#泥だらけ
鹿野と松原が庭から呼ぶ声がしたのは、藤田がご飯を食べ終わり、スクが片付けをしていた頃だった。
ユキと並んで庭に立っている。
本を読んでいた藤田が振り返って、顔をしかめた。
「うわ、泥だらけになったね」
「気づいたらこうなってました」
そう言って鹿野は苦笑している。
ユキは元々茶色いが、それでも泥だらけになっているのが分かる。
「どんな遊びをしたらそうなるの」
「すいません……つい子どもみたいに」
松原は気まずそうな顔をしていた。
「でも、楽しかったっすよね」
「うん、楽しかった」
「楽しそうなのは見てて伝わったけど」
あんなに楽しそうにはしゃいでいる、鹿野と松原を見たのは初めてだ。
それなりの付き合いにはなるが、今まで見た中で一番楽しそうだった。
「わ、遊んだね……俺が綺麗にするよ」
片付けが終わって、振り返ったスクも目を丸くする。
近くに置いてあったマントを羽織り、二人の元に向かった。
「迷惑かけます」
「このくらい、いいよ。失敗したらごめんね」
「え」
不安そうな顔になった鹿野と松原。
スクの人柄自体は信用しているらしいが、スクの魔法は信用できないらしい。
「失敗して大事になるような魔法は、俺らにはかけないでよ」
「大丈夫、得意な水魔法と風魔法しか使わないから。失敗しても大事にはならないよ!」
へへ、と笑ったスクは、真剣な顔になった。
スクが両手を広げると、パッと服が綺麗になる。
泥がついていた手や顔も綺麗になっていた。
「どう?」
「わ、綺麗になった」
「成功したね。よかったあ」
ユキは洗おっか、とマントを脱いでから、スクは庭に出る。
「二人は家に入って大丈夫だよ」
「ありがとう」
「いいえー」
庭の隅にある池の中に飛び込んだユキ。
水が跳ねて、飛沫でスクはびしょ濡れになった。
間一髪で、家の中に入っていた鹿野と松原は無事だ。
「わっ……ユキ、やったなあ」
軽く怒りながらも、結局スクも池の中に飛び込んでユキを洗っている。
なんだかんだで楽しそうだ。
「鹿野も松原も、楽しむのはいいけどほどほどにね」
「はーい」
返事をして、床に寝転がった鹿野。
かなりこの家に慣れてきたらしい。
「鹿野、そこで寝るなよ。邪魔だよ」
「乗り越えていってくださーい」
「はあ? 蹴っ飛ばすぞ」
「それはやめてくださーい」
二人の会話に苦笑して、藤田はまた本に目を落とす。
兄弟のような二人だ。




