表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クリエイターのワールドクラッシュ  作者: ペリ一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/61

第六十話「たまにはゲームをやめて外に出よう!」


「最近さ、スランプなんだよな」


 昼休み。

 相田と倉本、榎木。そして俺。

 いつも通りの変わり映えのない光景。


「こんな生活じゃ、脳のどの部分も刺激されないんだ」


「何? 友達同士の楽しい集まりに文句?」


「変わり映えがないよね。ずっと同じゲームばっかしてるし」


 俺が榎木のスマホ、厳密には某アイドル育成系のソシャゲが表示された画面を指差す。

 飯食ってる時ぐらいスマホを置きなさい。


 そんな俺の鋭い指摘に、榎木が深々とため息をついた。


「分かった。前頭葉に針金を刺して刺激するってのはどうだ?」


 脳のどの部分も刺激を受け取れなくなっちゃうじゃん。

 嫌だよ。


 俺はトンデモヘイト野郎の榎木にも分かるように柔らかな声音で続けた。


「苦痛の配合表を、手に入れたんだ」


 デスゲームマン監修の、セーフティ機能をすり抜けられるヤツね。


「おう……?」


「それを試してみたんだけど……なんかな、意外に既知の領域から出ないというか……」


「キチの領域?」


 まぁ近いね。

 とにかく、俺は素晴らしい素材を手に入れたはずなのに、それの活かし方が浮かばなかった。

 人間ってのはやはり適応の獣で、VRでふざけている内に様々な苦痛に慣れ、退屈すら感じるようになってしまうんだ。

 今の俺なら催涙ガスを食らってもちょっと文句を垂れるだけで済むかもしれない。


「ん? 催涙ガス?」


「言ってない言ってない。俺そんなこと一度も言ってない」


「その手があったか」


「無い。やめろ」


 やはり現実で知らないものをVR上で再現しようたって無理があるよな。

 いや、できる人がいるのは知っている。

 しかし俺は凡人でありクリエイターとしては下の下。天才の真似事なんてできない。

 だから、脳に直接学習体験をぶち込める現実に頼るべきだ。


「ふむ。登山とか……皆で行かないか?」


「現実でキルリーダーになったって、良いことないんだぞ?」


 榎木くんは俺をどんなサイコパスだと思ってるんだい?

 

「違うだろ。クマ撃退スプレーで友達を撃退する気なんだ、こいつは」


 相田くん。それも違うよ。


「たまにはゲームをやめて、外に出よう! って事だよね?」


「倉本はよく分かってるなぁ。あとでジュースを奢ってやるよ」


「いえーい」


 俺が倉本を可愛がっていると、榎木が吐き気を抑えるような動作をした。

 おい、なんだ? 友達同士の楽しい集まりに文句か?


 そうやって睨んでいると、榎木が嫌悪感を滲ませたまま口を挟んできた。


「登山はきちーけどさぁ、一応爽やかさがあるじゃん。どうせMODつーかユアルの話なんだろうけど、陰気なゲーマーには合わないだろ」


 爽やかさ。

 ……そうか。完全に忘れていた。


「苦痛には報酬が無きゃ、ダメなんだ」


「何? そりゃそうすぎない?」


 苦痛を“ゴール”だと、思っていた——。

 違う、苦痛は“始まり”なんだ——。


「やっぱり現実は偉大だな」


 俺は世界の雄大さに涙を流し、クラスメイトを怖がらせた。




【苦痛は】登山実況スレ【ゴールではない】


1:監督


 よろしくお願いします


2:名無しの開拓者


 何の何?


3:名無しの開拓者


 †苦痛はゴールではない†


4:デスゲームマン


 そうですね

 苦痛は生の実感であり、過程にすぎません


5:監督


 山道に入っていきます


6:炭鉱マン


 普通に何?

 

7:名無しの開拓者


 山頂の岩全部蹴り落とすつもりなんじゃない?


8:炭鉱マン


 なるほどな

 おい、犯罪だぞ

 この人殺しが


9:監督


 言い返す事を、耐える

 この苦痛を、じっくりと味わう


10:PVPマン


 不気味だな……


11:くろりん


 何か嫌なことがあったのかの?


