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パタつかせてペン生~異世界ペンギンの軌跡~  作者: あげいんすと
第三章 泣きっ面にペン
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パタつかせて勘ぐり勘ぐる勘ぐられ

 


 模擬戦、ねぇ。



 昨夜もママ鳥から考え過ぎの傲慢(ごうまん)ファッ○ーが、と中指を突き立てられ、唾を吐かれて揶揄された俺である。嘘だ、かなり盛った。まずママ鳥に中指はない。多分。


「もぎせん、ってなに?」


 自分でも判るほどに訝しげに目を細めてジョルト師匠を見るなか、例に違わぬジョニーのなぜなになんでが始まった。


 俺としても疑問は尽きない。ただジョニーと違って知識欲の探求ではない、疑念からくるものだが……こればかりは気質という言い訳で俺自身も諦めている。


 それこそ昨夜、俺は芋虫キィルとの戦いから離脱したというのに、日が明けたばかりでコレだ。ママ鳥の入れ知恵かと視線を向ければ、日光を蒼と翠の羽根いっぱいに受け、のほほんとしているママ鳥と目があった。


せっかくのおやすみ中をすまないがどうなんだ?


 無言の問いに、答えもまた無言。しかし、その目は穏やかに笑みを(たた)えていた。犯人(ホシ)はアンタか。



「おれさま、いちばんになる!! さいきょう!!」



 っと、いつの間にかジョニーへの説明は終了していた。そっか、ジョニーはやるのか。そんでメアリー、お前はやらないよな? 俺もやらないから多数決で此度の案は否決と――



「それじゃ、最初は誰と誰がやるの?」


「へいメアリー、空気読めよ」


「うん? すまないがキミの言っている意味が解らないんだが……」


「え、メアリーも模擬戦したいの?」


 昨日キィルと戦ってあんなにボロ負けしたのに? そこは腕を磨くとか修行パートを大人しくこなさないの?



「あぁ、今の自分がどれほどの物か……試すには丁度いいかなってね」


「…………」



 脳筋め。少なくとも昨日の一件は彼女のなかでノーカウントとなっているらしい。


 しかし同時に、メアリーの答えは俺のなかにある何かに触れた気がした。


 それは、闘争本能という名の物か。少なくとも打撃無効のキィルの時とは違い、勝機がない話でもない。



「それでは、最初にメアリー。そして、ジョニー。お前達からじゃ」



 もやもやとした気持ちのまま。ジョルト師匠が模擬戦の始まりを告げた。



 ◇ ◇



「ソラ様はこの試合。どう見ますか?」


「どう、って……」


 模擬戦に際し、ふたりのひよこと審判役のジョルト師匠から距離を置き座る俺へと、クリムがそんな問いかけをしてきた。


 質問の意図を咀嚼(そしゃく)するように、同時にほんの少しだけクリムから距離を置くように座りを直す。思わずして動いてしまった。


 どちらが勝つか。その興味はどこから来るのか。俺が見る限り少なくともジョニーもメアリーも強い部類に入るだろう、将来性を鑑みてもだ。彼女が次期魔王となりたいのであれば、言葉は悪いが唾を付けておく意味は十二分にある。



「……ふたりともキィルには負けてるけど、どうなんだろうね」


「え、あ……そう、ですね」



 自分の声が、その意味が、なんだか気持ち悪く思えてきた。俺は何を言っているのか。


 なんか、ヤダな。わかってはいるんだけど。




「キシャ……」


「あのさ、クリム――」



 どことなく溜め息のような吐息を零すキィルに俺は思い切って声をかけようとするが――



「始めぃっ!!」



 その機会は、離れていてもよく響く爺様の声で奪われてしまった。キィルの溜め息に混ざって何か聞こえた気もしたけど、とにかく今は……この試合を見よう。



 ◇ ◇



 ジョニーとメアリー、ふたりのどちらが強いのか。


少なくとも、俺はそこを考えなかった事がないわけでもない。今に至るまでふたりを見てきて、戦う姿を見て、時に夢想する事だってあった。



 力のジョニー、魔法のメアリー。


恐らくぶつかり合う事なんてないふたりだが、どちらが強いのかを。


 開始の合図を受けて、始めに動いたのは……やはり、ジョニーだった。これはもはや予想を裏切らない始まりだ。ジョニーの辞書に出方を窺うなんてあるようには思えないからである。


 後方に枝を撒き散らして足を走らせるジョニーは、文字通り大砲の勢いでメアリーへと迫る。メアリーからは黄色いトラックが迫るように見えるかもしれない。さぁ、これが決まればメアリーさん、転生二週目突入確定か。


 しかしながら、メアリーも馬鹿ではない。


下手をしなくてもジョニーの戦い方を俺以上に熟知しているのだ。軽やかなステップで迫り来るジョニーの真上を飛び越え……



 前言を撤回しよう。



 メアリーは馬鹿だった。



 全力疾走するジョニーを飛び越えるつもりだったのだろう。しかし、ジョニーは事実として撃ち出された大砲でも、居眠り運転しているトラックでもない。


 走り抜けるような勢いを一瞬だけ"溜める"。


ずどむと鈍い音を立てて踏みしめた足を蹴り出す先は……空だった。


 疾走からの跳躍。


速度をそのまま、斜め上へと勢いを変えてメアリーを強襲するジョニーに、彼女(バカ)の表情が凍り付いたのが遠くから見えた。これは転生コース来るか!?




 そして、メアリーの身体が大きく吹き飛ばされた。





おーっと メアリー せんしゅ ふきとばされたー!!


某サッカー漫画みたいな絵面が脳裏を過ぎったという。


今年は年始休みどれだけあるか。

年末?仕事ですよ?



ここまでお読みいただきありがとうございます!! ぺんぺーん!!

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