第四章
ここで、僕の少年の頃の話を少し話そう。
僕、白澤朝奈の幼少時代の話だ。
僕は今ではこうだが、昔は少々性格は違っていた。
どう違っていたかというと…………簡単に言えば、もっと少年らしい少年だったと言ったらいいか。
つまり、こんなに捻くれてはいなかった。
そう、僕がこんなに嘘をつくような、陰険なような、人生を夢見ないような嫌なやつになったかのは理由があった。
悲劇?
不幸?
何といえばいいのかはわからないが、……………すべては大人の…………親せいだった。
そう僕には親がいた。
そりゃ、いたよ。
人間はみんな人の子でしかないから。
当然、僕を産んだ人間がいたよ。
しかし、母親が一人と父親が二人ね。
既にその時点でおかしさに気が付いただろうか?
そう……………。
僕は母親の愛人との間に生まれた子。
そして、僕は小学最終学年まで本当の父親を知らなかったんだ。
そして、義理の父親である七島高也もまた知らなかったらしい。
つまり、母親は隠れて愛人と交際しており僕を産んだ。
母親は全てを隠して過ごしていたのだ。
僕が12才、小学六年になるまで…………。
そして真実を知ったのもまた、その時であり。
全てが壊れてしまったのも、またその時だった。
父親と母親はしばらくずっと喧嘩が続いた。
連日、毎晩、毎晩。
優しかった義理の父親も人が変わったように恐ろしくなり、母親もまた…………。
そして両親から腹いせに虐待にあったのは子供である僕だった。
あの時はきつかった。
本当にきつかった。
毎日が地獄で、世界が牢獄かと思った。
今では、ほとんど消えてしまったが、背中にうっすらと残る火傷の後や傷跡。
ほんとに苦しかった。
発狂して発狂死をして死にそうだった。
おかしいと思わないかい…………。
父親が違うと聞いて一番苦しいのは僕のはずなのに、一番誰にも情を貰わなかったの僕。
代わりには両親からの虐待の日々。
僕は12年間だまされ続けたんだ実の母親から。
そして両親は次期に離婚した。
それから僕は母親にしばらく引き取られることになった。
母親の所でもしばらくは虐待が続いた。
「オマエなんて産まなければよかったよ!!オマエなんて産まれなかったら!!」
母親はそう言って、僕の身体を叩いた。
殴った、切り付けた、引っ張った、握り潰した、擦り擦った。
痛みなんて次期に感じなくなったよ。
何百、何千と痛み付けられたから……………。
産まれてこなけれだよかった?
僕はそう思いもしたが、それは違うと思った。
僕は悪いことなどしてなかった。
悪いのは大人たちだ。
嘘をついて、人を踏み台にして生きていく大人たちだと。
そこで、僕は思ったよ。
こんな親いらないって……………。
こんな親がいるくらいならいないほうがましだって…………。
死んでくれって……………。
そう赤く染まった空色のしたで願ったんだ。
そして……………。
そして。
一週間後に願いは本当に叶ってしまった。
母親は交通事故。
仕事の帰り道にバスに跳ねられて死。
義理の父親は造りかけのビルが破損して破損して落下してきた直径2メートルの鉄の棒に挟まれ死。
本来、本当の父親、僕は顔も知らない産みの親。
彼もまた風邪をひき、なぜか原因不明のを死をうけた。
そう僕の親はみんな死んだ。
何故こんな奇跡のようなことが起きたのか。
わからない。
ただ、みんな僕が死んでほしいと願ったあまり死んでいったんだ。
結果として僕は一人残された。
正直、うれしかった。
親が死んで悲しいなんてことはまったくなかった。
むしろ間逆であった。
もう、あいつらの顔を見なくてすむんだ。
あいつらから虐待されることはない。
僕は喜んだ。
両親、肉親の死を……………。
それから一人暮らしを初めて今にいたる。
………………。
なぜ両親が僕が思ったとおりに死んだのだろう?
