表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アラニュエの森  作者: あわふじ
第1章
PR
4/5

#ご飯

「ただいまー。わー、ユキただいまー」


庭からそんな声が聞こえてくる。


何事かと思ってロトを見れば、ロトは苦笑して窓に近寄った。


「おかえり、スク。ご飯できたところ」

「本当? やったあ!」


スク、という名前に合点がいった。


目が覚めたときに元気に話しかけてきたあの人だ。


近くにいた鹿野と松原は目を細めている。


スクのことは知らないはずだ。


庭から直接家に入ってきたスクは、鹿野と松原を見て少し動きを止めた。


スクは黒いマントを羽織っていた。


「わあ、目が覚めたの! 大丈夫だった?」

「スク、早く着替えてきなよ。そのままご飯食べるの?」


呆れたようにロトが声をかければ、スクは「はーい」とリビングの奥に駆けていく。


その後ろをユキもついていった。


「あれ、誰ですか?」


鹿野がロトに問いかける。


やっと、二人ともこの世界に少し慣れてきたところだった。


「スク。一緒に住んでるの」


へえ、と松原が目を丸くする。


「一人じゃなかったんだ」

「うん。スクは学園に行ってたからね。そろそろ帰ってくるんじゃないかと思ってたの」


壁にかかっている時計らしきものをロトが見上げる。


自分が知っている時計とはまるで違って、どう読むのかがさっぱり分からない。


「ご飯、わけよっか。シカ、お皿取ってくれる?」

「はい」


元々は二人暮らしのはずなのに、ちゃんとお皿は五つある。


ロトが魔法で創り出しているのを、藤田は見ていた。


この世界は不思議なものだ。


魔法を使えば速いだろうに、ロトは自分の手でご飯を作り、それを皿に分けている。


ご飯と野菜スープ、それに魚らしきものが並び、地球と似たような食べ物があることを知った。


スクがバタバタと走ってくる音が聞こえる。


リビングに顔を見せたスクは、ロトと同じような、自分たちの惑星にもあった服を着ていた。


藤田たちも地球にいた頃はよく着ていた服だ。


ユキも一緒に戻ってきて、スクの足元をぐるぐる回っている。


「ユキ、ご飯にしようね。ちょっと待ってね」


棚の前に立っていた松原を「ごめん」と押しのけ、ユキのエサらしきものを取り出したスク。


皿を取り出してその中にエサを入れ、しゃがんでユキの前にその皿を置く。


ユキはその間、じっと座っていた。


「いいよ」


そうスクが言うと同時に、がつがつと食べ始めたユキ。


一連の流れをずっと見ていた松原が、へえと目を丸くした。


賢い子だ。


ロトは机の上に皿を並べて、どこからか椅子を持ってきた。


机も大きくなっているような気がする。


「フジ、マツ、シカ。好きなところ座っていいよ」


ロトに言われ、戸惑いながら席に着く松原と鹿野。


藤田も、余った席から適当に選んで座った。


「あ、ロトちゃん。今日ね、カケ先生の授業があったの」


ユキの頭を撫でながら、ロトを振り返ったスク。


「カケ先生? 何かあったの?」

「うん。カケ先生って、調合薬学の先生じゃん?」


それで、スクが何を言いたいのかロトは察したらしい。


苦い顔をして、さっさと席に着く。


鹿野と松原は不思議そうな顔をしている。


二人が言う「学園」のことは、藤田も知らない。


立ち上がったスクも、空いていた席に座った。


「学生が水魔法をうまく扱えないから、調合薬学も話にならないって言ってたよ。学生は悪くない、悪いのはロト先生だって」

「だよね」


はあ、とため息をついているところ、ロトも大変らしい。


ロトがご飯を食べ始めたのを見て、鹿野と松原も食べ始める。


自分たちの惑星と同じように、ロトは箸を使って食べていた。


「みんなもロトちゃんのこと悪く言うんだよ。開講するって言ってたのに、また急に休講にするから」

「うん、最初の授業はいろんなところから怒られそう……やだなあ、学園行きたくないなあ」


ご飯を片手に持ち、遠い目をしているロト。


「そんなこと言ったって、学園には行かなきゃダメだよ。先生なのに」


スクは肩をすくめて、ご飯を食べ始める。


「ロトって、学校の先生なんですか?」


鹿野が気になったのか、ロトに問いかけた。


「ん? 学校じゃなくて、学園だよ」


鹿野を見たロト。


ロトは不思議そうに首を傾げている。


「学園、ですか」

「うん。スクも学園の学生だよ。まあ、学校の方に通う子どももいるけど」


学校というものも存在しているが、どうやら別物らしい。


「ロトちゃんはね、学園でも偉い先生なんだよ。有名な先生なの」

「え、そうなの?」


初耳だ。


藤田もさすがに驚く。


苦笑したロトは、黙ってスープを飲んだ。


「有名って、講義をサボるからでしょ」

「いや、それもあるけど。ロトちゃん、すごい研究者じゃん。家でもずっと本読んでるし」


研究者という単語に鹿野と松原の耳が動いた。


やはり、その単語は皆気になるらしい。


「ロト、研究者なの?」


松原の言葉に、不思議そうにロトはスクと顔を見合わせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