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スラ雪姫

 童話もとネタは皆様ご存知でしょうってことで、姫が森に捨てられちゃったところから始めますよ~。

 生い茂る樹木の間を、一人のスライムがずるずるとさまよっていました。

「また俺が『ヒロイン』かよ。」

 立場上、仕方のないことです。ほら、小人さんのお家が見えてきましたよ。

「すみません、森に迷ってしまった哀れなスライムです。どうか助けてください。」

 その声に応えて小さな扉が開きます。中から出てきたのはチミっと可愛い銀髪ツインテール。

「小人はユリなのか。うん、小さいし、ぴったりだな。」

 その愛くるしいツイテが、ぴょこ、ぴょこ、ぴょこっと家の中から次々に……

「まさかっ!」

 はい、7人の小人ユリさん勢ぞろいです。

「もっとやりかたってモンがあるだろうが! ユリを先頭に地精霊ノームたちが次々と……とか、」

 それじゃ面白くないし、それに、可愛くないっスか? ユリちゃんの小人ファッション。

「う、確かに……」

 小柄な体を長めのシャツとだぼっとしたズボンで包み、その銀髪の上にちょこんと色を添える真っ赤なとんがり帽子……

「れっ! レッドキャップ?」

 なんスか、それ?

「イギリスの民間伝承に存在する悪意ある精霊(アンシーリーコート)だ。帽子が赤いのは殺した人間の血で染めているからだとも言われているんだぞ。」

 七人のユリが口々にスライムを褒め称えます。

「スラスラ、物知り。」

「スラスラ、知的。」

「解ったらそんな物騒な帽子は脱げ。ああっ、そっちのユリ、脱ぐのは帽子だけだ。チョーカーを外そうとするな! そっちのユリは何でシャツまで脱いでるんだよ! こっちのユリ……ユリだらけで訳がわからねぇっ!」

 こうしてスラ雪姫の苦悩の日々は始まった……


 ギガントに姿を変えたスラ雪姫は大きなスコップを手にしています。

「じゃあ、仕事に行ってくるからな。いい子で留守番してろよ。」

 胸に1、2、3……と数字を刺繍されたユリたちは、素直に頷きました。

「この話は『白雪姫』だ。おそらく女王ミョネが何かを仕掛けてくるはず。いいか、女王が来ても戸を開けるんじゃねぇぞ。」

「承知。」

 スラ雪姫は出かけてゆきました。後に残された小人達はチョコチョコと動き回り、家事を片付けてゆきます。

 トントンと、ドアをノックする音が聞こえました。

「女王?」

「違うよ。ただのおばあさんさ。ここを開けておくれ。」

「女王、無い。開ける、可。」

 無防備に開かれた扉から入ってきたのは、みすぼらしく変装した女王ミョネです。彼女はずらりと並んだ小人の姿に僅かばかり慄きました。

「姫さん! 何で七人も?」

「姫、スラスラ。」

「ユリ、小人。」

「あ? ああ、そうか。で、そのスラ雪姫はいるかい?」

「仕事。」

「なんでっ? 普通はあんた達がスラ雪姫を養ってやるんじゃないのかいっ?」

「ユリ、ロウドウキジュンホウ。」

「未成年。」

「だからって……あんたに甘すぎだよ、あのスライムは。」

 そういいながら、ミョネが取り出したのはおいしそうなりんごでした。そのりんごを小人達に手渡します。

「ともかく、これをスライムに渡してくれない? じゃないと、話が進まないんだよ。」

「承知。」

 小さなユリがうけとると、りんごは両手に余るほどに大きく、その姿はミョネの不安をあおります。

「いいかい、間違いなくスライムに渡すんだよ。絶対に食べちゃ駄目だからね!」

 立ち去る背中を見送りながら、ユリがぽそっと呟きました。

「押すな=押せ。」

「食べるな=食べろ。」

 七人のユリは真っ赤な果実にかぶりつきました。


 夕方、疲れきって帰ってきたスラ雪姫は床に倒れているユリたちを見て担いでいたスコップを取り落としました。

「ユリっ! おい、ユリ、しっかりしろっ!」

 それはまるで、眠っているように静かな美しさでした。

 頬の桃色はあせることなく、バラのような唇はかすかな寝息を含んでいるかのように……

「解った! りんごを詰まらせて仮死状態だってのは原作で知ってる! 早くユリを生き返らせてくれ!」

 えええ~、俺の見せ場なのに……

「馬鹿か! いくらファンタジーだっつても、長時間の呼吸停止はやばすぎるだろ。」

 じゃあ、アレですね。

「アレ?」

 キスです。ぶちゅううっとかましてやってください。

「きっ! そりゃ、やばいだろうよ。」

 どうして? 原作は知ってるんでしょ。

「あれはなぁ、喉に詰まったりんごが飛び出すほどの『大人のちゅー』だったって説があるんだよ。こんなガキに、そんなとんでもないことができるかっ!」

 それは存じませんで……

「うそつけっ! この非道がっ! ここからは俺のやり方でやらせてもらう。」

 スライムは小柄な体のみぞおちを抱え込み、頭が低くなるように抱き上げました。

「そうして背中を、強くっ!」

 どん!

 えほっ! ころり……

 スライムは次々と小人を抱えあげ、その背中を叩きます。

 どん! えほっ! ころり、どん! えほっ……

 こうして息を吹き返したユリたちは、うっとりとした瞳でスライムを見上げます。

「スラスラ、紳士。」

「命、恩人。」

「感謝、ちゅー。」

 七方向から降らされるキスに、スライムがわたわたと身を振ります。

「馬鹿っ! 俺がせっかく我慢してやったのに……だあああ! どさくさにまぎれてそんなところに触るんじゃないっ!」

 こうして、七人の小人とスラ雪姫は、いつまでも仲むつまじく暮らしました……


ヤヲ>私の出番は? せっかく王子役で待機していたのにっ!


アザとーの息子、幼少時に二回もどん! えほっ! ってされています。

赤ん坊に飴を食べさせるのはやめてくれええええ!

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