第六話「グリーンアイドモンスター」
side「少女」
目の前で起こっている現実が理解できなかった・・・
私をかばってくれた黒髪の・・・多分女の子だと思う・・・
あの五人を一瞬で追い払うなんて。
それもひらりひらりと舞うように、踊るように躱しては軽々と男の子を投げ飛ばした。
彼女が舞うたびに束ねられた黒髪が宙を舞う、日の光を受けてきらめきながら。
一瞬の出来事だった、ほんとに瞬く間。
でもそれはとても魅力的で、とっても長い時間見とれていたような不思議な感覚。
逃げていく男の子達をただ呆然と眺めているとそれまで忘れていた足首の痛みが襲ってきた。
「・・・くぅ・・・っ!」
思わず声が漏れてしまう。
side「ミーシャ」
「ふぅ・・・」
流石にちょっと暴れすぎただろうか、反省反省。
まぁ、たいした怪我はないだろう。
「・・・くぅ・・・っ!」
後ろの方から痛みを我慢するようなうめき声が聞こえてきた
(あ、忘れてた・・・)
思い出した俺は彼女に近づく。
さらさらとした水色の髪の毛を肩まで伸ばし、緑色の綺麗な瞳をした少女だ。
その顔には苦痛の色が浮いていた。
「大丈夫・・・じゃないな、ちょっと失礼」
どうやら彼女は足首を切ったらしい、血が滲んでいる。
あまり深い傷ではないが出血を止めなければ。
腕の中には後ろ足を怪我した猫が一匹抱えられている。
あいつら次があったらお仕置きしてやる。
俺はそっと手を差し出しヒールを唱えた。
「ヒール」
特訓の成果か今やほぼ詠唱なしで発動可能になったヒール。
そして軽傷なら傷跡一つ残らないほどの治療が可能だ。
傷はすぐに塞がった、猫も軽傷だったのですぐに動き回れるようになるだろう。
「・・・よし、これで大丈夫。立てるか?」
「あ、ありがとう・・・ございます・・・」
気弱少女キターー!!
って言ってる場合じゃねぇや。
うーん、俺が怖がられてるんだろうか?
そうだ!まずは名前から。
「俺・・・じゃない、私はミーシャ、ミーシャ・ラダッド。
あなたは?」
「エミー・・・エミー・フォード・・・・」
「よろしく、エミー」
「ダメっ!」
いきなりの拒絶!?
「え、っと・・・なんでダメか教えてもらっても?」
「・・・だ・・・だって、だって私、緑色だもん・・・仲良くしちゃダメ」
「緑色?」
「私の目の色、緑色・・・緑の瞳は魔物なんだって・・・」
「ふ〜ん・・・まぁ、どうでもいいや」
「ど、どうでもいい!?」
彼女は呆然としている。
・・・?俺なんか変な事言ったか?
「で、でも緑色は魔物で・・・私を助けたからあなたもいじめられるし・・・」
「いじめなんてしてくるなら片っ端からやっつけちゃうし。
それに私は黒髪で黒の瞳だよ?それじゃあ私は魔王か何か?」
なんで俺、こんな『何こいつ、ありえない』みたいな目で見られてんだろ。
「ほら、困った事があったらこの『ミーシャ大魔王様』に頼りな!
それに『グリーンアイドモンスター』ってかっこいいじゃん!」
そう言って俺は手を差し出した。
「か、かっこいい・・・(クス)」
お、今ちょっと笑った、すっげぇなでなでしたいです。
そして彼女は俺の手を握り返してくれた。
「・・・よろしく、優しい魔王様」
「おう!・・・あ、待った、訂正『大』を付ける事!」
「はい、『大魔王様』」
「うむ!苦しゅうない」
「クスクス」
こうして俺に村で最初の友達が出来たのだった。
そういえば『グリーンアイドモンスター』って嫉妬の怪物だったような・・・