この世の価値
ここは君に逢えた場所ー・・・
人生なんて、所詮つまらないものだと思っていた。途中で放り投げたって誰も文句は言わないし、
その方が生きているよりずっと楽だと思っていた。今も、そう思っている。
でも、俺が人生を投げ出さないのは、この世にはまだ生きている価値があるからだ。
『恋愛なんて所詮一種の病だ。』
なんて言っている奴はかわいそうな奴だと思う。愛することの喜びも、愛されることのうれしさも知らない、かわいそうな奴だとー・・・。
―――――――――――中学2年 冬――――――――――――
「お兄ちゃんっ!」
自分が存在する意味も、この世の価値も、何もかも否定していた俺はそれでも一応親に心配はかけまいと、毎日学校へ重い足を運んでいた。
雪の降る日。玄関を開け傘を持たずに家を出た俺は、曲がり角を曲がるちょうどその時、後ろからかけられた声に気づく。が、なおも足は動いている。
「お兄ちゃんってば!!」
後ろからする耳障りな雑音を無視し続け、俺は足の動きを速める。
・・・―――――――ガクンッ!
一瞬で世界が歪んだ。目を開けるとそこには空。着ているコートには誰かがひっぱっているような違和感。後ろを振り向き、迷惑そうな目を紅葉に向ける。
「ずっと呼んでるのに!無視しないでよ!ほら、これ。ほんっと秋斗は世話が焼けるんだから!」
そう言って、紅葉が俺の胸に傘を押しつける。俺は傘だけ受け取り、紅葉と一言も会話を交わすことなくまた重い足を引きずって学校へと向かう。
「~っ!秋斗、待って、私も一緒にー・・・」
後ろでは紅葉が何やら言っている。・・・が俺は無視。
突然後ろの腰のあたりが温かくなる。
「一緒に行こうよ。私、秋斗と歩きたい。いいでしょ?」
俺の方が断然背が高いため、どうしても上目づかいになる紅葉。下からのぞきこまれた俺は、一瞬動けなくなるが急いで正気を取り戻し、また歩き出した。
「あ。ちょっと!なんでいつもいつも無視するのよー!・・・言いたいことがあるなら言ってよ・・・。」
俺は振り向かずに
「1人で行けばいいだろ・・・。ついてくんなよ。」
と冷たい言葉を吐き捨てた。
「・・・・・・。」
今、紅葉はどんな顔をしているのだろう。どんな気持ちなのだろう。考えたくなくて、俺の脳細胞が
必死に紅葉の顔を映し出すのを阻止していた。
神様。
俺は、たった1つのこの世に生きている価値を失ってしまいそうなんだ。
せっかく見つけた。
ずっと大事にしていた。
でも俺は傷つけることしかできないんだ。
惚れた女、たかが1人を幸せに出来ないんだ。
もしも俺があいつを失った時、
俺はぼろぼろになってしまう。
怖いよ。
あいつを失うことも、俺が壊れてしまうことも。
何もかもが怖いんだ。
否定し続けないと
本当に否定され、拒絶された時、
俺は立てなくなってしまうから。
あぁ。神様。
俺は、また
同じ過ちを繰り返すのでしょうかー・・・




