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クリエイターのワールドクラッシュ  作者: ペリ一


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第六十一話「疲労を全身で感じよう!」


「本日はMODのお披露目会じゃ!」


 いつもの虚無(ばしょ)

 壇上に立ったくろりんがそう高らかに宣言し、異形どもが大いに騒ぐ。

 

「久々だなー」


 そんな呑気な声を出したのは、髭面のアバター。

 炭鉱マンだ。

 やれやれ、君達に欠けているものがある。

 危機感だ。


 俺は壇上へ上がった。

 

「こんにちは。今日は俺の——」


「逃げろッ!!!!!」


 皆のアバターが一斉に広場から逃げ出す。

 ログアウトしないあたり、実験体にしてくれと言っているのと同義だが……ふむ。

 俺は腕組みをして奴らの逃走を暫く見守った。


 程なくして皆、当初の勢いが嘘のようにとぼとぼと歩き始める。

 オホホ、効いてるw効いてるw


 俺はアホどもに駆け寄った。

 まず1番手前にいるアホと強引に肩を組む。


「よう。感じるか? 胸の辺りが圧迫されるような、とにかく次の一歩を踏み出すのが億劫になるような……そんな“疲労感”を……」


 鼻の下が伸びすぎてほぼ口が見えない異形アバターが怯えた様子で俺を見る。

 何? あんまその見た目で被害者ぶらんといてな。


「ガチきつい、も、もう走れん……おえっ」


「おぉ~」


 俺の疲労追加MODは正しく機能しているらしい。

 やっぱ敵モブから延々と逃げれちまうのは良くないよなぁ。緊張感がない。

 まぁ、押し寄せる疲労感をガン無視すれば以前と変わらず永遠に走ってられるんだけどな。


「だが逃げる方法が用意された苦痛に、人は弱い……」


「あー、しんど。クソ監督くん、これちょっとしんどさが生々しすぎて嫌かも」


「そんなに嫌?」


「うん、かなり。ちょっとその、ゲーム中に感じたい感覚じゃないかも……」


 電撃や味覚破壊はゲーム中に感じたい感覚なのか?

 俺にはもうよく分からない。

 よく分からないが……俺はただ、プレゼンを続ける。


「おい、椅子野郎! 来い!」


「なんなりと」


 人間を無理やり椅子の形にしたアバターが駆け寄ってくる。

 駆け寄ってきてるか? なんか移動がクネクネしてて軌道が読みづらい。


「苦痛はゴールじゃない。このゲームに爽やかさを足してやる」


 俺の合図で、椅子が自身のインベントリから椅子を取り出す。

 人皮と木材からクラフト可能な平凡な椅子だ。

 

「座ってみな」


「うわぁ背もたれに毛穴が見える……」


 ほんとだキモッ。


「背もたれに背中の皮を使うなんて、安易な事は私はしません」


 椅子野郎が何かごちゃごちゃ言っているが、とりあえずアホを椅子に座らせる。

 効果は即座に出た。


「お、おお……疲労が引いてく……」


「当然です。そも、座るとは――」


 講釈を垂れて俺のお株を奪いかねない椅子野郎を剣で始末し、プレゼンを再開する。

 

「いいか? 疲労は立ち止まる事で回復する。だが、椅子をクラフトしてそこへ腰掛ける事でより劇的に回復する。その際に若干の快感も付与する。なかなか良い仕様だろ?」


「うーん……いや椅子は気持ち良いんだけどね」


 椅子は気持ち悪いだろ。

 毛穴見えてんだぞ。


「なんかね、歳とるとそこまでゲームに頑張れなくなるというか……移動がしんどいゲームってしんどくて」


「ふむふむ」


 言い訳ね。

 了解しました。


「でも椅子はいいね、本当に。運動後の爽やかすら感じる」


 若干の冷涼感が出るようにしてるからな。

 でもあの程度の走りでそこまで休んじゃって、良いのかなぁ?


