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One「俺の悩みと自殺志願者との出会い」

なにか、違和感がある。というか、何かが起こりそう。


そんな気がして、朝からずっと俺の眉間には山脈シワのことが出来ている。


俺は“神埜かみの 尚人なおひと”。現在、中学三年生だ。


悩みなんて、世界を中探してもこれ程、俺と無縁な物は無いんじゃないかってくらい、俺は悩みというものをしたことがない。


むむむ・・・。わからない。昨日、クラスのヤツにアホって書いた紙を背中に貼ったからか?それとも、下校中に道草して、気が付いたら隣町まで行っていたからか?


むむむ・・・・。さっぱりだ。俺は仕方なく、寝転がっている状態から体を起こした。


今は午前10時35分。ちょうど、みんな三時間目の授業に入っている頃だろう。


えっ?ここは何処かって?ここは屋上だ。俺は朝からの“悩み”を解決するべく、こうして、屋上で寝転がって思案している。ちょうどいい感じで、春の陽だまりが降り注ぐここを、俺は気に入っている。


んっ?授業はどうしたって?んなもん、俺の悩みに比べたら気にするモンじゃないっ!俺は人生初の悩みというヤツと格闘中なんだっ!授業なんて、俺には必要ないのさっ☆


と、俺はなんだかんだ言って、授業をサボっているのだ。


『ガチャッ』


俺が自問自答とかしている時に屋上の扉が開いた。扉がある場所は正方形の小屋みたいになっている。屋上には、その変な小屋以外は何もない。ちなみに、俺はその小屋の上に居る。だから、先生とか来ても大抵バレない。というか、来ないんだけどね・・。


出てきたのは見知らぬ女子だった。背中まで伸びるストレートの髪。身長は140cmくらいだろう。率直に言うと、超チビだ。・・・しかし、そんな小柄な体躯の女子中学生が一体なに目的にここに来たんだ?


彼女は自分の靴を脱ぎ、ポケットから一つの手紙を出した。手紙は靴の下に置いた。そして、またポケットから何かを取り出し、それを口に運ぼうとした。


・・・まさかっ!?


距離はおよそ10m。十分だ。俺は、彼女のところまで飛んだ。


「なにやってんだよ?」


俺は彼女に気づかれないように飛び、近くまで来てそう言い放った。


「っ!?」


彼女はポケットから取り出したものを飲もうとしていたが、突然の呼びかけに戸惑ったようだ。


俺はその隙を逃すことなく、彼女の手を掴んだ。よく見ると、かなり可愛い顔立ちだ。動物で例えると猫かな?・・・すまん、よくわからん。


手に握られていたのは睡眠薬だった。数からして、おそらく自殺するつもりだったのだろう。薬は、彼女の手からぽろぽろと零れ出した。


「こんなところで自殺か?」


「はっ、離してっ!!」


彼女は俺の手を振り解いた。そして後ろに数歩下がった。


やれやれ、俺は傍にあった手紙を読んでみた。


『もう自分の人生に嫌気が差しました。生きていても幸せになれそうにありません。なので死にます。さようなら。』


・・・おいおい。中三で人生に嫌気が差したって?極度のネガティブシンキングだな、おい。そんなんじゃ、その美貌が勿体無いぜ。


俺は彼女を見ようとしたが、彼女は目の前から消えていた。


「あれ?どこいった?」


俺はキョロキョロ辺りを見回した。彼女を見つけるのは容易だった。


「・・・お次は飛び降り自殺ってか・・・。」


今度は手すりを越え、屋上の端へ行って下を見下ろしていた。って、怖くないのか?


流石に、また飛ぶと気づかれそうだ。俺は彼女に歩いて近づいた。


「近づかないでっ!!」


彼女は俺のほうを見て、そう叫んだ。俺は歩みを止めず、ちょっとだけ茶化してみた。


「こんな真昼間から自殺するヤツを見守れってか?」


「それ以上近づいたら、落ちるわよっ!」


・・ぁー、まったく、これだから人間は困るんだよ・・・。


俺は渋々、彼女から少し離れたところで止まった。


・・・一応自殺する理由でも聞いておくかな・・。


「なんで自殺するんだ?」


彼女の目には涙が溜まっていた。そして、俺を見ながら話し始めた。


「ふっ、あんたみたいな人には解らないでしょうけどね。あたしは中一の頃から3年間付き合い続けた彼氏がいたのよ。毎日が幸せだった。そう、幸せだったのよっ!!なのに、彼は今日、突然『別れよう』って言ってきたのよ。理由?理由は最低よ。『今日、他の中学に可愛い子見つけたから。』こう言ってきたのよ!あたしの3年間の意味は、あいつのきまぐれで今日、無くなったのよっ!だから、もうどうでもよくなったのよっ!」


彼女は、これを一息で言い切った。正直、途中から理解できていない。なにせ、これだけの言葉を一息で言い切ったのだ。早口だよ、早口。聞き取れねぇって(汗)。


しかし、そんな理由で死のうと思うとは。最近の中学生って、こんな考え方が流行っているのだろうか?


「死ぬのか?」


あえて、俺は聞いてみた。


「そうよ、もう死ぬの。」

 

「そうか・・・。じゃあ、精々頑張ってくれ。」


俺はそう言い放ち、また小屋の上へ戻ろうとした。


「なっ・・!」


彼女は俺が止めようとすると思ったのか、今の場違いな発言にびっくりしたようだ。


「なによ!その言い方っ!?」


びっくりしたというか、ただ単に気に入らなかったらしい。ははは・・・。


「俺は朝から悩みがあんだよ。悪いけど、あんたの自殺に付き合ってる暇はない。」


そう、俺は悩みがある。その悩みってのが原因不明なのだ。困ったものだ。


「こっ、後悔しても知らないんだからねっ!?」


「あぁ。」


「ほっ、ホントに落ちるわよっ!?」


「あぁ。」


俺の適当な返事に頭にきたのか、はたまたもうどうでもよくなったのかは知らないが、彼女は落ちる決心をしたようだ。彼女は俺から視線をはなし、空を見た。


そして、屋上から姿を消した・・・。



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