ではなかった。というかからかっただけでなんで奏向に告白することになるのだろう。
「それだけよ。それ以来海人は口を聞いてくれなくて冗談だって話せてないのよ。多分あたしに対抗して奏向さんに告白したんだと思うわ」
実に、実にはた迷惑な話! つまり奏向は山上君の嫉妬心によって、野上さんに対抗するために告白されたということだ。
というかそんな理由で告白してくる方もどうなのだろうか、奏向の純情を何だと思っているんだ!
「えーと、純粋に山上君が奏向ちゃんを好きになったっていう線はないのかな?」
利麻は野上さんにもう一つの可能性を聞くが、野上さんは首を横に振った。
「多分ないと思う。海人が奏向さんを好きだって話聞いたことないし、告白するタイミングも喧嘩した後ってのはちょっと良過ぎるし」
野上さんは山上君が奏向に対して対抗心で告白したということで決めつけているらしい。私もそんな気がするけど。
「だから、どうにかして海人と奏向さんを別れさせたいの。海人のやつ学校でも完全に無視してくるし話を聞いてくれないのよ」
今回の件については、とりあえず山上君に野上さんの彼氏が勘違いだったことを伝えなければ解決はしないだろう。
そのことを話した上で山上君の正直な気持ちを聞いて、それで二人は仲直りして奏向は無事に帰ってくる。とにかくこの件を解決させるためには彼女に協力するしかないだろう。
「はあ、わかりました。野上さんに協力します」
「本当に! ありがとう襟澄さん」
私の返事に表情を明るくする野上さん。面倒そうだけど、奏向を取り戻すためには協力しなければならない。
「いいの?」
利麻が私に聞いてくる。でも、なんとなく表情が嬉しそうというかそんな風に見えた。私は仏頂面で答えた。
「いいんです」
「ふーん、なら私も協力する」
こうして、私たちは山上君と奏向を別れさせるために協力することになった。
なったのだけど......。
「な、なんで出来ないんですか!」
「私にもわからないな、もう何日も経つのに」
「こ、このままじゃ、体育祭の日になっちゃうしどうしよう」
私たち三人は、山上君へのアプローチにかなり苦戦を強いられていた。私たちが考えた作戦は単純で、私と利麻で山上君に直接伝えるだけだった。
野上さんが避けられているのならば、ほとんど関わりがない私たちが行けばいいだけの話だ。
本来ならこれで誤解は解けて、事件解決になるはずだったのだ。だがしかし、解決にはならなかった。
私たちが伝えても山上君の反応は薄いものだった。
「......ってことなんです。だから野上さんには彼氏はいないんですよ」
「ああ......そうなのか」
これで終わった。これしか反応がなかった。そして、それからも何度もアプローチを試みるものの一向に変化はなかった。
そもそも私たちには彼に会える時間が少なかった。他クラスの性もあって、授業の合間もなかなか接することが出来ない。そして放課後には応援団の練習があって昼休みくらいしか会えなかった。
その昼休みすら奏向と一緒にどこかへ消えるため探すのに苦労して終わってしまうことが大半だった。
こうして私たちが錯綜している中、体育祭までの時間は刻々と過ぎ去っていった。
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「それじゃあ、最初から合わせるよー。はい、1、2、3、4」
「いち......にー......」
「柏木さん! もっと元気に踊って」
「は、はい!」
応援団のダンスの練習が始まってからもう数日経つのに、俺は未だにダンスを踊れずにいた。
最初はもっと簡単なダンスかと思っていたが、練習しているダンスは思ってた以上に難しいものだった。
俺の組の踊りは男子だけのもの、女子だけのもの、そして男女混合のものだ。尺の都合でそれぞれは短いものの女子のダンスは、その、恥ずかしさが結構あって......じゃなくて意外に凝ったダンスで動きが難しいからだ。
この体は運動にはとことん向いてないみたいで、ダンスに関してもうまく踊れるまでにはかなり時間がかかりそうだった。
「はい、それじゃあ今日の練習はここまでね。各自練習しておくように、今度は混合の方も踊るからね。それじゃあ、お疲れ様でした」
「お、お疲れ様でした」
ようやく練習が終わると、とぼとぼ一人で更衣室へと向かう。結局応援団に入ったものの話せる人は出来ず、こうして一人寂しく着替えを済ませて帰り支度をしているわけだ。
更衣室を出ると、そこには山上君が待っていた。
「おー、奏向。今上がりか?」
「うん。そうだけど」
山上君とはあれから昼休みはほぼ毎日どこかでお昼を一緒に食べている。というより強制連行されている。だけど下校時なんかは応援団の関係もあって意外とバラバラに帰ってたりするのだけど、今日に限っては彼は俺のことを待っていたみたいだ。
「えと、なにか用?」
「ああ、その男子の練習の合間に女子のを見てて思ったんだが、奏向はダンス苦手だったりするのかと思って」
「ふぇ?」
思いもしなかった言葉に思わず変な声が漏れてしまった。俺が男子に気遣われるなんてことは、家に引きこもって以来されたことはなかった。
「あ、いや結構他の人と差があるように見えたからもしかしたら焦ってたりするんじゃないかと思ってな。違ったら悪いが」
「ううん、合ってるけど」
彼は、俺のことを気に掛けてくれていた。その優しさが、すごくうれしく感じた。それはまるで彼女を気にする彼氏のようであって、そんなことを考えて思わず気恥ずかしくなってる自分がいた。
「もしよかったらなんだけど、これから自主練してみないか?」
「自主練?」
彼の提案で顔から熱が冷めた。どうやら俺のダンスを見てくれるというらしい。
「一人でやるよりも効率がいいし、混合のダンスも始まるから都合がいいと思ったんだが」
確かに山上君は数日でダンスを綺麗に踊れるようになってたし、教えてくれるならありがたい。それに、結局応援団の誰にも相談は出来そうもない。
それなら、勝手がわかってる彼に教わるのが一番だと思う。俺は彼の提案に二つ返事で答えた。
「お願いします!」
彼は待ってましたと言わんばかりに俺の手を引っ張ると練習できそうな場所へと走り始めた。これからって、ほんとにこれからってこと!?
「い、今からやるの?」
「当たり前だろ! 時間がないんだからじゃんじゃんやっていくぞ」
少しノリノリな彼に引かれながら、夕日に照らされた校舎を二人で走っていく。体育祭当日まで、残り約二週間。




