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異世界から帰還した俺、数千年後のSF世界を冒険する  作者: シン


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第8話 未来の食卓

〘お待たせいたしました。ご注文の串焼きセット三点です〙


 ふわふわと浮く配膳ロボットは、四角い皿の上に乗る串焼きの山を、それぞれの前に置く。


「うまそうだな~~」


 トウシはそう言って口を開きながらよだれを垂らす。その姿はまさに獲物を狙うワニのようで、俺の背中が少しゾクリと冷えた。


 改めてトウシにはワニの血が流れていることを実感した。

 


 俺も出された串焼きの山から一番上の肉の串焼きを手に取り、口へ運んだ。串に歯を立てた瞬間、見た目が竹の様に見えるその串の感触は、意外にも竹などではなかった。それは、わずかに金属特有の熱を持ち、硬くカチリと歯が金属の串に当たる音がした。


 俺は肉を舌の上で転がした瞬間、思わず眉を寄せる。


(これあんま美味しくないぞ……)


 噛み締めても、肉らしい弾力や旨みがない。かわりに感じたのは、肉の食感に近い人工物のような特有の何かで、肉の串焼きのソースも似たような味。例えるなら、主食の食材の味を若干変えてそれをおかずにしたような、そんな感じの味だった。


「どうした? 口にあわなかったか?」


 眉を寄せて食べる俺に、トウシは首をかしげて尋ねる。


「いや、そんな事ないぞただ、初めて食べる味だったから」


 俺は笑って誤魔化した。そう、美味しくないだけで、まずいわけではないのだ。


 「そうか、ここのフードプリンターは高級品だからな。初めて食べるのも無理はない」


 何やら聞き慣れない単語がトウシの口から発せられ、俺の頭には疑問が浮かんだ。


(まあ、あとでハルカに聞けばいいか)


 俺はそのまま気にせず、串焼きを口に運ぶ。しかし、皿の上に乗る串焼きは、野菜が刺さった串も全て食感と味が変わっただけで、初めに食べた串と同じ様な特有の何かを感じた。


 俺はそのままハルカやトウシと当たり障りのない会話をしながら食事を済ませ、居酒屋を出る。


〘ご利用ありがとうございました〙


 店内から流れて来る機械音声を耳にしながらトウシが居酒屋の扉を閉める。


 「二人はこれからどうするんだ?」


 「そのことですが、マスターお話しが……」


  ハルカは眉を寄せ、申し訳なさそうにしながら、一歩前に踏み出し、俺に近づく。


 「どうしたの?」


 「食料周りやその他家具の買い出しが必要です」


 そう、傭兵は何日も宇宙を航行する事もあり、あちこちを移動するので、戦闘艦の内部には居住スペースがあるのが当たり前だ。しかし、白月は新造艦なので居住スペースには何もなく、食料も全く積んでいない。ハルカが買い出しが必要というのも当然の話しだ。


 「そうか……まあ、俺もどんな物が売っているのか見てみたいし、いいんじゃない」


 「なら俺が揃えのいい店を知ってるから、良かったら案内するぞ」


 トウシはニカッと笑い、自信ありげに親指で自分を指して胸を張って答える。

 

 「そうですか、では、お願いします」


 ハルカはトウシに軽くお辞儀をすると、トウシは慌てたようすで両手を振りながらあたふたとして、それはまるで偉い人にお辞儀をされたかのようで、トウシは若干青ざめていた。

 俺はそんなようすに、思わずふっと笑いを漏らした。


 トウシに案内されてしばらく歩くと、見上げるほど大きなタワーの下に着く。それはまるで現代の高層ビルのようでもあるが、それとも違い複数の連絡通路が建物につながりまさに未来の建物と呼ぶべきものだった。建物は人の出入りがとても激しく、中に入るとそこは、家電量販店のような雰囲気で見慣れない家具や製品が所狭しと並んでおり、多数の客が商品を眺めていた。


「まずは食料からですね」


「となると、フードカートリッジのコーナだな」


「いえ、フードプリンターが無いのでそれからですね」


 トウシとハルカの会話を聞いていた俺は全く何の事かわからず。なんのこっちゃと思いながら聞いていた。そして、移動中にハルカにこっそり聞いた。ハルカいわく、どうやらこの世界の食べ物はほぼすべて3Dプリンターのように出力した食べ物らしい。このフードカートリッジには生物が生きるのに必要な五大栄養素がすべて揃っているらしく、フードプリンターにセットして様々な料理を出力して食べる。これがこの時代の主食で、一部の大金持ちだけが本物の食材を口に出来るようだ。


 この世界の食べ物があまり美味しくない理由はこれか。


「この辺だな」

 

 そう言ってトウシに案内された場所にはかなりの数の見慣れない製品が立ち並んでいた。その製品のほとんどが長方形の形で、まるで電子レンジのような見た目で色もさまざまだった。


「これだけ多いと、どれがいいとかわからないな……ハルカどれがいいとかわかる?」


 余りにも多く見慣れない製品に、俺は一つ一つ食い入るように見比べるが、当然違いなど分からないので、すぐに一瞬目を通して通り過ぎるだけになった。

 

