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初詣

 1月1日、元日。

 午前6時の空は、まだまだ暗闇が優勢を占めていて。

 雪がゆっくりと舞う中、息を白くさせながら、神社に参拝に来た人達が、お参りするために長い列を作っているのが見えた。


「お父さん、新しい破魔矢、持ってきたよ」


 外の売り場にいたお父さんに声をかける。

 神主姿のお父さんは、いつもよりもなんだか頼もしく見えた。


「おお、冬華、ありがとう。お父さんもうすぐお祓いの時間だから、売店のお手伝いをお願いしても良いかな?」

「うん。お父さん、忘れ物はない?」

「ああ、大丈夫。何かあったら、お父さんや周りの人に遠慮なく言いなさい」

「うん。お父さんも、頑張ってね」

「ああ。朝から手伝ってくれて、冬華は本当にいい子だね」


 そう言うと、お父さんは本殿の方へと歩いて行った。


「はい、破魔矢と熊手ひとつずつですね、ありがとうございます、お会計は――」


 ぱちぱちとお焚き上げの炎が鳴らす音を聞きながら、縁起物を買い求めに来たお客さんの対応をしていると、

 

「おはようございます、冬華さん。あと、あけましておめでとうございます」

「あっ」


 お店の前に、寒さで頬を赤くしたきみが立っていた。


「凛くん。うん、あけましておめでとう」

「ここに来れば、冬華さんに絶対会えると思ったので、来ちゃいました」

「あ、ありがとう。その、一緒にお参りできなくて、ごめんね?」

「別に、今日じゃなくても、空いた日にお参り出来ればいいので、大丈夫です。それに……」

「それに?」

「朝から、巫女装束姿の冬華さんが見れたので、今年一年、良いことありそうです」

「えっ、あっ、その、あり、がとう」

「身にまとった白衣と緋袴の白と赤のコントラストはまさに神ってるの一言。そして冬華さんの長く美しい黒髪を一本に結んだ白い丈長は、限られた日本女性にしか許されない神聖にして尊い装い。白足袋と草鞋は、今は失われてしまった和の風情を感じさせ――」

「だからその服装評論家みたいな解説はやめてくれないかなっ!?」

「まあ一言で言うと、とっても似合っていて可愛いらしいです」

「あ、うん。ありがと…」


 うぅ。

 嬉しいけど。

 絶対わたし、今、変な顔になってるよ。


 だから、それをごまかすようにきみに聞いてみた。


「えっと、何か、買ってく?」


 きみはきりっとした顔で言った。


「はい、冬華さんを」

「わたし売り物じゃないよ!?」

「そうでした。冬華さん、僕の彼女さんですもんね」

「事実だけどこんなところでは言って欲しくなかったかな!?」

「絶対、誰にも売りませんから!」

「あの、だからわたし、売り物じゃ――」

「冬華さん」

「? なに、凛くん?」


 きみが恥ずかしそうに手を丸めてわたしの方に差し出し、軽く振る。

 一瞬で小さなバラの花を手元に出すと、それをわたしに差し出して言った。


「今年もよろしくお願いします、大好きです」


 受け取りながら、わたしもきみの言葉に答えた。


「うん。わたしのほうこそ、今年もよろしくお願いします。その…、だ、大好き、だよ?」

「あはは、ごめんごめん冬華、お父さん忘れ物しちゃっ――――ファッ!?」


 後ろから、お父さんの変な声が聞こえたような気がした。


           ~完~

 というわけで(どういうわけで?)、「この白を、きみに。」は完結となります。

 結局、タイトルの『白』って何だったの?という疑問については、作者も同じように思っております(おい)

 多分、雪的なものとか、冬華の初恋の気持ち的なものを指してなんとなく名付けちゃったんだと思います(特に直したりはしないです)

 読んでクスッとでも笑っていただけたのなら、この話を書いて良かったなあと思っています。

 ここまで読んで頂き、ありがとうございました!!

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