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僕は化け物の皮肉に皮肉でかえした。

私は路地裏を走っていた。


「いや!来ないで……来ないで!」


私は追われている。

言葉では説明できないような存在に。

謎の存在のほうが足が速い。

どんどん追い付かれる。


「いっただっきまーす!」


私は死を覚悟した。

真後ろに化け物がいるのだ。

私な立ち止まった。

逃げる事を諦めたのだ。


その時、私の横を黒い影が通り過ぎた。

後ろで轟音がした。

まるで自動車が追突事故を起こした時のように。

私はゆっくりと後ろを振り向いた。

そこには……黒いライダースーツに身を包んだ男がいた。


「仮面ライダー参上!」


……仮面はつけてはいなかった。





「あーあ、せっかくのバイクが壊れちまったよ」


僕は時速90オーバーのスピードで化け物に突撃していった。

そんな事をそれば、もちろんバイクが壊れるのは当たり前。


「でもさ……なんでバイクに突っ込まれてピンピンしてるのさ」


そこに一人?当たり前に当てはまらない存在がいた。

突撃された化け物は少しダメージを受けたようだが、ピンピンしている。


「痛い、痛い。お兄さん、バイクで突っ込むのは危ないよ」


「おいおい。化け物さん、女の人追いかけるのは犯罪ストーカーだよ」


僕は化け物の皮肉に皮肉でかえした。


「さ、そこの方。はやく逃げてください」


僕は立ち止まっている女の人に話しかけた。


「そこに居ると邪魔になります」


女の人は僕のその一言を聞いて逃げて行った。


「これで邪魔者は居なくなった。さて、聞かせてもらおうか。君は契約者だね」


僕は化け物に質問をした。


「へー、お兄さんも契約者なんだ」


『も』という事はやはりこいつも契約者って事か。


「なんでこんな事をした?」


僕は次の質問をした。


「ふふ、そこに人間エサが居るんだよ。『強欲』で『暴食』な私が我慢できるとでも?」


強欲、暴食。おそらくこいつの契約感情。

二つの契約感情を持つ契約者。

……もしそれが二つだけではなかったら。

その仮定が出てくる理由。それは契約感情が七つの大罪の内の二つだから。

例えばこいつが『七つの大罪』という項目で契約していたとしたら。

それは七つの力を持つという事だ。


僕は思考を止め、走り出した。

相手が動き出したからだ。


「あれ?逃げるの?まぁ良いや。私、鬼ごっこは強いよ」


違う。逃げるのではない。

ここは路地裏だ。一本道では僕の力を生かしきる事はできない。

だから僕はこの先にある。

市のグラウンドを目指しているのだ。

前日の内にこの周辺で広い場所。そして使われていない場所を探しておいた。

この路地裏から近い条件に当てはまる場所はそこのグラウンドしかない。


「着いて来いよ化け物!たっぷり楽しませてやるぜ!」


僕はさらに加速した。





僕はグラウンドの中心に立っていた。


「へえ、ただ逃げてたんじゃなくて、ここを目指して走ってたんだ」


「そのとおり」


僕は『正義感』の力を発動する。

黒いライダースーツの上に白いライダースーツが現れる。


「『英雄の証明』発動!」


僕は地面を蹴った。

その初速は音速を超えていた。

一瞬で化け物の近くに来た僕はその速度のまま蹴りを三発くりだした。


「『ソニックショット』」


そして僕は地面を蹴って化け物の近くから離脱する。

これが正義感の力、圧倒的な速さ。


「痛いねぇ」


だが僕の音速の蹴りを受けても化け物はたいしたダメージを受けた様子は無い。


「へぇ、速いね。成る程、自分の力を一番使える広い場所に誘導されていたのか」


化け物がなにか言ってるが無視だ。

僕はもう一度走り出して化け物に近づく。そして蹴りをくりだす。

また離脱する。

これが僕の高速ヒットアンドアウェイ戦法。

僕はこれを繰り返していた。

だが、少しづつかわされるようになってきた。

理由は分からない。

相手が速くなっているのか。

僕が遅くなっているのか。


「くす、私のスピードもお兄さんに追いついてきたね。なんでか分かる?」


それが分かったら苦労はしない。


「いい事を教えてあげるよ。これは私の力の一つ、『強欲マモン』。この力はどんなモノでも欲しがるんだ。……たとえそれが敵の能力だったとしても」


強欲の力……。


「お兄さんが私に触れるたびに、お兄さんの速さは少しづつ私に吸収されてたんだよ」


力の吸収。

今の速度で僕と化け物は同じくらい。

これ以上、僕が攻撃したら……化け物の方が速くなる。


「もともと攻撃力がそんなに高くないお兄さんじゃ勝てなかったんだよ」


力不足。

勝てなかった。

自分の正義を貫けない。

それは僕の存在の否定。


「アァァァア!」


僕は叫びながら突撃していった。

下策なのは分かっている。でも、僕にはできる事がなかった。


「くす、これでお兄さんも終わりみたいだね。お兄さんこ心も美味しくいただくよ。

心と速さを食べさせてもらってありがとね……お兄さん」


その声を聞いた時、僕は自分の終わりを悟った。

僕は心の、感情の、自分の存在の死を受け入れた。


でも、僕は死ななかった。

さっき僕がしたように一台のパトカーが化け物にぶつかっていったのだ。


「よお、お前ら。警察に通報があったぞ。派手にドンパチやっとるらしいじゃねぇか」


男がパトカーから降りてくる。

そして腰のホルスターから拳銃を抜いた。


「多分、あの化け物も一般人ですよ。一般人にそんなモノを向けていいんですか?」


僕はその男に皮肉を言った。

僕はその男をよく知っている。


「あれのどこが一般人だ。

人よりも動物みたいな格好しとるやないか」


その男はこの事件で僕とタッグを組んでいる人。


「警部さん……」

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