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モブの恋  作者: 相川イナホ
転調
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新領主「レーフェン・アマゾン」

 さて順調に見える我が領の復興だが、新領の方はそう簡単にはいかないようだ。


「・・・・誰もこないか」


 併合された隣のソルドレインの領民だが、人族はともかく獣人族の村の把握は遅々として進まないようだ。


 新しい領主として顔見せに出かけたのに、人族の村の代表以外、招集に誰も応じず、旧代官屋敷の中の謁見の間には、空席が目立つ。


 兄は逃げてしまった代官の代わりに便宜上派遣されていたフンバルト・レッテル代官代理にとうとうこう告げた。


「任期を過ぎてまでのご尽力、感謝する。後は、私なりの方法で統治する方法を考えるとする」


「ですが、アマゾン男爵様」


「あ、いや、貴殿が責任を感じることはない」


 そう、兄の爵位があがった。

 本人はあまり喜んでいなかったが。


「だって付き合いが増えるだろ?交際費があがるのは痛手だ」


 とは兄の弁である。


「中央にやたらと呼び出されるようにもなるからな」


 男爵位からはやたらと王都との繋がりが深くなる。


 王族や王族に近い者の冠婚葬祭、新年を祝うパーティ、社交界への参加。

 領地再建に賭ける兄にはきっと面倒くさい事ばかりだ。


「フローラ?」


 そんな目で見ても、兄上の代役はいたしませんことよ?


「パーティに出て、新制アマゾン領の領主として顔を売って、中央とのパイプを太くしないと、魔物被害は忘れ去られ、支援の手は簡単になくなってしまいますわ。それに、社交界に、私が顔を出すのは・・・いろいろとまずいですし」


「ですよねー」


 元が脳筋な兄らしく社交会に出ることが不安でたまらないらしい。


 兄は、キチンとした服に着替えれば、大変見栄えのよい容姿なのだ。

 私も兄のパリっとした姿を見てみたい。


 ララリィ嬢の取り巻きには絶対負けてないと断言できる。


「それよりもだ、フローラ。」


 兄は真剣な眼差しで私に問いかけた。


「いいアイデアはないか?」


「そうですねぇ・・・」


 私は、考えを口に出す。


「『故郷会』を頼ってみますか?」


 私の提唱し、今やアマゾン領で拡がりつつある『故郷会』には獣人のものもあったのだ。


「それと、ネリーやジルベールに聞いたのですけれど、獣人には施政者に対する不信が根強いようなのです。揉め事があった時に結局は人族の肩を持つのだろうと」


 兄に挑むかのように続ける。


 「領内では人族も獣人も同じアマゾン領民、平等だという証が必要ですわ。

領内の法律を裁定して『アマゾン領法度』を制定する気はありませんか?」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 苦手な分野を提唱され、兄はゴクリと喉を鳴らした。






「アマゾン領法度の発令」「各種族のタブーや習慣、しきたりについての周知」

「アマゾン領統治機関への登用機会平等化の表明」「各種族別労働基準法制定」

 矢継ぎ早にこれらの事を発表した兄の元には、「故郷会」の協力もあって優秀な人材が集まり、復興は一気に加速した。



 兄は10年以上はかかると思われた復興を数年でやりとげた。


 私の派遣した人材も帰郷し、各地の進んだ技術を持ち帰った。


 今やニコルのギルドも盛況である。

「分室」から昇格し、「アマゾン領支部」になった。


 念願の「見習いギルド員」も何人か抱えるようになって、忙しそうである。


 奴隷の少年達も立派な青年になり、栄養バランスや教育に気を配った結果、肌艶もよく賢く立派な体格を持った若者だ。


 今や奴隷の身分から解放され、ユリウスのボディーガード兼侍従となっている。


 いや、ちゃんとした就職先を私は紹介したんだよ?


 でも、皆が一緒がいいということでこういう形に落ち着いた。


 私と「赤の牙団」の狩りにも当然ついてくる。


 当初は魔物へのトラウマから使い物にならなかったが、「赤の牙団」のしごきに耐えるうちに才能が開花したみたいだ。


 私達は幸せにやっている。



 ここで終了すれば美談なのだが・・・


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