復興の足音
「頼まれていたリストが出来たぞ」
ダンが私に丸められた書類の束を持ってきた。
これは、孤児や領内の子どもの12歳以上の者のリストだ。
この中で6人を選び、各地の産業の盛んな都市に試しに2年派遣する。
予算はあの商人に借りた。
そのかわり私の絵姿と歌、それに物語をむこう10年は年間いくつと決め、商人へ専属で卸す契約だ。
絵姿以外は前世で他人の創ったものなので詐欺なようで気がひけるが、世界が違うのだろうから著作権などは及ばないはずだ。
作者様ごめんなさいと心の中で謝っておく。
冒険者カードの方もアイデアを伝えた。
ただのカードを作って売るのではなく、前世で流行ったカードゲームのように遊べるようにしたらどうかという物だ。
魔物のカードも作り、その特徴と性質を計算しつつ、冒険者カードで倒す遊びだ。
これにはニコルも乗り気で生息地ごとに違う魔物の属性や性質を監修してくれるとのこと。
商人は大喜びで、私の手元にはたくさんのお金が流れ込んできた。
ユリウスのためのお金を残し、残りはすべて領内の発展のために使うことにした。
目指すのは復興のむこう側だ。
季節はいつの間にか春へと変わっていた。
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「ようやく麦が蒔けるな」
厳しい冬が終わり、生命が萌える季節になった。
援助品の配給や、狩りのできる者を積極的に支援した結果、食糧問題は何とか乗り越えられた。
次は魔の森との境界を守る要塞や城壁の修理、町づくりのための土木事業、インフラの整備、これらを発注することで領内の経済活動を活発にする方針をたて、そのための計画を立てたり調査をしたりして、その報告のために人が入れ替わり立ち代わり訪れ、館の中は大騒ぎだ。
「執政を行う場所も何とかしないとなぁ」
子どもが走りまわり、資料を抱えた大人が右往左往し、カオスだ。
あの、奴隷の少年達もあの頃に比べれば随分落ち着いてきた。
春の恵みを森に取りに行ったり、麦蒔きを手伝ったり、家畜の羊やヤギの世話をしたり
ときおりわかりにくいが笑顔も見せるようになった。
特に「故郷会」に参加する事が楽しみのようだ。
あれから私は、アマゾン領にいるソルドレイン出身の人々に声をかけ、故郷会を立ち上げた。
お互いに故郷の思い出を話しあい、方言で語り合い、故郷の料理を作って食べたり情報を交換したりしているようだ。
少年たちのその顔にだんだんと表情が戻っていく様を見るのは、まるで復興の象徴のようでうれしいものだ。
たまに「故郷会」で教えてもらったと思われる手作りのお菓子などを貰う事がある。
野の花の小さな花束が添えられたそれが、ひっそりといつも私の座る席に置かれているのを見つけた時は、ほっこりしたものだ。
彼らなりの感謝の気持ちなのだと思うとひときわまた美味さも違う。
罪が罪なのですぐに奴隷という身分から解放してはあげられないが、いつか彼らが独り立ちして、家庭を持って、我が領で笑顔で暮らしていけるようになってほしい。




