1126.天界裁判15
「では被告人アクニエル。証言台に」
「わ、私が、この私が、被告? ぐぬぬ、ツチミカドヒロキ、覚えておれよ!!」
おいおい、俺に怒りを向けてる場合か?
そんな余裕あるのかよ?
「さて、アクニエル。疑惑に対して言い分はあるか?」
アナフィエルさんの言葉にアクニエルは腕を組んでふんっと鼻で笑う。
随分な態度だなぁ。
「ふん。ただ一人の天使による噂話だろう。真に受ける方がどうかしていると思うがな」
つまり、この程度では認める気もない、って訳だ。
「原告側、このように証言されているが?」
「では原告側は二つ目の映像を提出します。これは未編集のため結構長いです。ミカエルさんにはすでに渡しているのですが……」
「ああ、こちらで編集はしておいた。こっちが元の映像。今ログジエルに渡したのが移動などを省いた映像だ。証拠能力としてこちらの元映像を提出しておく。今回見るのは編集済みのモノだがな。言っておくが都合よいように編集しているわけじゃねぇぞ。カットしたのは移動部分だけだからな」
そして流れる映像。これは各所の天使たちに尋ねたアクニエルについての噂話である。
次々に湧き上がる疑惑に観覧していた天使たちがざわめきだす。
これほどの天使が噂しているうえに様々な疑惑が湧き上がっている。
たった一つなら口を揃えてアクニエルを貶めているだけ、ともいえるかもしれないが、疑惑の種は複数存在し、そのほとんどがすでに有罪判決を受けて堕天済みだ。
「さて、こちらに上がった疑惑の天使たちをラドゥエリエルさんが調べてくれているそうです」
「私ではなく、アリオフ、マリオフですけどね。ええ、今までの裁判記録を調べて貰いましたが、疑惑に上がっていた天使全てがメタトロンが裁判長の時、アクニエルの告発を受けて断罪。堕天の刑となっています。しかし……」
一度言葉を切り、ラドゥエリエルは困惑の顔をする。
「皆さんに見せられない場所は黒塗りにさせていただいていますが、これらが堕天の罪となった罪状っだそうです。メタトロン、これ、本当に堕天にしたのですか?」
「……黙秘する」
ちょっとメタトロンさん。黙秘権使うのはいいけど、ソレ疑惑深めてくださいって言ってるようなもんだよ。
「映像として提出された資料を見てみるが、うーん。俺にはどのくらいが堕天の罪になるのかわからんな。ただ、アクニエルに対して暴力行為、とか、アクニエルに対し地位を貶めようとした罪、とかで堕天するのはやりすぎでは? そもそも地位を貶める、っていうかもう、これアクニエルの悪行を告発しようとした、の間違いじゃね?
「こりゃひでぇな。ドキエルやピュリエルの時ですらこんな杜撰な判決はしねぇだろ。おいメタトロン、さすがにこれはお前の審判能力を疑わざるをえないぞ。なんでこんなことをした!!」
「……罪人を罰しただけだ」
取り付く島もねぇや。
これ、アクニエルに弱みでも握られてんのか?
どうもメタトロンは俺やマイネさんに敵意を持っているというよりは、罪人として告発された相手に敵意を持っているようだ。
んー、なんか運営の悪意を感じて来たぞ。
これ、もしかしてしょうもない結末が待ってたりしねぇか?
まぁいい、とりあえず今はアクニエルだ。
「メタトロンさんに関しては現状黙秘のようなので、アクニエル側に戻しましょう」
「おっと、そうだったな。ウリエル、ラファエル、ガブリエル、異論は?」
「「「ありません」」」
「ではアクニエルに対して敵対した天使が悉く罪人として告発され、堕天している件に関してですが、まずはアクニエル自身にお聞きしましょう。言い分は?」
「ふん。奴らが悪行を行っていただけだ。堕天するにふさわしい奴らだった。それだけだ」
「サンダルフォンの優秀だった部下たちも? 確か教会の司祭も堕天させられたとか?」
「だから、奴らが悪行を行っていたんだ。堕天して当然だった!」
「俺の部下は誠実に見えたがな。それとも、俺に見る目がなかったと? 奴らはアクニエルを断罪する、と息巻いていた。そして犯罪者となって堕天した」
「んー、サンちゃんとこだけじゃなくてぇー、いろんな天使が堕天してるよねぇ。ちょっと、メタちゃんとアーちゃんの裁判の時、堕天多くなーい?」
まさに針の筵。
アクニエルは青い顔をしながらも自分は悪くない、奴らが堕天するほど悪徳天使だった。の一点張りである。
「さて、告発に関する資料はまだあるが、アクニエル、本当に、自分は悪くない、がお前の主張でいいのだな」
ラドゥエリエルさんが傍聴席から立ち上がり、俺の隣へとやって来た。
さらに、サラカエルさんまで立ち上がって俺の元へやって来る。
別にこっち来なくてもいいんすよ?
「これは一つ前の裁判の記録なんだが、今回同様、メタトロンが裁判長、アクニエルが告発人となっている。罪状はアクニエルへの誹謗中傷。裁判自体は弁護人の終始不利で終わったのだが、サラカエル、この罪状であれば罰は何が相当か?」
「そうだな。誹謗中傷程度であれば謝罪、訓告、最悪でも片翼捥ぎまでだろう」
最悪だと翼片方捥がれるのか。それもそれで酷くね?
まぁよほどひどく悪口言ってたらそうなるんだろうけども。




