三食筋トレ付き
大村ユウジがアイドルに転生してから43時間後、大村ユウジはいつもの机の椅子に座っていて、ゲートキーパーはソファーに座っていた。
「結局どういうことなんですか。」
「ん?何のこと?」
「卑怯者って…浅香ヨウコも櫻井もあなたも…。あなたが死ぬ間際に言ったことです。」
「ああ…。ヨウコは、結局最後まで自分が早川を殺したことを自分の非として認めずに、僕が止めなかったせいだと責任を負わせた。櫻井だってそうだ。カズサのためと言って僕を殺したらカズサはそれを背負ってしまう。みんな結局誰かのせいにして、逃げてる卑怯者なんだよ。僕は、知っていたのに見て見ぬ振りした負い目があるから、まんまとその責任を背負ってしまってきてた。それで見て見ぬ振りをしたことの贖罪だと思い込もうとした…やっぱり僕も卑怯者だったんだよ。みんな同じかって思ったらなんかバカらしくなっちゃってな。でもカズサは、本当に巻き込まれただけなのに僕と同じようになってしまうかもしれない。それだけは、許しちゃいけないと思う。」
ゲートキーパーは、その言葉を聞いて、自分もそうなんじゃないか、責任から逃げているのではないかと思い、どきりとした。
「俺もそうですかねえ…。」
大村ユウジはゲートキーパーをしばし見つめた。
「だからさ、人間なんて…んー?いや、君は人間じゃないのか…んーと、だから、生きてればみんなそういう弱さってあるってことなんじゃないのかなって僕は思ったのよ。僕が、ヨウコを失うことを怖がって何もしなかったから、人一倍弱い生き物なんだなって思っていたけど、そうじゃなくて、生きてたらみんなそんなもんかもなって思ったんだよ。行動力があったかなかったかの問題だけなんじゃないのかねー。」
「こんな結果なら、ない方がマシじゃないですか。」
「はは。そうかもな。そうだな。」
「…また、大村さんに痛い思いをさせてしまった。」
見て見ぬ振りをしたことがそんな目に遭うような罪なのか?
自分にはどうすることもできない。せめて苦しまずに死なせてあげたい、できればちゃんと輪廻の輪に戻ってほしい。そう思っているのに、大村ユウジはいつも何かを間違えて、時々ひどい死に目に遭う。
「嫌なんですよねえ…あなたが、うるさいくらいのおしゃべりで動きもうるさくて距離感バグっててお節介でお人好しじゃ無くなって、泣いて苦しんで人に縋ってしまうほどに精神が崩れてしまうの見るのは…。」
そう言ってため息を吐くゲートキーパーの隣に大村ユウジは座った。
「僕がチュートリアルもこなせないせいで迷惑ばっかりかけてんのに…そうやって気を遣ってもらえるのは嬉しいよ。ありがとうね。」
そう言ってゲートキーパーの頭をわしゃわしゃと撫でた。ゲートキーパーはこのバグった距離感にもだいぶ慣れてしまっていた。
「体動かせる転生ならリフレッシュできると思ったんですけど…なんかすみませんでした。」
「あーそれは楽しかった!若さってすごいわ。これ以上は腰いくかもとか膝いくかもとか考えないでいいんだぜ?今、こんなに僕、固くて重いんだーって思ってるもん。毎日筋トレするようにしようかな。」
「ここで鍛えても輪廻の輪に戻ったら無意味ですよ?」
「そうだよな。赤ちゃんがいきなりガチムチだったらお母さん困るよな。」
ゲートキーパーはまた大村ユウジは頭の悪い事を言っていると思った。
「腹減ったな…朝ごはん作ろうか?」
「寝ないで食べて大丈夫なんですか?もう36才の体に戻っているんですけど?俺なら1日くらい朝ごはん食べなくても大丈夫ですから。元々食べてなかったし。」
「だから痩せてんだよ。ちゃんと規則正しく3食食べて適度な運動…あ、運動もしないでしょ?無趣味だもんな。そうだ!ねえ、僕の次の転生の目処ある?」
「いや、まだ調べてないですが?」
「よし!じゃあ次の転生先見つかるまでは僕が3食用意するよ。そして一緒に筋トレしよう!」
やっぱり元気だと少しウザみがあるんだよな…とゲートキーパーは冷めていく心の中で思った。