「過度な休息は逆に自分の首を絞める。そう思わないか?」


「いや全然……休めるなら無限に休みたい」


「無限? そうか……」


「これ、何かあるね。そろそろ走ろうかな!」


 本当に悲しいよ。

 なんて愚かなプレイヤーなんだろう。

 俺がまだ間に合うようなタイミングで声をかけるわけがないのに。

 

 椅子から慌てて立ち上がった鼻の下激伸び野郎の眼前に、龍が現れる。

 

「な、でっかいウーパールーパー!?」


 龍ですけど。

 デス過労ドラゴンくんなんですけど。


「いけっ! 心肺破壊ブレス!」


 デス過労ドラゴンくんが被弾した者に極度の疲労状態(と錯覚するような感覚)を付与する真っ黄色のブレスを吐く。

 

「うッ……ハァーッ、ハァーッ! は、は、いだ、いだだ……痛い、脇腹がいィッ、ううぐ……」


 鼻の下激伸び野郎がその場に蹲る。

 冷静になれば疲労ではなく、脇腹の痛みも大した事が無いと気付ける。

 しかし、一度疑似的にでも疲れる感覚を浴びてしまったプレイヤーは、この痛みの“先”を想像してしまう。

 これ以上動けば、脚が攣り、脇腹を鷲掴みにされるような痛みになる。

 呼吸ももっと余裕がなくなるはず……そう、思ってしまう。

 それは何故か?

 

 既知・・の感覚だからだ。

 雷撃とは違う。アレは未知ゆえに先を知らない。ただその場の痛みだけが襲ってくる。


 そう、既知の領域から出る必要は無かった。

 現実に即した痛みこそが、人に想像の羽を広げさせ、より大きな苦痛へ繋げる事ができるのだ。




【MODの動作に関する報告及び質問総合スレ】



36:PVPマン


 久々にガチ効きのやつきたわ

 心臓が痛い


37:名無しの開拓者


 普段からもっと運動をしておこうと思った


38:名無しの開拓者


 普通にヤバくない?

 あのウーパールーパー何????


39:名無しの開拓者


 椅子に座りすぎてはいけない

 クソ監督は、そういった思想をお持ちのようでした


40:炭鉱マン


 VR機器外した後も動悸が収まらなかったんだけど?????

 マジで心臓発作で死んだらさ、クソ監督くんはどうするつもりなのかな?????


41:監督


 ショックを受けて、葬式で泣いちゃったりすると思う


42:名無しの開拓者


 葬式に呼ばれるわけ無さすぎて草


43:PVPマン


 どの面下げて葬式出るつもりなんだよ


44:炭鉱マン


 呼ぶわけねぇだろ下手人をよ


45:名無しの開拓者


 葬式で泣き終わったらスッキリしてそうでやばい


46:名無しの開拓者


 アンナチュラル5話?


47:名無しの開拓者


 また泣けると思ったから


48:名無しの開拓者


 感動ポルノ中毒のサイコパスやめて




49:監督


 で、いかがでしたか?


50:炭鉱マン


 いかがでしたか、ではなく


51:デスゲームマン


 高刺激であればあるほど良いというものではない

 そういった美学に近いものを感じました

 美しい


52:くろりん


 うむ。わしも驚いた

 散々な目にあってきたお前達がそこまで苦しむとはのぅ

 何か、発想を転換できればインディーズVRゲーム界に名を残すような物を生み出すやもしれぬ

 そんなポテンシャルを感じる出来じゃった



 それで天罰の日程じゃが、週末でよいか?


53:監督


 うそ

 どうして


54:PVPマン


 うーん残当


55:名無しの開拓者


 ショックを受けて、って電流のこと?


56:森マン


 えー デス疲労ドラゴンはギリ許容じゃないの?


57:水マン


 あれドラゴンなんだ。ウーパールーパーかと思ってた


58:炭鉱マン


 MODはともかく俺らを追い込むまでの策略がアウトだろ


59:名無しの開拓者


 確かに、アレは良くないですね


 ただ椅子は良いデザインでしたから、残しましょう


60:デスゲームマン


 まぁ全てを抹消するには惜しいですよね


61:PVPマン


 疲労システムは削除して、椅子は単にリジェネ付与とかにするか?


62:監督


 うそ

 どうして

 俺も普段プレイするときは疲労設定オフにするつもりだけども


63:炭鉱マン


 答え出てるじゃねーか


64:名無しの開拓者


 ワールドの規模的にだいぶ歩かされる寄りのゲームだし……ダルいよね実際……


65:名無しの開拓者


 (普段プレイするとき……? ユアルを……?)


66:PVPマン


 普段プレイするとき △

 普段喧嘩するとき 〇


 炭鉱マンとのレスバの決着をVR上の殴り合いで決める時 ◎



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― 新着の感想 ―
ちゃんと経験を糧にゴミみたいなMOD作ってきて感心した デス疲労ドラゴンは登山のどこから得た経験なんだよ
笑いました ゲームでまで疲労を体感したくない…
ゲームしてるときに疲労感じたくないの当たり前すぎて誰もやろうと思わないんだよな…クソ監督はやっぱ天才だよ…
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