最初は不思議だった。
しかし、理由は今頃になってわかった。
ブラッド・コントロール
僕の血からなる異端の能力だ。
血を触れれば触れたものはいわば僕の人形だ。
生かすも、殺すも…………すべて僕の手にある。
僕は知らぬ間に力を使っていたのだろう。
母親と義理の父親は虐待のときに返り血を浴び。
本当の父親はおそらく生まれて間も無い頃に血を間違って付けたのだろう。
ということで今の白澤朝奈は生まれたのだ。
嘘も平気で言う。
自分のためなら他人を利用する。
僕が親から学んだこと。
僕は全てを憎んでいるのかもしれない。
僕は………………。
ふふっ…………。
ま、これが僕の過去である。
昼ドラ以上にどろどろだろ?
笑ってしまうよ。
ふふっ……………。
僕は笑う。
なんのために笑うか。
それには、きっと理由などない。
意味なんかない。
僕が何かしようとして、成した事には意味なんかない。
僕が考えて出した案には結果なんて無い。
ただの空想と妄想。
空に浮かぶ雲のように、時にあらわれ意味無く消えていく。
空の青色、夕暮れの赤色には意味はあるか?
無いだろう。
空と夕日の色には意味なんて無い。
いや、たとえ意味あったとしよう。
しかし、僕には意味なんてない。
僕は作られた存在で、僕はただあるだけの存在。
僕には意味が無い。
僕には……………。
だから僕は嘘をつこう。
他人を騙して、世界を騙して、宇宙を騙して、僕を騙す。
だから僕は裏切ろう。
他人を裏切り、世界を裏切り、宇宙を裏切り、僕をも裏切る。
だから僕は悲観しよう。
他人を悲観して、世界を悲観して、宇宙を悲観して、僕を悲観する。
だから僕は殺す。
他人を殺して、世界を殺して、宇宙を殺して、僕を殺す。
殺す。
殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。
ふふっ……………。
僕は狂っている。
僕は普通を主張しているが僕は狂っているんだ。
狂っているからこそ、周りの人も狂ってくる。
僕はそいつらを異常と呼ぶ、変人と変態と狂っていると呼ぶ。
だけど…………。
やっぱり一番狂っているのは他でもなく自分であって……………。
僕は自分を高台の上に置いているだけ。
ま、いづれだ。
いづれ自分を自分で殺すことになろう。
僕は他でもなく自分のために死ぬんだ。
自分のためだけに死んでやる。
僕の話は、これでお仕舞い。
これは全て嘘なのかもしれない。
これは全て偽りかもしれない。
なぜなら僕は嘘つきであるから。
僕は今日もいつもどおり目を覚ました。
いつもどおりの普通の朝であった。
しかし、目を覚まして体を起こすと異様な光景が目に映った。
「………………。」
しばらく考える。
「………………。」
長考。
しかし、考えても答えは出そうに無かった。
「えっと…………。何これ?」
僕は独り言を呟いた。
状況を説明しよう。
昨日と同じく、右の足元はキリナが添い寝をしている。
なんとも気楽に幸せに満ち切った顔をするキリナ。
それにプラス!
左には深雪が添い寝をしていた。
あれれ…………。
なんでだろう。
確かに昨日の夜、深雪は一緒に泊まると泊まらせろ!と連呼していた。
だが、歳が同じくらいの異性をやすやすと、泊まらせるわけにはいかない。
しかも、相手が深雪ならなおさらだった。
だから深雪の意見を拒否って深雪を外に追い出し鍵をしめた。
もちろん合鍵も回収して、深雪が入ってこれる要素はないはず。
そのはず…………。
なのに…………なんでここでコイツは寝てやがる。
僕は寝ている深雪の顔を見て首を捻った。
正直、謎だった。
ま、とりあえず、なんかムカつくので叩き起こすことにした。
「いたっ!」
頭をゴツンっと殴ると以外にも深雪は簡単に飛び起きた。
「あっ、白澤だ。ラブ、ラブ、愛してる。」
起きて、そうそう深雪は馬鹿みたいなことを口にする。
しかも、そういいながら抱きついてきた。
「うわっ!」
僕の体はそのままベッドに押し倒された。
深雪は取り囲むように上から囲む。
「白澤ごめん。朝だから寝呆けているみたい。」
真顔で言う深雪。
はっきり言って、まったく寝呆けているようには見え無い。
「嘘つけ!」
「嘘じゃないもん!白澤っ!」
何故か上着のボタンを外しはじめる深雪。
「っ!って何してるんだ!!」
激しく暴れる。
しかし、深雪はびくともしない。
白い細い腕には想像できない力が籠もっている。
いったい彼女はなにものだ!?
