事件関係、もう一体
甘原少女と辛牙少年が異口同音に 要求を口にした瞬間に、Liarが一瞬硬直する。
そしてその後、一気に噴き出してケラケラと笑い始めた。
「あっはははは!二人揃ってしれっと素直に無茶ぶりしてくるね!」
「別にお前なら問題ないだろ」
「同意」
「まあ確かにできるんだけどねぇ!」
何だろうか、色々と会話内容がぶっ飛びすぎている気がしないでもないのだが。
だがなんとなくだが、彼女たちならそれくらい普通にするのかなあと言う謎の先入観がある。
「で、情報頂戴」
「うん良いよ」
肯定した瞬間に、いったいどこから出したのやら、Liarが大きめの書類の束を手にしている。
それを甘原少女と辛牙少年が受け取ろうとするが、Liarは二人から逃れるように書類を高く掲げ、先に結論を口にした。
「此処に書いてあるの、海坊主以外だったら大体無害で力もない奴らばっかりなんだよ。だからいちいちめくるよりボクから名前聞いた方が早いでしょ」
その言葉を口にした瞬間に、二人の顔が恐ろしいほど薄くなった。
あれだ、顔文字で表すなら(・ー・)こんな感じ。
美形も美女も、ここまで表情がなくなると顔面が薄くなるものなのか。いっそのことなんか怖い。
「ま、ちゃっちゃと結論言うよ。海坊主以外で人に悪影響を及ぼす妖怪。この海に居るのは『トモカヅキ』くらいだ」
「トモカヅキ……なるほど」
トモカヅキなら俺も知っている。海……と言う括りだとあまり有名ではないが、特定の職業の人たちにはとても有名で、その妖怪が出たという話があれば、その日から二三日は全員が休業を決め込むくらいだ。
因みにその『特定の職業』とは、海女さんたちのことだ。
トモカヅキは、『同一の潜水者』という意味を持つ。海女さんなど、潜ってきた人そっくりに擬態し、海に潜ってきた海女さんたちにアワビやウニをあげると油断させて、アワビやウニを受け取ろうと伸ばしてきた腕をつかんで海の奥深くに引きずり込むという妖怪だ。
まあ獲物をもらう時、背中にくっつけて貰えばいいとか、背中にくっつけてもらっても引きずり込もうとして網を使ってくるとか、もしくは暗いところに誘い込んでくるとか地域によって諸説あるのだが、妖怪なんてそんなものだ。
ただ結構見わけ方も簡単で、海女さんがしているハチマキがトモカヅキは異様に長かったり、ハチマキ等に書かれているはずの魔除けの印がなかったり、昔ながらの潜水装束で潜水したとき、着物の合わせ目が逆……俗に言う死者のものになったりしているらしい。
まあ実物に会ったことはないので知識だけのものだが。
「なるほどな。そりゃ海の気配がするわけだ」
「トモカヅキなんて海の妖怪以外何でもないもの」
そう呟きながら、二人揃って俺の両サイドにつく。
もう慣れた。感覚ブーストのための『甘辛サンドイッチ』。あ、文字にするとなんかおいしそうだなこれ。
「ちーちゃん、行方不明者の気配は」
「あー、基本水音……でもビンゴだ。人が息を吐き出すときの気泡の音がする」
「こっちも同じ感じ。妖気で見づらいけど、生きた人間の気配が『視える』」
「あー、俺でも視えるので間違いないですねこりゃ」
「仲いいねえ君たち」




