表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/86

第49話 みんなに証明してみせる

気づけば、裏方から頭を出してステージ上のパフォーマンスを見ていた。一人で弁当を一つ食べてから、もうすぐ午後の公演が始まる。

「どうや?緊張してるやつおるか?」アコは自分のミネラルウォーターのボトルを置いて、みんなに尋ねた。

「おらへん!ハナルちゃんは?セイナちゃんは?」カガミは気持ちが高ぶり、今回はコンサートが始まった時よりもさらに興奮していた。

「私やキリカに聞かんの?」ヒデミは笑った。

「それはあんたたちがすごいからや!聞かんでもきっとやり遂げられる!」

ハナルは深呼吸をして言った。「もう、緊張しないよ!歌、歌詞を忘れるなんて、ぜ、絶対にないから、みんなも、頑張ろうね。」

セイナはハナルの肩を叩いて言った。「今回の公演が終わったら、うまくいったら両親に伝えるね。彼らが……これからも……」

「セイナちゃん、ギターを持ち帰ってへんの?」

「いいえ、私はまだ臆病ですから。」

「じゃあ急がんでもええよ。伝えたいなら伝えればええし、オレたちには内緒で一緒に隠しとってもええで。」

「うん!頑張るよ。」

「セイナ、この頃ギターの腕前、ずいぶん上達したな。演奏もめっちゃ安定しとる。」

ヒデミはセイナを見つめ、目には賞賛の色が満ちていた。「セイナにはそんなに才能がないかもしれへんけど、あんなに努力するヤツは初めて見たわ。」

「ヒ、ヒデミさんが、こ、こんなことを言うなんて——キャラクターが、こ、壊れてしまう——」ハナルはとても驚いた様子を見せた。

「そうやな、久しぶりにヒデミちゃんが誰かを褒めてるのを見たわ。」カガミも同意した。

アコも微笑んで、キリカにライムジュースのボトルを渡した。

「ありがとう。」キリカが受け取り、一口飲んだ。「ふうっ、なんて酸っぱいの!」

「え?酸っぱい?うち、結構美味しいと思うけど。」

「お前このやろう…わざとやろ!」

「いいえ、酸っぱいのが好き。」

「酸っぱいもんが大好きなんや。例えば、油っこいもん食べる時は、レモン汁をちょっとかけるんや。」ヒデミが言った。

「変わった食べ方だね。」カガミが言った。

「実は本当に美味しいんやで。」

「一回食べさせてもらったら、もう酸っぱくてたまらんかったわ。もうええわ。」ヒデミはアコを軽く叩いた。

その時、テントの入り口が静かに開いた。

「こんにちは。」

入ってきたのは唯だった。今日はいつもの制服ではなく、白いブラウスに黒いパンツ。髪は後ろで一つにまとめている。シンプルな格好だが、どこか凛としていた。

「唯ちゃん!」カガミが立ち上がる。

「緊張してる?文化祭、楽しみにしてたんだ。」唯は穏やかな笑顔を見せる。カガミはキリカと目を合わせ、顔をそらした。

「唯さんこそ、もうすぐ出番なんじゃないの?練習はいいの?」キリカが探るように聞く。

「うん。うちらの出番はあなたたちの後から。まだ時間あるし、少しFAの演奏聴いていこうかなと思って。」唯はひょいとテントの中を見回した。

その時、セイナが一歩前に出た。

「唯さん。」

「ん?」

「……カガミさんのこと、取ろうとしたよね。」

空気が一瞬で張り詰めた。カガミはセイナを見て、何か言いかけてやめた。

唯は少し驚いた顔をした後、困ったように笑った。

「ああ……あの時のこと?まだ気にしてるんだ。」

「気にするよ。」セイナの声は静かだったけど、はっきりしていた。「カガミさんはうちらの大事なキャプテンだから。」

「……そうだね。ごめん。」唯は素直に頭を下げた。「あの時は、ただユキの気持ちを落ち着かせたくて、ちょっと無理しちゃった。FAを壊そうとか、そんなつもりじゃなかった。」

「ユキの気持ちって?」キリカが眉をひそめる。

唯は少し迷って、口を開いた。

「ユキ、本当はFAのこと、嫌いになれないんだと思う。自分から離れたのに、まだ気になってる。だから——今日の演奏、聴きに来るよ。」

「は?」カガミが目を丸くする。

「裏方の端っこにいると思う。気にしないで、いつも通りやって。それが一番だから。」

唯はそう言って軽く会釈した。それからアコの方を見て、「レジェンドさんの曲、楽しみにしてる。以前、ユキはずっと私に、あなたが加わったせいで自分の人生が台無しになったと言っていた。でも、私はそうは思わない。」と付け加えた。

「……ありがとう。」アコが小さくうなずく。

唯がテントを出ていった後、セイナがぽつりと言った。

「……信用できない。」

「セイナちゃん……」カガミが困ったように笑う。

「でも、演奏はちゃんとやるよ。それが私たちのやり方だから。」

「そうやな。」カガミがうなずく。「よし、そろそろ準備するか!」

「おう!」

六人がそれぞれの楽器を手に取る。キリカがスティックをくるくる回し、ヒデミがベースのチューニングを確認する。アコは新しいシンセサイザーをキーボードの上に重ねて、そっと指を滑らせた。