「いえ私も詳しくは……トウシのおすすめはありますか?」


 ハルカも困り顔でトウシに助けを求める。


「そうだな…具体的な要望とかあるか?」


「要望……そうですね値段が高くても構わないので本物の食材に近い味の物を」


 ハルカには俺の食料事情に気を使わせて少し申し訳なく思った。ホムンクルスであるハルカは基本的に食事を取る必要がない。一応食べる事も出来るが、異世界にいたときも俺がいないと食事を取らなかった。ハルカいわく、食事を取る必要がないから食費の無駄だとの事。だが、食べる必要がなくても旨い物を食べると気分も良くなるよと何とか言いくるめて俺がいる時だけ食事を取るようになった。そこら辺の所は変わらないのだなと小さなため息が出そうだった。


「それなら。こいつだな天桜日皇国(てんおうかこうこく)製の最新モデル。」


 トウシに案内されて見せられたそれは、電子レンジをそれなりに大きくしたような長方形で正面に透明なパネルの蓋があり、中が見えるようになっていた。しかも、透明なパネルはフードプリンターの操作スクリーンも兼ねていてとても未来的だった。


「こいつは、ほとんどのフードカートリッジに対応している。しかも、新機能の食感味覚再現システムを搭載している。そのおかげで料理に使われる素材の食感と味を高いレベルで再現できる。値は一千万少しとかなり値が張るが損は無いと思うぞ」

 

 トウシはその後も懇切丁寧にいくつかのフードプリンターを紹介してくれて、いくつかの商品を比較検討することが出来た。トウシには感謝しかない。


 そして、トウシの紹介してくれた物を比較検討した結論、初めに紹介してくれた天桜日皇国(てんおうかこうこく)製の最新モデルを購入することにした。


 流石に一千万という額をさらりと払うハルカの心持ちには、驚きを通り越して逆に申し訳なく思ってくる。俺にはこんな高額の物を即決する勇気はないな。そんな事を考えながら、身の回りの品を揃えていく。少し意外なのが机やソファー、ベッドなどは数千年経っていても便利な機能が追加されただけで見た目に大きな変化はないことだった。これらの品は流石に高額の物ではなく、俺が地球にいた頃と近しい値段の物を選んだ。一通りの物を揃え終え、俺達は店内を練り歩いていた。

  

「これで全部か?」


「はい、手伝っていただきありがとうございます」


「堅苦しいのはよしてくれ、ハルカさんには命を救われたんだ、これくらいのことは喜んでさせてもらうぜ」

 

 二人の会話を耳に、俺は先ほどとは違う、がらりと変わった雰囲気に辺りを見回す。周りには先程の家電量販店のような実物の商品が立ち並ぶ様子とは違い、丸く小さな円盤のようなものから、ホログラムで砲のような兵器が映し出され、それが所狭しと並んでいた。俺は見慣れない光景に思わず尋ねる。


「なあ、ここらへんは何を売っているコーナなんだ?」


「ああ、このへんは、戦闘艦の兵装とかの交換パーツだな。実物はデカいからホログラムで映し出されているんだ」


「戦闘艦のパーツ? 交換できるの?」


「出来るぜ。なんせ傭兵は既存の船体に兵装、ディフレクターシールド、重力ドライブまで選んでカスタムで作る奴もいるし、購入した組み立て済みの機体の兵装をわざわざ交換する奴もいるから、傭兵歴が長い奴ほど機体も皆違い、同じ機体は一つとしてない」 


「なるほどな、ハルカ、となると俺達の白月はどういう扱いなんだ?」


「白月はオーダーメイドの機体ですねマスターの好みに合わせて船体からすべて、造船師シュタウトと私でゼロから作った機体です」

 

「ぞうせんし?」


 俺は聞き慣れない単語に、同じ言葉を繰り返すオウムのように知らない言葉を口にする。すると、横から驚いた様子でトウシが食い気味に尋ねる。


「シュタウトってあの、自身が認めた人にしか作らないことで有名な、数々の名機を生み出した。あのシュタウトと共同で!!」


「はい、そのシュタウトです」


 完全に置き去りにされて、二人を眺める俺に、トウシが口を開く。


「造船師ってのは、正確には造船技師って言うんだが、個人客に合わせて機体をカスタムしたりオーダーメイドで作ったりする奴のことだ。普通、オーダーメイドを受け付けてるのは大企業でな、個人でやってる奴はほとんどいない」


 「つまり造船師は宇宙船を作る職人てやつ?」


 「造船技師シュタウトは謎が多くてな。性別どころか、どこに住んでるのかも分からない。だが世に出した機体は、すべて一級品だ。その機体に乗った奴が歴史に名を残すことも珍しくない」


「す、すごい人だな……」


 俺は余りにもすごい人が白月を作った事に若干困惑しつつ、どうしてそんな人に機体を作ってもらえたのか、ハルカに理由を聞きたくてたまらなかった。


「にしてもよく、作ってもらえましたねハルカさん」

 

「ちょっとした取引をしました。そしたら喜んで共同で作る事になりました」


 かなり驚きつつ話すトウシに、ハルカはにこやかに笑って答える。


 いったいどんな取引をしたんだろうと、一瞬だけ心配になりつつも、ハルカなら大丈夫だろうと言う思いがあり、すぐにその考えは立ち消えた。


「気になるから、少し見て行ってもいい?」


「私はかまいません」


「俺も見て行きたいしな、それに説明なら任せろこの手のには詳しいからな」


 そう言って 三人で少し見て回ることになった。

 

忙しくて投稿遅れました。すみません。次の投稿は8月になると思います。


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