12:監督


 将棋MODの応援付きバージョンが消されていたが、有志の録音を入手し、それを聞く事で苦痛に耐える

 ひたすらに足を前に

 歩みを止めない


13:名無しの開拓者


 あれ消えてたのほんとに悲しい〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 録音してて良かっっったぁあ……………



14:将棋マン


 あの


15:炭鉱マン


 臭いでわかる

 てめぇ音MADの作者だな?

 殺してやるからワールドに来いつってんだよ


16:PVPマン


 あー、だから録音が残ってたのか……

 素材用ってわけね……


17:デスゲームマン


 有能ですね


18:将棋マン


 くろりんさん、これ、どうにかなりませんか?


19:くろりん


 ならぬ


20:将棋マン


 そんな、、、


21:名無しの開拓者


 かわいそうでかわいい


22:名無しの開拓者


 キュートアグレッションで全身の攻撃性が怒張してきた


23:名無しの開拓者


 きも


24:PVPマン


 てかなんでクソ監督登山してんの?

 なんかそういう罰?

 

25:監督


 最近、アウトプットばかりでインプットが不足していたからな


26:グローバルマン


 ワオ! FDもフィールドでアクティビティすることでインサイトをインテンシフィしようというソゥトですね!

 アイもそのソウトにアグリーです!

 ネクスト、クライムのタイムにはアイにもコールしてくださいね!


27:名無しの開拓者


 急に出てこられたせいでグローバル語使ったことにされるの好き


28:名無しの開拓者


 草


29:PVPマン


 最悪のハメ技だ


30:将棋マン


 すごいですね、これ

 常識の範囲内の言葉使いだったのに、こうなるともうグローバル語にしか見えません


31:名無しの開拓者


 将棋マンさん?


32:炭鉱マン


 “戦略”に見えてますか? ひょっとして




33:PVPマン


 あとしれっと次登山する時は呼んでね、みたいな事言ってない?

 気のせい?


34:監督


 言ってる

 でも呼ばねぇよ?

 理由は、現実であの喋り方と対面すると心が割れてしまうから


35:グローバルマン


 オゥ、ガラスのハートね


36:監督


 こいつ何なん?


37:名無しの開拓者


 草


38:炭鉱マン


 【「いやお前や!」のテロップ付きの画像】


39:デスゲームマン


 まぁ、こいつ何なん? に関してはだいぶクソ監督に対しても思ってますからね




40:くろりん


 ところでクソ監督はなぜ登山をしておるのじゃ?

 あまり現実でまで天罰を受けるべきではないぞ?


41:名無しの開拓者


 答えは×

 仮想現実上でも天罰を受けるべきではない


42:炭鉱マン


 バツが二個あってややこしいな


43:デスゲームマン


 仮想現実上であれば、天罰は積極的に受けるべきです


44:PVPマン


 いいえ



45:監督


 我々は、仮想現実上の苦痛ばかり味わって、何かを知った気になっていないでしょうか

 仮想の電流に貫かれても、結局のところ悲鳴をあげているのは私達のVR機器なのではないでしょうか?

 “私達”の苦痛とは、何処に在るものなのでしょうか?


46:炭鉱マン


 お、始まったな。ポップコーン取ってくる


47:名無しの開拓者


 劇場型犯罪?


48:デスゲームマン


 この歌詞、私の事だ……


49:名無しの開拓者


 謎に刺さってるやつもいます


50:監督


 VRも、もう一つの現実

 ええ、それは私も同意するところでございます


 しかし、それがもう一方の現実を軽視する理由にはならないというのも、また確かな事でございまして


51:炭鉱マン


 落語?


52:名無しの開拓者


 はてさて、現実逃避と申しますが、現代では逃避した先がまた現実といった事もあるようでして――


53:PVPマン


 何? 説教なら物理的にしてくんない?


54:監督


 物理の方も勿論執り行いますので、後でワールドにお越しください


 いいですか、全ての物事は相互に作用し合い、積み重なり、形となっているのです

 もう一つの現実は、もう一方の現実と断絶して存在しているわけではない

 表裏一体なのです

 

 仮想の電流 仮想の激臭 仮想の肉体改変 仮想の味覚破壊 仮想の無限落下


 それらは日常生活に影を落とすことがあります

 しかし、どうでしょう?

