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1話 始動?

あれから2年の月日が流れた、俺はようやく15歳となった。

正式に国に手続きを申し込んで晴れて冒険者の仲間入りを果たしたのだ。

俺は歓喜した…ようやく最強へのスタート地点に立つ事が出来た。


そこで俺は改めて最強の冒険者になる為に必要な事を考えるようになった。

師匠はこう言っていた、「冒険者とは決してカッコよく有り続ける必要は無い、例えどんな手を使ってでも勝てばいい。勝てないと思った時は逃げればいい。

醜く足掻け、例え臆病者と蔑まれようとも、最後に最強の英雄に成れば良い。」


なるほどな…他の人間からすれば臆病者だと非難するだろう。

だがそれでも俺は構わない…それで最強になれると言うのなら俺は喜んでその名を着よう。

だが師匠の言葉を鵜呑みにして、勝てる戦いだけを拾うのは俺のプライドが許さない。

師匠の教えを守りつつ、俺は俺のやり方で最強への道を駆け上ってやるさ。


どう、最強になろうか。

最強への理想に最も近いのは、攻守共に安定した戦士だろう。

だが、その頂点に位置するEXランクであった祖父にも限界はあった。


だが、俺は【咎人】魔眼使いだ。

全戦闘系職能と支援職の中でも、個人の戦闘能力は純粋な治癒能力者と同等或いはそれ以下だ。

個人で最強を目指すとなるとそれ相応の努力が必要になる…まぁ、ほぼ不可能に近いだろう。


もう一つのプランはこうだ。


世界最強の冒険師団(ギルド)を創設しその総帥(マスター)に君臨する事だ。

このプランが最も効率が良いと言えるだろう、師匠もまた俺と同じように初めの頃はそう考えていたらしい。

正直、意外だった…

とにかく、思いついたのは…俺の魔眼の中にはこう言った能力がある。

他者の力やステータスを吸収し、模倣する事が出来る力だ…ああ、なんていい考えなんだ。


決めたぞ!

俺は、大陸最強の冒険師団(ギルド)を創設しその総帥(マスター)となり…持てる全てを"暴食"し尽くし世界最強の英雄として名を残してやる。



この2年間、俺はその事だけを考えてありとあらゆる冒険者達の見習いとして経験を積みそして見定めて来た。

そして運がいい事に冒険者となった時に正式なパーティーメンバーにならないかと誘われた。

これも努力の結果なのか…Dランクの冒険者パーティーの中でも最も優秀でどの冒険者達よりも成長速度が速い4人組の冒険者パーティー【希望の灯火】に加入する事になった。


パーティーのリーダーは赤髪が良く似合う美形の青年で職能【剣士】アルト。

禿頭がトレードマークの筋肉ダルマ【戦士】ラーズ。

翠緑色の髪と瞳を持つ美女、【治癒士(ヒーラー)】アリア。

茶色のボブヘアに紫のローブと魔道帽を被った【魔法士(キャスター)】ロゼッタ。


 4人は俺よりも冒険者歴は長い。

皆が帝国にある冒険者養成学校の卒業生だ。

そのため、年齢は三人とも俺より上だ。

冒険者の世界は実力が全て。

だが、パーティー内の上下関係には実力以外にも歴や年齢も関係してくる。

彼らは、皆が18歳を超えているが俺は15歳になったばかりだ。

彼等とは見習いの頃からもう10回以上も依頼をこなしている。俺の持つ魔眼のバフが優秀だと言う事で是非パーティーに加わって欲しいと…正直、俺は一人で冒険者として始めるしか無いと思っていた。

それは俺が魔眼使いだからだ、それでも彼等は俺の"価値"を見出してくれたのだ、感謝しかない。

だから例え、リーダーでなくとも文句は言うまい…今は、まだな。


 いずれ、キッカケが来ればその時は躊躇いなくだ。

取り敢えず今は、冒険者としての経験値を積む事に集中する事にした。

但し、俺は彼らに秘密にしている事がある…俺の魔眼の能力…表向きは【支援系】と【妨害系】の能力が扱えると公言している。

これを彼等に明かす予定はまだない…いずれ、信頼するに足ると来た時に明かそうと思う。

そのタイミングは、俺が彼等のリーダーになりたいと公言する時だな。

だが、もしもそれが却下されたのなら問答無用で俺は彼等のパーティーから離脱する。

当ては、ある。


でもまぁ、皆んなの事は信頼してはいるが信用はまだしていない。

長く冒険者を続ければ、そこら辺も改善するだろう。

師匠は言っていた、「あまり下手に深入りしすぎない方が、その分何かあった時に躊躇わずに済む。いいか、お前が信頼と信用するに足る者達と出会うまではある程度の距離で済ませておけ。」と。



