↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/10

一 地下二階の男


九条慎平の職場は、雑居ビルの地下二階にある。

窓はない。あるのは蛍光灯の唸りと、湿気を吸った紙の匂い。役所から回ってくる水濡れの書類、読み込めなくなった古いハードディスク。それを一枚ずつ乾かし、継ぎ、打ち込む。時給は千百円。契約は三か月更新。四十五歳、非正規。

(俺みたいなのは、社会の底で静かに終わっていくのが一番迷惑がかからない)

本気でそう思っていた。自分を卑下するのは、もう癖というより呼吸に近かった。

ただ、ひとつだけ、他人に誇れないまま身についた技術があった。データの「嘘」が見えるのだ。タイムスタンプの一秒のずれ。貼り合わせた画像の、ほんのわずかな粒子の違い。十年以上泥をかぶるように書類と向き合ううちに、改竄の跡が、傷のように浮いて見えるようになった。

誰にも必要とされない特技だった。少なくとも、その夜までは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。