 実際のところ、現実で、洗面器に向かって嘔吐している時間

 上記のラインナップに比べれば貧弱に思える「嘔吐感」は、確かに肩を並べるだけの“苦痛”ではないでしょうか?



55:PVPマン


 こう並べられるとろくな事してねぇなマジで


56:くろりん


 うぅむ


57:炭鉱マン


 まぁ確かにしょせんVRの刺激よなぁ、みたいな気持ちはあるな

 刺激自体はバカ強いはずなのにな


58:名無しの開拓者


 ノルアドレナリン中毒のガキ


59:PVPマン


 最悪すぎ


60:名無しの開拓者


 逆ドパガキだ



62:監督


 正にその通り

 我々は認めなくてはならない、仮想現実をもう一つの現実と呼びつつも

 結局のところ仮初である、という部分に安堵していることを


 肉体が、四肢が無理やり引き伸ばされる感覚をどれだけ味わおうと

 我々の肉体は五体満足のままであることを、

 我々は自覚してしまっている


 一歩、引いてしまっているんです


 良いんですか?

 それで、本当に?


63:炭鉱マン


 良いだろ別に


64:PVPマン


 俺達に何を求めてるんだよ


65:名無しの開拓者


 登山してるんですよね? 今


66:名無しの開拓者


 それマジで怖い

 嘘であって欲しい


67:デスゲームマン


 やはり、クソ監督の批判は芯を食っていますね


68:炭鉱マン


 食ってねぇよ、こいつは家の柱に噛り付いてる害虫だろ


69:名無しの開拓者


 草



70:監督


 仮想現実は現実に恩恵をくれます

 では現実は仮想現実に恩恵をくれないのでしょうか?


 答えは否

 

 私は今、何度も悪路を歩まされた事による足の痛み

 三半規管や呼吸の乱れ

 リアルの、生の“苦痛”を感じています


 現実は隣り合っている

 この生の苦痛を、仮想で再現できたなら


 それはそう、皆様が普段より体験しているような、大きな刺激ではありません

 しかし、貴方達に真の苦痛と


 そして、登頂後の清々しさを与えることでしょう


 それでは、私はそろそろ登山に専念します

 この生の資料を、体験を、取りこぼしたくないですから――


 


71:デスゲームマン


 ブラボー……ブラァボーーーーーー!!!!!!


72:炭鉱マン


 こいつら早く殺さねぇとな

 

73:くろりん


 えぇと、つまり……わしらへの嫌がらせの精度を上げるためだけにリアルで登山を……?


74:森マン


 でも登頂時の清々しさも与えるって言ってるよ

 苦痛はゴールじゃないらしい


75:名無しの開拓者


 スレタイ回収だ


76:PVPマン


 だから見せてね、苦痛のゴール、苦痛・ザ・ゴールを!


77:炭鉱マン


 じゃあ苦痛がゴールじゃねぇか


79:将棋マン


 これどうします? くろりんさん


80:くろりん


 うぅ~ん……存外に爽やかなMODになるやもしれんしのぅ……


81:デスゲームマン


 くろりんさんは、エアプ批判をしない方ですからね

 人間ができています


82:水マン


 美徳のはずなのになぁ


83:名無しの開拓者


 わかるか、くろりん? 俺達の仕事は本質的にはいつも手おくれなんだ


84:炭鉱マン


 やっぱ悪意には悪意を持って接さないとダメだな

 ろくでもねぇMOD出そうとしてんじゃねぇぞ

 絶対導入しねぇし、苦情入れてDLページ消してもらうからな


85:PVPマン


 俺も似たような文章書き込もうとして、導入の前振りすぎるって思ってやめた


86:名無しの開拓者


 別に嫌なら導入しなきゃいいのにわざわざ導入して苦しみにいってる自覚を、持とう!




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
一瞬で追いついてしまいました…… グロ監てぇてぇ。
嫌がらせのために登山の苦痛を味わってリアルにするってどんだけ凝ってんだ。
苦痛を与えることにも受かることにも真摯すぎるんだよこいつら
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