だが今俺は、『希望の灯火』のメンバーだ。

俺に定められた役割を果たすために、冒険者として日々勤しんでいる。



ーーー



 大穴化ダンジョンは、周囲に満ちる魔素濃度が一定の数値を越えればいついかなる場所でも現れる。

それが例え、家の中でも人混みの中でも関係ないのだ。

ただ、魔素濃度が高まる場所が多いのは、大森林や洞窟、廃墟など人の手が届かない様な場所だ。


 今回、【希望の灯火】が大穴ダンジョンの切除依頼を受けた場所は、かつて帝国が出来る前に滅ぼされた廃街だ。


 廃街は発見が早かった事から大穴化の進行がまだ完全ではなく、さほど範囲も広くはなかった。

先遣隊の調査ではレベルはⅢ。

今の俺達なら、難しくはないだろう。

核となる上位魔将も、過去に何度も攻略されている。


ここの主は上位魔将オークジェネラルだ。

醜悪な下位魔物のオークが魔素の力によって、何十倍にも強化された個体だ。


 魔将となったオークジェネラルは圧倒的な攻撃力と再生能力に加え、何十匹も超える下位魔将級のオークナイトを召喚するスキルを持っている。

元々、オークはゴブリンと並んで凄まじい繁殖能力を持っており大穴化ダンジョン内に取り残された女子供を攫ってオークを産ませる習性を持っている。


もし、もう少し発見が遅れてしまっていれば…オークジェネラルのスキルに加えて強制的に産まされたオークが大量発生し被害は甚大な物になってしまうだろう。

今回は、発見が早かったので数は5人でも十分に対処出来る筈だ。

だが、油断は出来ない。


 例え、目立ったスキルや魔法を持っていなくともその力は人間を遥かに凌駕しているだろう。

首或いは心臓を穿たない限りどんな損傷も完全回復する再生力を備えている。

また、同胞を喰らうことによって自身の肉体を強化する習性も持っているので厄介だ。

しかも時間が掛かれば数に囲まれれ、一瞬で食い殺されてしまう。


斥候や弓使いが居ない以上、周囲の状況を探れる力に頼る事は叶わない。

俺の持つ魔眼は、味方の位置を把握する力を持つ能力があるが今回は役に立たない。

ならスカウトすればいいではないかと思うだろうが、それが難しいのだ。

この広大な帝国は正に早い者勝ち合戦。

腕の良い、斥候や弓使いは直ぐに取られてしまう。それ以外も無論例外ではないが。


とは言っても、斥候や弓使いであればどんな者でもいい訳ではない。

個人能力が低ければ邪魔になるし、その分、負担が増える。

いずれは優秀な斥候スカウトや弓使いを仲間にしたいと皆が言っているが、難しいだろうな。

もう少し名声を稼げれば、可能だろうが。


 だから、俺たちはアルトの持つスキル【気配察知】を上手く利用しながら、慎重に発生源まで進んでいる。

皆が常に集中して周囲を警戒しながら、途中で見つけたオークを片っ端から始末してゆく。


 大穴ダンジョンの核となるオークジェネラルを発見しても、攻撃は仕掛けない。

そちらに気がつかれないよう注意し、ひたすらオークやオークナイトを狩る。

報告よりも数が多いので、出来る限り減らす事を優先した。


歴戦の猛者や中堅の冒険者達なら、目標を見つけた瞬間に攻撃を開始しただろう。

大穴ダンジョンの核である主を殺せば、配下も消滅する。

しかし、今現在の俺達ではそれは難しいだろう。


 そもそも、本来ならこの依頼は、Bランクの冒険者が受ける内容だ。

本来であれば、俺達に攻略など不可能かもしれない。


だが、俺の魔眼による味方へのバフと敵へのデバフがあればある程度ランクが離れていても可能なのだ。

俺が視界に入れた味方全員のステータスや体力魔力の回復速度を底上げする事も出来る。

またデバフは、俺が視界に入れた相手の能力やスキルを一段階下げる事も出来るし、麻痺や凍結などで動きを封じる事も出来る。


ある程度の数に囲まれても、俺のバフやデバフを上手く扱えば対処は可能だ。

それに、俺個人もそこら辺の雑魚に負けるほど弱くはないし、味方専用のバフは俺に掛けることは出来ないが、問題ない。


魔眼使いの殆どは戦闘能力は皆無だろうが、師匠の教えを受けて来た俺の戦闘能力ならパーティのお荷物になることなく、他のメンバーも集中して目標と闘えるって訳だ。


正式にパーティーを組む前から、俺達はある程度の連携が取れていたのも安心して戦える要素だろう。

その結果として、Dランク帯では既にトップクラスの冒険者として注目されている。


首尾は上場といった所だ。


ーー


ようやく全ての配下を始末出来た。

残るのはオークジェネラルとオークナイトが10匹。

だが、奴らも馬鹿ではないようだ。

次々といつの間にか同胞が減らされている事に勘づき、残ったオークナイトを周りに固めさせている。


アレらは、他のオークやオークナイト擬きとは違い、恐らく近衛兵的な役割を持ったオークナイトだろう。

知能レベル的には人間に劣るものの、集団戦を行うと言う知識自体はあるのだろう。

油断すれば、俺達でも危ない。



ここは作戦通りに、【魔法士(キャスター)】ロゼッタの範囲攻撃魔法で残ったオークナイトを殲滅し【剣士】アルトと【戦士】ラーズによる一撃必殺でオークジェネラルにトドメを刺す。

