1132.天界裁判21
「へ? きゃあぁ!?」
「うおぉ!? なんだここは!?」
タオル一枚でおそらく水浴びか風呂に入ろうとしていた女性型堕天使さんや、トイレ中? だったと思われるお兄さん堕天使が悲鳴を上げる。
タイミング、悪かったっすね。
天使たちに凄いものを見られた彼らのトラウマはどれほどのことか。
別にそこまで私生活再現しなくて良かったんだぜ?
「うむうむ。これで全員じゃな」
「一部致命的な状況っぽいんだけど」
「そこまでは責任は持てんわい。儂がやれるのは去って行った者を引き寄せるだけじゃ。相手の状況まで見て時間考えるとか無理じゃ無理」
まぁそりゃそうか。
「な、なんなんだ!? 天界!? なんで!?」
「静まれ!!」
堕天使たちが困惑して騒ぎ始めた時だった。
ミカエルの大音声にびくり、堕天使たちが言葉を止めた。
「み、ミカエル、様……」
「まず、落ち着いて聞いてほしい。堕天使たちよ」
ミカエルより、堕天使たちに事の経緯が話される。
無実の罪で堕天させられたこと。
メタトロンの行き過ぎた正義感とアクニエルのちょっとした悪行が重なって致命的な失態を生んだこと。
神より、悪行に身を染めていない堕天使を天使に戻す許可が出たこと。
「そんな!? すでに私の身は血で穢れたのですよ!」
「俺は堕天の腹いせに享楽を覚えて、今更どうしろってんだ!」
「堕天させられてまで神に誓いを立てられる存在などほぼ皆無なのですよミカエル! 多かれ少なかれ、我々の羽は黒く染まっている! もはや、戻ることなど出来ない!!」
あー。まぁそりゃそうか。天界から追い出された理由が意味不明な理由で、しかも自分の主張を完全に無視しての堕天だもんな。半ば正義感が強いからこそ、こんな正義捨ててやる、と悪魔たちと付き合い始めた彼らが天界に戻れるなんてのは、さすがにちょっと難しいか。
まぁ、それでダメージ受けてるのはメタトロンだけどな。自分の行き過ぎた正義で堕天させた彼らがもう手遅れになって天使に戻れない、となれば、自分の責任だと自責の念に駆られるだろう。
ま、それ自体が罰なんだけどな。
さて、神様はどんな判断を……おお?
堕天使たちのウチ、羽が黒く染まり始めていた者たちの羽が純白へと変わっていく。
なるほど、多少の悪行、堕天行為は目を瞑ろう、ということか。
神様判断らしいけど、半分くらいは天使として戻れるようだ。
「傾聴せよ」
ヤアスリエルが声を発する。
多分だけど神からの声を代弁するようだ。
「我らが唯一神様より堕天した者たちへ救済を与える。多少の罪科は目を瞑ろう。お前たちは正義であった。ゆえに選択肢を与える。このまま堕天使として魔界に住むか、天使として再び天界で私の為に働くか。その方たち自身で考えよ、と我らが神が仰せである」
「真っ黒に染まってたり半分以上黒いメンバーは堕天したままか……」
「世知辛いのぅ。まぁ自分で堕ちたゆえのこと、そうなるかどうかは本人の絶望次第じゃしなぁ」
「んじゃ、黒い羽の堕天使たちはお帰り願える?」
「えー、送り返すの面倒なんじゃが」
しゃーねーな。じゃあこれ。キマリスさんの水着姿の写真。
「む、まぁエロいといえばエロいが……ふむ、後でキマリスをいじるのにはちょうど良いか。お主も悪よのぅ」
「アガレスさんには敵いませんや」
二人揃ってうぇっへっへっと悪人面で笑い合う。
意外と馬は合いそうだな。悪魔だから気を許し過ぎると致命的な失態させられかねないけど。
「では、羽が黒いのは全部魔界へ送還じゃな」
「ちょ、ちょっと待てまだ納得いかな」
あー。強制送還だからセリフ言い切る前に戻されちゃった。
「ほい、これで終わりじゃ」
「まだ彼らは何かを言いかけていたようだが?」
アナフィエルさんがイラっとした顔で告げる。やはり魔王を相手にして冷静でいるのは難しいのだろう。天使の宿敵だしなぁ。
「むっほっほ。あれ以上相手にしたところで何の進展があるんじゃアナフィエルよ。罵詈雑言を聞くだけならさっさと送ってやった方が双方にとってよかろうに」
「詭弁だ」
「ほいほい。儂のぷりちぃな精神性からくる優しさが理解できんとは。悲しいのぅ。悲しいのぅ」
と、涙を流すアガレスさん。途中アナフィエルをちらちら見なければウソ泣きだとはバレないかもしれないのに。残念娘だなぁ。アナフィエルさん挑発されてると思って青筋浮かべてるじゃん。
「えーっと、そこの元堕天使さんたち。とりあえず天界に戻る許可は出たみたいだから、どうするかは自分たちで考えて。あと、今は審判の最中だから、よかったら傍聴席の方でゆったりしておいてください」
俺の言葉に、何か言いたそうな天使たちだったが、告訴されている被告人席にいる人物を見て目を見開く。自分たちを堕天させた張本人たちなのだ。
状況を理解した天使たちは素直に傍聴席へと向かっていくのだった。