「深雪さん?もう、そろそろ冗談は辞めてもらえると助かりますよ」
僕は抗議する。
「冗談?」
顔を近付けてきて、その顔をしかめる。
「私が冗談なんてこのごにおよんで言うと思ってるの白澤」
くすっと含み笑いをする深雪。
「……………。」
いつのまにか服のボタンは全て外されていた。
やばいぞ。
「えーっと、何でも今度奢ってやるから辞めようぜ。」
「えっ!?本当?」
おっ、食い付いた。
しかし……………。
「でも、ダーメ!私が欲しいのはし・ら・さ・わだからね。ふふっ」
無邪気に笑ってみせる深雪。
ああ、ここまで思ってくれる人がいたんだ。
僕って実は幸せものかもな。
……………って今は悠長にしている暇はない。
早くどうにかしないと!
さもなくば取られるぞ!
これこそ寝取られる!?
「ふふっ、白澤かわいい。」
「……………。」
「白い肌、綺麗な髪。女の子みたい。」
深雪は右手で、そっと髪を撫でてくる。
「すっごいさらさらだね。私よりも綺麗なんじゃないかな?これは罰よ」
「なんのだよ?」
「女の子よりも綺麗な髪なんてしている男に対してのよ。」
そういうと再度くすっと笑う。
そして、顔を近付けてくる。
顔と顔が少しずつ狭まっていく。
僕は息を飲んだ。
いくら性格がこれでも、深雪の顔は、やはりかなり可愛い。
その美少女のシミ一つ無い顔が目の前に広がる。
「白澤…………。」
深雪は瞳を閉じる。
なっ、もうここまでなのか?
さようなら?僕の少年時代?
いざ!大人の道へと!?
いや!!誰か助けて!!
僕がそう思うと………。
本当に、深雪は飛んでいった。
「えっ!?」
僕は呆気にとられて間の抜けた声をあげる。
深雪は正確には飛んでいったんではなく、飛ばされた。
何でこんなことになったのかというと…………。
小さな体の少女の飛び蹴りが深雪の体を吹き飛ばしたのだった。
どすんっ!
深雪は2メートルくらい吹き飛んで壁に打ち当たった。
「うぎゃっ!」
なんとも情けない声をあげる。
そうだった。
すっかり忘れていた。
僕が思えばその通りに動いてくれる。
言わばボディーガード。
凄盛キリナ。
僕と契約を交わした猫耳マントのボディーガードがいるのだった。
「あっ……………えーっと……………はい。すいません!」
キリナは非常に困った顔をして深雪に謝った。
「きっ………キリナちゃん?何してくれるのさ。」
深雪は立ち上がり壁に当たって痛めた部位を擦りながらいった。
「いいや、よくやったぞキリナ。」
対して僕はキリナを誉めて讃える。
「白澤っ!キリナちゃんに命令したのは貴様かっ!!」
何故か悪役の口調で喚く深雪。
「はい。僕でございます。」
僕は正直に答える。
「くそっ!こんな所でとんだ伏兵を見逃すとは!私のしたことが!だが私にはまだ奥の手があるのよ!」
「なっ、なにいぃぃ!」
「さあ、いでよ!我が究極奥義!」
「………………。なぁ、いいかげんこのノリはやめてくれ。」
僕は間を空けて言った。
「そうですか?私は好きですよ。…………はい。」
キリナが横から口を出した。
「好き嫌いの問題じゃないだろ?」
「なら何が問題ですか」
「何がって、むしろ全部。すべてが不満です。」
僕はそう答えた。
「白澤ってばわがままさんね。でも、そんな所も好きよ。」
深雪がこちらを向いてウィンクする。
「さいですか。」
僕はそっけなく答える。
「ま、ともかく連日続いてドタバタした休日の朝にしないでくれ」
神様、僕には週休二日制は与えられないんですか?
