表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
1/18

これから続くエピローグ。もう少し先のプロローグ。

 天寿を全うし、天国へと召された僕を待っていたのは、三つの選択肢だった。


 一つ。このまま天国でのんびりとした日々を送る。

 二つ。今の記憶を消し、まっさらな状態で現世へと転生をする。

 三つ。今の記憶を維持し、様々なサポートを得た上で別世界へ転生をする。


 説明を要求した僕の選択は、間違ってはいないと思う。

 真っ白な空間で、僕は温かな光から説明を受けた。


 一つ目の選択肢は、ただ永遠に続く安寧。何も変化せず、ただ安らぎだけが与えられる。時間という概念すらないのだから、その感情が一時のものなのか、どれだけ享受したものなのかも判らない。


 まぁ、僕は充分な生を満喫したのだし、そう言った感覚を味わってみるのもいいと思う。……味わう? いや、味わえるのか? そういった感情を感じて、で? なにか感情を突き動かすものがあるのか? 安寧の中で?


 その不確かさを問うてみても、それは体験してみなければ判らないと言われてしまった。当事者意識に欠ける人だ。勧めるのなら、ちゃんと教えてほしい。


 二つ目の選択肢は、僕の不満を読み取ったのかしっかりと説明してくれた。


「君の意識はここでお仕舞いさ、ベイビー」


 急にフランクになるなよ。って思った感情をなくすのは勿体ない。勿体なくない? だって、もしも生まれ変わってもう一度ここで来たら、また同じ遣り取りをする羽目になるかもしれないんだよ?


 いや、生まれ変わったら記憶をなく済んだから、関係ないじゃんと思うかもしれない。けど、けれど。今僕が思うこの感情はどうなの? って話。


 すっごい複雑じゃん。そんな軽く言われて転生するの。


 そもそも、死んだら閻魔様の判決を受けるとか、そう言ったものはないのかと。自分のもっていた死後の世界との乖離が激しくて、そのもやもやが綺麗さっぱりなくなってしまうのがなんか嫌だ。


 年老いたはずなのに、何故か思考が若返っているような気分になってる。何かを期待している自分がいるのだろうか。この感情を理解してほしい自分がいる。


 そんな意思を伝えたところ、温かな光はこう言った。


「そうやってコミュニケーションを取ろうとする人は、結局三つ目の選択肢を選ぶと思いますよ」


 ……なんか、ぐうの音も出なかった。


 そりゃそうだろう。全てを果たして、ここに来て、選択肢を提示されて時。安寧を求めるなら一つ目を選ぶ。終わりを求めるなら二つ目を。では、会話を望むなら?


 そりゃ、三つ目にしか答えはない。


「つまり、僕はこのまま進めるのかい?」


 慣れ親しんだ声が発せられた。それに安堵してしまった。だったらもう、選ぶべき選択肢は決まっている。


「ですね。様々な変化を得ることも可能ですけど。いずれにせよ、この選択肢は自分が今、感じているその先を示しているのです。永遠に続く安寧。自身の締め括り。そして――未練」


 未練、か。


「満足はしたけれど、それを忘れてしまうのは勿体ないのでしょう? 満足したままでは終われない。でも、それを感じたままではいられない。もっと違うものを、もっと大きなものを求めてしまう。まだまだ先を知りたい」


 見透かされているのだろうか。現世でやりたいことはやり尽くして、そうして年老いて生を終えたというのに、まだまだやりたいことが――いや、違う。


「憧れたものが、あるんですよね?」


 僕の人生は、確かに満足できるものだった。幼馴染との愛を実らせることにも成功したし、子宝にも恵まれた。

 何の変哲もない、ごく普通の会社員としての生活も満足していたし、趣味に使う時間もあって、誰かに不満を言うこともなかった。


 なら、なにに未練がある? なにに憧れていた?


「……なにを、言わせたいのかな?」

「あえて答えを出してあげましょう。あなたの望むものを、最後に与えてあげるのです」

「望むものを?」

「そう。それが私達にできる最大限のサポート。そして、別の世界へ旅立つあなた達へ贈る最後の思い出」


 自分の内側で、何かが高鳴る。


「これから、あなたは自由に選ぶことができます。そして、そのまま先に進むのかを考える時間が与えられます。――ようこそ、レミニセンス学園都市へ。あなたの、この世で最後の素敵な思い出を作りましょう」


 ――望んでください。あなたの理想を。


 その言葉に従って、僕は想像をする。

 子供の頃から憧れた、自分の姿を。こんな人生を送りたいと願った、ファンタジーを。


 さようなら、僕の愛した世界よ。――という言葉を残すのは、もう少し先になりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