1120.天界裁判9
本来であれば、こんな状況にはならないはずだった。
しかし、この天界裁判においての判決は天界専用の法典に則り行われる。
天使法律は当然ながら天使たちの行動により証明されているモノを運営が都合よく適当に法典っぽくまとめたものになる。
ゆえに穴だらけなのだ。
こうして一つの証言で告訴自体が揺らいじまうくらいには。
つーわけで、裁判長、どうすんの?
まだやる?
「べ、弁護人、つまり貴様は、一般市民に火を放った件については、証拠不十分であると……いうのだな」
苦虫噛み潰した顔でメタトロンが告げる。
ありえん。といいたいところだろうが、天界の法律を持ち込まれたことで認めざるを得なくなりつつあるようだ。
「ま、まだだ! 弁護人、火を放ったのは被告のマイネ、これは確定なのだろう! ならば人間である以上救済という言葉は「異議あり! 人間の中には聖人と呼ばれるものもいる。救済を求める声が多数だった場合、マイネさんの行いが聖人的な救済に当たる可能性がある」だが、この女が聖人足りえんことは明白だ!」
ウリエルさんとの舌戦。ってかこれ間髪入れずにしゃべっちゃって大丈夫?
メタトロンが眉間にしわ寄せて唸っているから気にせず舌戦繰り広げよう。
「明白だろうがなんだろうが、現に証言はでていますよね。地獄の十三王が一人、五官王により、救済されて感謝していたものが居た。これはゆるぎない事実「だがそれは一人かもしれないだろう」逆に99%の市民が願ったかもしれないですよね?「それは実際にありえん数字だ」ありえなくとも可能性が1%以上あるならば可能性として存在している「それを言ってしまえばどんな犯罪者も無罪になってしまうだろう!」それこそ拡大解釈です」
しばしの舌戦の末、ふと気づけば二人揃って何を話していたのか理解できなくなっていた。
話が二転三転していった結果、全く関係のない話をああでもないこうでもないと議論していたのだ。
「……話を戻すぞ」
「そうですね。ですがこちらの主張は変わりません。審議不十分、告訴側の証明不足により第一議題は審議不可です」
「マイネマイネは正義の味方ではなかった。そしてただの一般人が一般人を虐殺するのは大罪だ「何度も言っていますが、天使法に書いてあるように彼女の行いは救済として、さらに不特定多数の救いを得た、これは事実です」だから一人かも「人数はもはや証明不可能でしょう、ここは議論出来ない場所です」ぐぬぅ」
ウリエルさんがかなり酷い顔になって睨んできている。
仕方ないじゃん、今回舌戦の敵同士なんだからそっちの主張認める訳にはいかないんだし。
「地獄では、すでに罪が出ているのだろう。ならば有罪、それで確定だ」
「愚問ですねウリエルさん。ここは天界で地獄の法は通用しない。ここで重要なのは天使法典による法律が優先「だが、その法律に関しても」救済行動は聖人の行いである「だからマイネマイネは聖人足りえる存在では」当時の行動を持って聖人的行動であるとする、これは天使法典にも書かれている「そんな行は存在してない!」いいえ、ありますページは……」
「……もういい」
不意に、メタトロンが呟く。
頭を片手で支えながら、頭痛でもしているのか苦痛の顔で俺たちを見る。
「いいだろう。一つ審議不能となったとて、マイネマイネの罪がすべて消える訳ではない。この件はひとまず棚上げだ。二つ目の審議に移れ。商店街を焼き討ちにした件だ」
「よ、良いのですか!?」
アクニエルが驚き思わず尋ねる。
煩わしそうな顔を彼に向けたメタトロンは、落ち着かせるために息を吐く。
「構わん。どうせ罪状に揺るぎはない。商店街の焼き討ち。これはマイネマイネが火を放ったと証明されている以上事実だ。これを覆すなどできんし、彼ら罪なき者たちの焼殺は無罪には出来まい!」
なるほど、次はそちらで議論するのか。
いいぜ、受けて立つ。
そっちも潰して無罪放免、天界から凱旋してやんぜ。
というか、そうしないと天界で闇堕ちマンホール少女のマンホール乱舞が行われかねないからな。
なんでだろうな? 俺、天使たちから天界守る為に弁護してる気分になって来たぜ。
お前らの為にやってんのになんでお前らが邪魔すんの? って感じだよな?
さって、次の議題を潰す策は、っと。やっぱパワープレイ、全部クモリエルが悪い、で通すしかねぇかなぁ。
正直言わせて貰うと結構薄氷なんだよなぁ、弁舌スキルでごまかしごまかし行くしかねぇ。
さっきの議題に関しても半ば強引に持ってったようなもんだからな。冷静にツッコミ入れられたりしたらメタトロンも今の主張は認めない、などで俺の行動封殺して来てもおかしくなかったわけだし。
今のところは本気でスキルと幸運に救われてるが、果たしていつまで通用するやら。