僕はふいに思ったが、週休二日制は日本の法律だ。
神様がどうこう言っても意味が無いことに気が付いた。
「昨日の朝に何があったか知らないけど、私は昨日は関係ないし。」
「昨日、そんなにドタバタしてましたか?」
深雪とキリナが二人、声を合わせて反論してくる。
「休日の朝を邪魔しているのは確かだろう。」
「さあ。」
「どうでしょうか…………はい。」
批判された。
どうやら本人たちには悪気はないようだ。
そう思うと一人力んでとやかく言っている自分が惨めに見えてくる。
「はあ…………。」
僕はため息をつくしかなかった。
ここ最近、やたらため息が多い。
疲れて死ぬんじゃないか?僕は…………。
僕はテーブルに座りぼーっとしていた。
現在はリビングにいて、いる人数は合計三名。
もちろん深雪、キリナ、僕の三名である。
で、さっき言ったように僕はテーブルに座ってぼーっとしており。
他の二人はというと、キリナはテーブルにコップなどを並べている。
そして深雪が調理場に立って調理している。
ここからでもキッチンからのフライパンのジューっと何かを熱している音が聞こえてくる。
そしてその何かは十中八区、卵を焼いているのだろう。
卵を焼いた時のいい匂いがする。
どうやら目玉焼きのようだ。
しかし、なんだ……………。
エプロン姿で黙って料理をしている深雪はかなり、こう…………なんていうか…………ぐっとくる?
つまり不意に目を向けたくなるような。
ま、そんな感じがある。
前提として深雪が黙っていればの話だけど……………。
黙っていれば。
すると、僕の視線に気が付いたのか、深雪がこちらを振り向いた。
「ん?なに、白澤?もしかして見とれた?」
冗談を言うように深雪は言った。
いやいや、冗談じゃない!!見とれてしまったんだよ!!
って本音を言う気にはなれない。
だから……………。
「ばーか。」
いつものように、そういって誤魔化した。
「ふーん。どうだか」
深雪は不敵に笑う。
何?まさかこちらの心を読み取ったのか?
「貴様!!もしやニュータイツか!!」
なんとなく言ってみた。
「ん?タイツ?よくわかったね。これ一応、買ったばかりの奴ではあるけど。生脱ぎタイツいる?」
「いらんわ!んなもん!!」
これは本音だ。
偽りはまったく無い。
おそらく…………おそらくな。
「ん。ま、いらないならいいけど。あっ、はい。できあがり!!」
深雪はそう言ってフライパンを持ってこちらにやってくる。
そしてフライパンの中にある出来たての目玉焼きを皿に分けていく。
「それにしても、なんだその馬鹿デカイフライパンは?」
僕は深雪が片手で軽がるともっているフライパンに指を指した。
「うん?これ?フライパンだけど」
「んなことは、誰でもわかっているよ。何でそんな大きいのかって話だ。」
第一、そんなでっかいフライパンなんてうちのキッチンに置いてあるのを見たことがない。
いったい、どこから持ってきたのだろう。
「ああ、そういうことか。」
納得したようでポンッと手を叩く。
無論、手にはフライパンがあるのでフライパンが縦に振るわれる。
かなり危ない。
フライパンを持ったまま行動するな。
「えっと、大きいほうが見た目格好いいでしょ?」
深雪はそう述べた。
「はっ…………。何を言うか思えば。ああ、格好いい、格好いい」
僕はぶっきらぼうに適当に誉めた。
「へへっ、もっと誉めて。」
無邪気に笑う深雪。
「ってフライパンをこっちに向けるな!?危ない!!」
「おう!ソーリー。」
深雪はそういってフライパンを置いた。
フライパンを置いて深雪はテーブルの席についた。
今まで立って待っていたキリナも座る。
「どうぞ召し上がれ」
深雪は笑みを作り、そう言った。
「いただきます。」
「いただきです。…………はい。」
僕とキリナは手を合わせて言う。
しかし、なんだ……………キリナは、いただきますにまで『です』をつけるのか?
