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第五十一話「怪物を作ろう! part2(終)」

【注意! 味覚強化MOD導入環境を前提としたMODです!】


「導入済みだっての」


 謎のお絵描きゲームを終え、世界が生成され始める。

 平原に墜落した宇宙船と、その先に広がる森。

 見慣れた光景だ。


「さてと、まずは最低限装備を整えるか」


 宇宙船で斧を拾い、木材を手に入れ、石を砕き、最終的に剣を完成させる。

 何度も繰り返した工程だ。


「こんなもんかな」


 可能ならば弓も作りたかったが、生成に恵まれずまだ素材を集めきれていない。

 そしてここで懸念点が1つ。これまでの過程で、新規追加された怪物が発見できなかった点だ。


「水場とかか? 砂漠の説もあんな……」


 森に湧く設定ではないらしい。

 急ピッチで作った新規生物に水中モーションを作ってあるとも思えないので砂漠の説が濃厚か。


「探すかぁ、しゃーねーな」


 野人をシバき倒しながら探索すること数十分。

 砂漠を発見した。


「……なんかゆるい見た目のやつがいんな」


 紫色のパンのような胴体。突起のような四つ足。赤黒い口と目。表情こそにっこりマークのようだが、口から歪な歯が飛び出しており不気味さを感じる。

 思考成形モードで作ったものに雑に着色し、歯だけくっつけたような見た目だ。


「さて、殴り合いと…………うおおぉッ!?」


 こちらを察知したらしい四脚紫パン(仮称)が急に人の形に己の身体を引き伸ばして歩いてくる。

 間違いない。走るモーションが野人と同じになっている。

 適当な仕事してんじゃねぇぞ。


「近接か? 攻撃モーション用意してんだろうな」


 そろそろ剣の間合いに入るかといったところで、四脚紫パンが口元をむにゃむにゃと動かし始める。

 同時にやや後退し、剣の間合いからギリギリ外れるような動きも取り始めた。

 念仏のようなボイスが聞こえ始める。


 何だ?

 疑問が浮かんですぐに、身体に違和感が生じる。


「え? 何? 美味しい……」


 辛味。だが、単なる辛味ではなく、奥行きのある旨味と合わさった、美味しい辛味だ。

 足元の砂漠の味や手元の剣の味がノイズだが、他の部位は概ね美味しさを感じている。

 念仏が更に大きくなった。

 心なしか俺の声に似てる気がする。


「……ん?」


 辛い。

 いやまだ……いやいやいやいや辛い辛い辛い辛い辛い辛い暑い暑い熱い熱い熱い熱い熱い!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 強烈な辛味によりそれ以外の味である砂漠と剣の味が際立つ事で奏でられる、味覚の殺戮的ハーモニー。

 旨味により痛覚ではなく味覚を刺激されている事実を強く意識させられる。

 丹念なゲロシャブ味覚攻撃によって完全に上がった胃がリアルでその胃酸を撒き散らす。


 VR機器の付近に許容外の水気が発生した警告が表示された。

 これはまずい。色んな意味で。


 俺はログアウトし、即座に洗面台へ駆け込んだ。







356:炭鉱マン


 死ねや


357:名無しの開拓者


 その3文字を待ってた


358:名無しの開拓者


 残虐性が高すぎてネットで有名になるタイプの拷問


359:PVPマン


 何から言っていいかわかんないけど、とりあえずモーションちゃんとしろや

 あとあの念仏なに? ほんまにキモい


360:監督


 あの念仏は天罰配信の時の炭鉱マンの悲鳴を逆再生して引き伸ばしたり早送りにしたりして作ったやつです

 キモいとか言わないでください

 炭鉱マンくんがかわいそうでしょ


361:名無しの開拓者


 草


362:食事マン


 最悪だ……


363:炭鉱マン


 あのなんも聞かされてないんすけど

 普通なんか一言ないっすか?????????