「アコ、大丈夫か?」ヒデミが聞く。

「うん。前田さんのおかげで、なんか新しい音が出せそう。」

「楽しみにしてる。」ヒデミはそれだけ言って、自分の位置に立つ。

その時、ステージの方からアナウンスが聞こえた。

『次は——フォルティシモ・アリーナ!皆さん、拍手でお迎えください!』

歓声と拍手が湧き上がる。カガミがみんなを見回した。

「行くで!」

六人はステージへ向かった。スポットライトがまぶしくて、一瞬息が止まる。でも、目の前にはたくさんの観客。ペンライトが揺れて、まるで星の海みたいだった。

「みなさん、こんにちは!FAです!」カガミがマイクに向かって叫ぶ。客席から「かわいい!」「FA!」と声が飛ぶ。

「キャプテンやで!みんなの一番可愛いスパークル——」

会場の多くの人々は、カガミのそんな気ままで自由奔放な性格が好きで、対する好感度は非常に高い。

「スパークル!頑張れ!!」

「カガミちゃん最高!」

カガミが手を振ると、後ろにいた5人もそれぞれ挨拶をした。

「今日は一曲目に——レジェンズのオリジナル曲をやります!タイトルは『あなただけのためのもの』!」

ごめんなさい。結局このタイトルを読めるのはハナルとアコだけですから。本来はアコにアナウンスをさせるつもりが、カガミが先にやってしまった。

アコがキーボードの前に座る。指を鍵盤の上に置いて、深呼吸する。

キリカのスティックが軽く鳴る。ワン、ツー、スリー——

「다른 여자는 보지 마」

「나만 봐」

「그 애들이 뭘 할 수 있는데」

「내가 훨씬 더 잘해」

アコのキーボードが優しく、それでいて力強く旋律を奏でる。カガミのギターがそれに応え、ヒデミのベースが低く支える。セイナは控えめにコードを重ねる。

ハナルがマイクを握りしめて歌い出す。澄んだ声が会場中に広がる。

「제멋대로 보지 마, 나만 봐」

「아직도 발견하지 못했나요」

「너는 이미 내 것이야」

客席のペンライトが一斉に揺れ始める。曲に合わせてゆっくりと、まるで呼吸しているみたいだった。前の方にいた女子が、小さく「すごい……」と呟いた。その言葉が波のように広がっていく。

浦和はステージ袖の陰に立っていた。腕を組んで、じっとステージを見つめている。口元はいつものように引き締まっているけど、その目はしっかりとハナルの方を追っていた。

「……悪くない。」小さな声で呟いた。誰に聞かせるでもなく、自分自身に言い聞かせるように。

裏方の端っこ。壁にもたれて立つ人影——ユキだった。ベースケースを背負ったまま、動かない。表情は読み取れないけど、その目だけはしっかりとステージを見つめている。唯がそっと隣に立った。

「……どう?」

「まだ途中や。」ユキの声は低かった。「最後まで聴かないと。」

「そうね。」

唯もステージを見上げる。その目には、何かを確かめるような色が浮かんでいた。

ステージの上では、曲が進んでいく。アコのキーボードが高まって、サビに向かって駆け上がる。

「나는 누구보다도 더 빛나」

「누구를 바라보고」

「있는지 말해봐」

「너는 내가 네가 가장 사랑하는」

「사람이라는 걸 알아야 해」

ハナルの声が響く。今までになく力強くて、それでいて優しい。客席のペンライトが激しく揺れる。誰かが「AURA!」と叫んだ。その声が合図みたいに、たくさんの声が重なる。

「AURA!AURA!AURA!」

その中で、一人のカメラマンがずっとシャッターを切っていた。青いベストを着た、大学生くらいの男の子。トモだった。彼は文化祭の公式カメラマンとして、一番前の席で演奏を撮影している。ファインダーの中のハナルは、まるで光をまとっているようだった。

ハナルは目を閉じていた。瞼の裏で、光の粒が弾けている。緊張はもうない。ただ、歌いたい。この気持ちを、誰かに届けたい。

曲が最後のフレーズへ向かう。アコのキーボードが、一際強いコードを響かせる。

「제발 나를 외면하지 마」

「나는 너를 위해 준비했어」

「모든 걸」

最後の音が静かに消えた。会場が一瞬静かになる。

それから——割れんばかりの拍手。

「すごい!」「もう一回!」色んな声が飛び交う。ペンライトの海がさらに激しく揺れる。

ハナルは目を開けた。客席の一番前——マサルとヨシコがニコニコしながら見てる。その隣にはトモがいて、機材を抱えて親指を立てている。

もっと奥。壁際に立っている人影。スーツ姿の浦和。彼女は小さくうなずいて、ノートに何か書き込んでいた。

その時、カガミがマイクを握りしめて叫んだ。

「ありがとうございます!一曲目、聴いてくれてありがとう!」

客席から大きな拍手。カガミは少し息を切らしながら、次の曲のタイトルを言おうとした。その瞬間、口元にマイクを当てる。

「次の曲は——『Adventure』——」

(From Dandy:

The first song is done. And the next one is about to begin. Who will be watching in the audience? Stay tuned for the next update. Love you all.)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