いただきます、自体が丁寧語なのにデスをつけたら超丁寧語なんだろう。
そう、キリナは他でもなく超丁寧語の使い手だったのか!!
………………。
ま、そんな訳のわからん話を考えるのは辞めよう。
自分まで馬鹿になっているような気がしてしまう。
僕は箸を手に持ってご飯を食べ始めた。
「どう?おいしいでしょう。」
こちらが食べるのを見計らって断言系で聞いてくる深雪。
「ああ。」
そんな問い方したら公定するしかない。
それに不味くもないし、普通に美味しかったので公定した。
「そうよね。そうよね。私の目玉焼きは無敵よ」
「へえ、無敵なんですか?」
キリナが僕に変わって問いた。
「ええ、その気になれば、この状態から再び鶏に成長できるくらいよ。存で以て再び何個も卵を生むことくらい余裕、余裕。」
「わあ!すごいです……………はい!!」
キリナは声を上げて歓喜する。
確かにすでに焼かれた目玉焼きが鶏になったらすごい話だ。
絶対に無理な話なわけだけど。
そう、できるわけがないが……………。
何を狂ったようなことを言っているんだ?この女たちは。
「ごちそうさま。」
僕は箸を置いて、そう言った。
「って早っ!!ちょっと白澤。もっと味わって食べたら?」
「悠長にしてて鶏に変わられたら困るだろう」
「おおっ!確かにそうですね。……………はい!」
キリナは焦ったように急いで食べ始める。
まったく冗談なのに。
キリナは可愛いな。
そう思った。
そして立ち上がる。
「あれ?今日何か用事あるの?」
「いや、得に無い。得に無いけど…………得に無いわけじゃない。」
僕はとても曖昧な答え方をした。
曖昧以前に意味分からないだろう。
なぜなら言っている本人も言っている意味がわからないのだから。
「何それ?」
当然のように指摘を食らった。
キリナもわけがわかりません、みたいな顔をしている。
「何だろうな………。」
「で、結局は特に何かあるのか、無いのか。どっちなの?」
普通に流される。
「ま、結局は特にこれと言ったことは何もないんだけどな。」
すると。
そこで……………。
「なら、今日は街に行きましょう。……………はい。」
そう提案が出た。
そして、そう提案を出したのは以外にもキリナだった。
「街?」
「いいわね!!」
嫌そうな顔をする僕と、はしゃく深雪。
「あ、でも遊びでなくて真面目な話ですよ。」
「真面目な話?」
「えー、遊びじゃないの!?」
不満の声をあげる深雪と首を傾げる僕。
その様子を見てキリナは説明を始めた。
「つまり、私がいいたいのは敵の存在です。もしかしたら、この街には既に新しく雇われた殺し屋がいるってことですよ。それを探しに行くんです。」
「………………。新しい殺し屋って…………」
僕はキリナの言ったことを繰り返す。
一瞬呆気にとられた。
「ちょっと待て!この前は追っ手は今はまだ来ないみたいなことを言っていただろ。なんでいきなりなんだ。」
慌てて僕は聞いた。
深雪は関係ないといわんばりに食事続けている。
「理由はあります。まず、彼らがお兄ちゃんを見逃すはずがないからです。追っ手はかならず来るんです。この前はまだ来ないと言ったかもしれませんけど、定期的に調べないと、いつ襲われて殺されるか分かりません。それに、この前の黒い服を着た男もかなり怪しいですので。とにかく、お兄ちゃんは殺される心配を常にしておく必要があります。……………はい。」
キリナは断言する。
僕は顔を引きつって。
「なあ、前々から聞こうと思っていたんだけど。……………僕は一体何からどんな理由で狙われているんだ。理由がわらない。」
キリナに向かって、そう問いた。
するとキリナは少々困った顔を見せる。
「私たち殺し屋の契約は依頼人の名前、殺しの理由は言わないんですよ。それが決まりです。……………はい。………………ですが。ま、今は依頼人を裏切って、殺すはずだった目標の手助けをしている身です。……………。わかりました。話しますです。……………はい。」