 あとかわいそうなのは誰のせいだと思う?????


364:監督


 使う前に「ククク……お前の声、よく馴染むぜ」って送ったと思うけど


365:炭鉱マン


 普通にようわからんだる絡みかと思って既読無視してたわ


366:くろりん


 そこで問い正さなかった時点で負けじゃの


367:名無しの開拓者


 くろりんさん?


368:デスゲームマン


 まぁクソ監督を相手に隙を晒した時点で負けですね


369:PVPマン


 隙を晒して本名ばら撒かれた奴が言うと説得力が違うな


370:デスゲームマン


 なんですか?????

 禊は受けたのでもうその話はしない約束ですよね????




371:森マン


 素材知った上で聞くとめちゃ笑えるからオススメ


【音声データ】



372:名無しの開拓者


 改めて聞くと念仏にあるまじき怨嗟の声混じってておもろい


373:PVPマン


 炭鉱マンごめん、流石にクソおもろいわ

 攻撃方法はクソムカつくけどボイスだけは評価できる


374:炭鉱マン


 なんなの?

 悲鳴から作ってんのになんでこんなにパッと聞くと念仏にしか聞こえないようにできてんの?

 

375:名無しの開拓者


 奇跡の比率引いたんでしょ


376:監督


 いや普通に実際の念仏聞き込んで頑張って寄せた


377:炭鉱マン


 神様、頼む

 どんなやつを天国送りにしても良いからこいつだけは地獄に落としてくれ


378:名無しの開拓者


 努力型のカス


379:PVPマン


 他にもカスな部分(初撃だけちょっと美味しくして心理的なガード下げてからゲロマズ叩き込んでくるとことか)あるのにボイス製造の過程に全部持ってかれてる


380:森マン


 可能性を感じたからどんどん追加していきたい


381:監督


 ああ、俺もそう思ってたとこだ

 怪物の種類を増やして、ゆくゆくはテイムMODを作りたい

 色んな攻撃でコンボを組んでPVPがしたい


 PVPマン、手伝ってくれるよな?


382:デスゲームマン


 本当に死人が出るデスゲームの匂いがしますね

 私も協力しましょう


383:PVPマン


 私も協力しましょうじゃねぇよ

 まず俺が協力しねぇよ


384:食事マン


 これ僕も片棒担がされてるんですかね? ひょっとして


385:監督


 食事って、自由だ。


386:炭鉱マン


 生物の根幹を成す行為を侮辱するのやめてもらっていいすか




387:くろりん


 うむ。モンスターMODは封印……じゃな


388:監督


 えっ


389:森マン


 あちゃ〜


390:くろりん


 辛麺屋のアセットを使っておるじゃろ?

 利用規約を読んできたが、禁止される悪用の例に当てはまっておるように思う


 よって封印じゃ

 監督が作り手に回る気になったのはとても良い事じゃが、まぁ、その……限度がある




391:監督


 公式サーバーにキョウコさん呼ぶ癖にそんな良識が!!!?!!?!?!?!?!!!?



392:炭鉱マン


 おい


393:名無しの開拓者


 ん、一理あるね


394:PVPマン


 あれはちゃんと抜け道突いてるからセーフ

 お前のはストレート犯罪


395:監督


 クソ……俺のゲロモンバトルの夢が……

 ごめんな、砂漠の呪詛師ちゃん……


396:名無しの開拓者


 そんな名前だったんだ


397:炭鉱マン


 人の悲鳴を勝手に呪詛にすんな


398:森マン


 次作る時はもうちょっとクソ監督の意見断るようにするね


399:くろりん


 そうしなさい


400:名無しの開拓者


 掲示板の呪詛師がよ……

 

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― 新着の感想 ―
最新話まで読んでしまった。続きがたのしみです。応援しています。
味覚で攻撃するの、キツすぎて笑いますね
今回もめちゃくちゃ笑った
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