第17話 これからの学園生活
初めてのオリエンテーリングを終えて、僕たちには幾つかの課題が見えてきた。
「ぜんっぜんモンスターが倒せねぇ」
「ですねぇ」
帰りの駅のホームのベンチ。ダンテツとスイレンが項垂れている。
ダンテツは能力面に問題があり、炎を纏った身体は敵に攻撃することを躊躇わせる効果は、一定数あった。
けれど、それまでのこと。攻撃自体はただのパンチであるし、その火力も自身のモチベーションが関係しているのか、それほど高くはない。
スイレンの左手の爪にある調味料を生み出せる能力は、そもそも戦闘には大して役に立たない。
右手の爪の毒だって、それをモンスターに如何に与えるかが重要になってくるから、その隙を見つけられていない現状では無用の長物。
二人に共通することと言えば、戦闘経験が足りていないということもあるだろう。
「チートを得ていれば、考えなくていいことなのにねぇ」
限界まで口角を上げて、羨ましいだろー。と言ってみる。
僕はもう、思いのままにモンスターを攻撃して、思いのままの威力でダメージを与えられる。
あぁ、なんという素晴らしい日々。風紀委員に目をつけられないように過ごしていれば、こんなに楽なことはない。
「羨ましくはあるけど、それだと今後の発展を楽しめないからな。俺は、しばらくこのままの能力で過ごして、基礎的な戦闘能力を身に付けて、そこで改めて能力を考えてみる」
「ふぅん。現実的。不良には拘らないの?」
「どうだろうな。ま、今は憧れのファッション。ということにしておくさ」
漫画のキャラクターへのなりきり、だとか、コスプレみたいなものなのだろう。そうやって思えるくらいには、現世で感じた思いに区切りをつけられたのだろう。
「スイはどうするの?」
「私は能力を変えるつもりはまったくないですし、このまま戦闘力を身に付けるしかないですね」
「それなら、生産系のクラスの人と仲良くなるのがお勧めらしいよ。いい武器を作ってくれるのだとかって」
生徒会長が使っていた武器を思い出す。
僕も、かっこいい能力を持った武器を使いたくもあるけれど、せっかく自由にできる能力を得たのだから、あえて武器を使うということに縛られる必要もないのでは……。なんて考えてしまう。この辺も、しばらく授業を受けてみて考えていくことになるだろう。
そのまま雑談に移行して暫くすると、ホームに電車が到着する。
これから、それぞれ好きな依頼をクリアしに向かうことになった。だからここから別行動なのだ。
ダンテツは遊園地で行われる、ヒーローショーのスーツアクターをすると言っていた。戦闘の役に立てば、との考えがあるようだ。
スイレンは配達のバイトをしながら、学園都市の物の値段を調べるらしい。衣食住に、月々いくらかけられるのか。それを把握することで、依頼と授業のバランスを計りたいという。
これは、僕達にとっても有益な情報になるだろう。
駐車場へと戻るダンテツを見送り、僕とスイレンは電車に乗り込む。座席でウトウトとしながら交差点駅に着くと、そこで早速スイレンが下車。
「夕飯、楽しみにしていてください」
笑顔を見せるスイレンに手を振って、僕は一人、学園部へと向かった。
「へぇ。色々とあるんだなぁ」
僕が向かったのは職員棟だ。なぜ此処へやってきたのかと言えば、オリエンテーリングの終わりに、教師である長月からある話を聞いたのがきっかけだった。
手に取って眺めるのは、委員会と部活動のリストが載ったパンフレット。簡単な紹介文や、活動内容も記されている。
授業しているだけでは少々物足りない、自主練習や専門的なものを、自分のペースで経験できる場。そう教えられたのだけど、それは確かに。そう感じることのできるラインナップだ。
このリストの中で気になるものを、もしも僕が加入したらどうなるか、という想像とともに紹介しよう。
先ずは図書委員会。
――活動場所である図書館棟で、僕は受付の番をしながら本を読み耽る。活発な生徒が多いここでは、それほど人は訪れない。
ふと開いたページに影が差した。「この本を借りたいんです」と、一人の青年が言った。「少し待ってください」と、僕は貸し出しカードに記入をする。
「一週間後には返してください」と僕は告げる。そこで、彼はこう言った。「その間に、卒業していたらごめんない」と――。
活動内容には、しっかりとこう書かれている。本の回収、取り立て。と。
「なかなか、バイオレンスそうな委員会だよなぁ」
インドア派だから、と思って入会してみたら、ガッツリ武闘派みたいなことをさせられる。やはり、事前情報はしっかりと得なくてはならない。
続いては部活動。テレビゲーム部というものがあった。
――テレビゲーム部では、文字通りテレビゲームで遊ぶ部活動だ。入部すると、一つのソフトが与えられ、それをクリア、もしくは提示されたお題をゲーム内で達成すると、次のソフトが与えられる。
僕は横スクロールアクションのゲームで遊んでいた。此処は部室。他にも何人かがゲームを楽しんでいる。
その時、ワラワラと溢れる敵を倒していくゲームを遊んでいた人が、気分が乗ったように声を上げ、嬉々として立ち上がった。「こんな動きをしてみたい。一緒にやりたい奴、今からモンスターを倒しに行こうぜっ!」と叫び、周りが同調する。
そうして、部室には僕だけが取り残された――。
「ゲームを参考にして、戦い方を学ぶ場合もある、か。普通にゲームを楽しみたいなら、プライベートでやれってことなのかもね」
というか、どの委員会もどの部活動も、みんな血の気に溢れすぎてない?
結局のところ、入ってみないとどんなところかは判らないのかも。自身の想像を経て、僕はそう結論付けた。