「ああ、助かるよ。」
以外にも簡単に承諾を得る。
僕は作り笑顔を見せた。
「まず、私にお兄ちゃんを殺すように仕事を送り付けたのはある組織です。名前はフォーゼです。……………はい。」
「フォーゼ?」
「フォーゼを知りませんか?ま、あそこはあくまで、裏ですから表舞台には名が通っていないようですね。フォーゼを簡単に言えば異端者狩りの組織ですよ。…………はい。」
「異端者を狩る組織があるのか?」
「いわば現代版の魔女狩りですよ。彼らはもともと、珍品、名品を集めるだけの集団でした。それが次第にスケールが大きくなり、結局は人までいき、異端者へと目を付けた。まあ、まだその時点では異端者の力を色々としるだけ、研究するだけの組織であって殺しや狩りなどする組織ではなかったんです。それが、どういうことか異端者は我々で処分すると言いだして異端者狩りを始めた。おそらくですが理由は彼らには無いんじゃないんですかね。ただの遊びです。」
キリナは一旦間を開けて直ぐ様、話を続ける。
「つまり、お兄ちゃんはその異端者狩りのリストに載ってしまったゆえに殺されかけているんです。本当にたちの悪い連中ですよ。異端者なんて所詮は雑魚とかほざきながら結局は私みたいにバックに殺し屋を雇って、異端者と戦わらせられるのは殺し屋です。ま…しかし、力が無いわけじゃないんです。ただ彼らは楽しんでいるんじゃないんですかね。殺し屋、殺すことにおいて最強な人間と人間の枠を外れた力を持つ人間のどちらが勝つか……………。」
「………………。」
フォーゼ…………。
まったくもって、嫌な話だった。
普通では、ありえないくらいの話。
狩るのを楽しんでる?
はっ?
ふざけるなっ。
ふざけやがって!
何様かしらないが、馬鹿にするのも対外にしろ。
いいかげん頭に来たよ。
つまり、僕が殺されかけているのも、ただの遊びの暇つぶしか?
くそっ!
調子に乗りやがって。
殺してやる…………。
殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してぐちゃぐちゃに引き裂いで、潰して、殴って、裂いで、血を垂れ流しにして、一滴残らずに血を抜き取ってやる!
「白澤…………目が恐いわよ。」
すると深雪が指摘した。
僕は言われてはっとなり、意識を取り戻す。
「大丈夫?」
「ああ。」
僕はそっけない返事で答える。
「そう?なんかかなり興奮してたけど?」
「興奮?」
僕は深雪の言葉を連呼した。
「うん。なんか………いろんな意味で生き生きしてた。いつもは感情を出さないのに…………なんかむき出しっていうか…………なんとうか。」
曖昧に深雪が言った。
しかし、その曖昧な言葉が僕に引っ掛かった。
感情がむき出し?
感情を表に出す。
それは僕が両親が死んだときに封じたもの。
感情を無にしてきた。
喜び、悲しみ、苦しみ……………全てを無にした。
すべて、作ったものでしかなかった。
笑いにしても愛想笑いだった。
なのに僕が感情をむき出しに怒った。
どうして僕は起こったんだ?
フォーゼのやることが気にくわなかった?
いや、そんなの関係ない…………。
僕には関係ない。
ただ僕はフォーゼを恨んだ。
ただ僕はフォーゼを怨んだ。
つまり……………………………………。
ようやく僕はわかった。
「ははっ…………。」
小さく、力なく笑った。
「ははっ。はははははははっ!!ははははははははははははっ!!」
絶叫した。
狂ったように…………。
「お兄ちゃん?」
「白澤?」
二人の女性の声が微かに聞こえる。
だが反応はとらない。
ただ僕は笑った。
全てを思い出したのだ。
そう僕が僕自身を騙していたあまりに全てが謎になりつつあった白澤朝奈の真実に…………。
僕が笑みを止めたときは、僕は普通の白澤朝奈になっていた。
「さて、どうしてやろうか。…………フォーゼ」
僕はそう呟いた。