失敗すれば、負けるリスクが高くなる。

それに、破格の報酬が無駄になるからな。


俺は、『傲慢の魔眼』を開眼する。

蒼く煌めく魔眼で、パーティーメンバーを視界に入れる。

そしてスキルーー『薬物注入(ドーピング)


自分が味方と認識した対象の戦闘能力、魔力や体力の回復速度を上げる。

さらに、視覚・聴覚などの感覚を発達させる事を可能とする。


「ロゼッタ頼む。」

「ええ!ーー『粉塵爆発(プロージョン)』!!


ロゼッタの持つ魔法ーー粉塵爆発プロージョンが発動し、オークジェネラルを守っていた10体のオークナイトが巨大な爆発に呑み込まれる。

そして、それと同時に俺と剣士アルトと戦士ラーズが勢いよくボスに向かって走り出す。

その間に、【治癒士(ヒーラー)】アリアが俺を含めた3人に数十秒程効果が持続する回復魔法『継続治癒(リジェネ)』を掛ける。


同時に、オークジェネラルが俺達に気付き巨大な歪んだ大剣を握りしめて動き出そうと行動を開始する。

その瞬間ーー俺は、右眼に魔眼を開眼させる。

色はーー紫紺。

その権能は【怠惰の瞳】デバフ専門の魔眼。

発動する力はーー遅延(スロウ)恐喝(スレット)


対象のすべての動きを数秒遅らせ、恐喝(スレット)で相手の能力を一段階下げる効果を持っている。

これはある程度の実力差なら効果があるが、一定以上の差があると効果がないデメリットもある。

しかし、そこに俺の強欲の瞳の力によるバフが乗ることによってそのデメリットを解消する。


効果は数秒しか無いが、それで充分だ。

剣士アルトと戦士ラーズはどちらもDランクトップクラスの実力者だ。

この機を逃す事は、あり得ない。

予想通りに、アルトとラーズは互いが持つ最高の技を放つ。


その瞬間ーー俺は完全に油断していた。


ロゼッタの魔法を受けながらも僅かに生き延びたオークナイトが俺の背後に現れる。

誰も気付かなかった。


「ーー空翔斬(エアスラッシュ)!!」、「ーー破斬(インパクト)!!」


アルトの剣技スキルがボスの首を、ラーズの戦士スキルがボスの心臓に風穴を空ける。

オークジェネラルは、苦しみの声を発する間もなく消滅する。


「チッ!」


生き残ったオークナイト2匹が、俺に襲い掛かる。

他の4人が俺を助けようと走ってくるが間に合わないだろう。

だが、侮って貰ったら困る。


俺はすぐさま、腰に帯びていた鞘より2本の特殊な形をしたククリナイフを抜く。

一本は刀身が紫に耀き、もう一本は刀身が紅く染まったククリナイフ。

更に、その2本のククリナイフには魔銃などに使われる引き金が仕込まれている。


この武器は、俺がある鍛治師に造らせた特注の武器だ。

 刃は高い希少性と世界一硬いと云われる星鉱石(ミスリル)にレベルⅦの【魔王】猛毒蛇竜(ヒュドラ)の毒牙を組み合わせた、猛毒のククリナイフ。

もう一本は、星鉱石(ミスリル)製の刀身に多頭死犬(デスハウンド)の呪角を組み合わせた、一度付いた傷が癒えない呪いのククリナイフ。

そして、奥の手として柄の部分の金具を引く事によって武器が変形し魔銃へ切り替わる。



これが俺の奥の手だ。

オークナイトの初撃を寸前の所で回避し、右手に持った猛毒製ククリナイフを首筋にお見舞いし、もう一体の払った鯖剣をもう一本で受け止め蹴り飛ばす。

そして柄に仕込まれた金具を引き、銃モードに変形させ弾丸を発射する。

 

撃った弾丸はただの弾丸ではない、炸裂魔弾と言ってこれが直撃し体内に弾が入ると対象の魔力を暴走させ相手の内部を破壊する効果を持っている。

俺の自作品だ。


撃たれた弾丸は、オークナイトの身体に命中し、ボンっという音と共に夥しい血を流しながら息絶えた。

これにて、戦闘終了。


「よし、終わったな。」

「もう!心配させないでよ!」


アリアが頬を膨らませてそう言ってくる。

流石に今回は俺も焦ったがこれも師匠との死に物狂いの鍛錬の結果だな。

仲間を心配させてしまったのは、少し反省だけどな。


無事に依頼を達成した俺達は、約束の報酬を受け取り速やかに帝都へと帰還した。


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