第四話「森のアオダイショウ」
魔法の練習を開始してから1年。
俺は3歳になった。
あれから魔法の研究を進めた結果は
1、魔力は消費すると何割か最大値が増加すること(ひたすら魔法練習をしたおかげで容量はかなり増加している)
2、イメージ・出力(呪文詠唱)・発動(技名)の流れが存在する。
3、詠唱は慣れてくると省く事ができるが魔法の発動には技名がトリガーのようだ。
そして次が問題なのだが・・・
俺には属性魔法の適性があんまり無いらしい。
適正値1といったところか・・・
火の魔法はライター程度
水の魔法は水やり程度
氷の魔法はジュースが冷やせる
土の魔法は素手で石を投げた方がよく飛ぶ
風の魔法はそよ風が起きる
そして全部超初級の魔法しか使用できない。
あたり一帯を燃やす『バーニング』などの初級魔法は唱えても発動しないし。
超初級の『ファイアショット』『ウォーターショット』『アイスショット』は最大でこぶし大の大きさ。
発射速度は超スローボール、威力はファイアは爆竹、ウォーターは嫌がらせ、アイスはただの製氷機。
魔力の容量が増えているので使用回数こそ増えてきたが一発の威力が弱い。
ほかには『ホットハンド』『アイスハンド』(対象物を温める、冷ます)
『ホットウインド』『アイスウインド』(風魔法の応用で名前まんま熱風と冷風を出す魔法)
などなど家庭的には役に立つのだが、魔力が増えても一回の詠唱には一定量しか使えない様だ。
補助魔法は母様の得意とするところで色々と聞き出すことができた。
回復魔法については怪我をしなければ試せないためまだ使っていない。
身体強化魔法を使ってみたが子供の体で筋力を強化すると翌日筋肉痛で寝込むことになった。
この辺は加減を覚えないと。
一番の収穫は俺に時空魔術の適性があるという事が発覚した。
この間花瓶を落とした時に『時間よ止まれ』と強く念じた時に発動した、
時空魔法は念じること(イメージすること)が詠唱と技名を兼ねている様だ。
妄想をフルに使って考えうるすべてのイメージを試してみた。
発動できた魔法は以下のとおり。
魔法の壁を作る『ウォール』空間と空間を繋げる『ゲート』箱型の空間を指定する『ボックス』
指定した空間を切り取り・貼り付ける『カット・ペースト』
対象の重力を操作する『グラビティ(ヘビィ・ライト・アンチ)』
物質の時間を一時停止させる『タイム』対象物の時間を加速する『スキップ』
ただし燃費はかなり悪く、初級魔術の燃費がハイブリッドなら時空魔術はスポーツカーである。
ちなみに花瓶は魔力が底をつき、結局割ってしまった。
(そんじゃ、特訓と行きますか)
俺はラダッド家の裏側に回り込んだ。
ラダッド家はフィリス村の外れに位置し、家の裏手には森が広がっている。
家は木造の二階建て(屋根裏付き)そこそこの広さだ。
家の裏には小さな畑と倉庫がある。
畑では雑用係(一応執事らしい)のヘンリーが雑草を刈っていた。
「ヘンリー、こんにちは」
笑顔であいさつ、大切だよね。
「おや、お嬢様こんにちは。また森に探検ですか?」
ヘンリーは力仕事担当で体付きはがっしりとしている。
少し気が弱く顔つきは優男のそれである。
「うん、いってきます」
「いってらっしゃいませ。あまり奥に入って行かないようにしてくださいね」
「わかってる、切り株の広場までしか行かない」
ヘンリーにあいさつをして森に入っていく。
この森はラダッド家で管理され所々人の手が入っているので、瘴気溜りもない。
切り株の広場は森に入ってすぐの所。
大きな切り株が三本中央にある、某どら焼きが好きな青狸の空き地程度のスペースがあり、
土管のように丸太が三本広場の奥に積んである。
静かで綺麗な場所なのでお気に入りのスポットだ、普段は魔法の練習に使っている。
ここでの日程は
前半は剣術の稽古
後半はひたすら魔力消費(魔力の最大容量を増やす特訓だ)
という訳でちょうどいい大きさの枝を広い剣術の稽古を始めた。
前世では実家のじいちゃんがその昔かなり有名な剣豪だった。
物心付いた時から剣術の稽古に明け暮れたものだ。
『強くなるには日々の鍛錬』『心と肉体は表裏一体』とはじいちゃんの言葉。
俺は無心で木の枝を振り続けた。
広場に来てから2時間程度たっただろうか。
俺は切り株に腰掛け弁当の変わりに持ってきた干し肉をかじっていた。
すると茂みの方からガサガサと何かが近寄ってくる。
(森の奥から獣でも出てきたか?)
森の獣くらいならファイアーで追い払う事ができる。
俺はいつでも発射できるように身構えた。
すると茂みからは大きな蛇がゆっくりと這い出してくる。
前世でいうアオダイショウという奴だろうか、
体は濃い緑色、大きさは大体100センチ程度、太さ5センチ程度の蛇である。
しかしその動きはゆっくりで額?からは血を流している。
(ふむ、丁度いい。このアオダイショウでヒールの練習してみよう)
ゆっくりと近づくと最初は警戒していたようだが弱っているのかぐったりと動かない。
俺は蛇から少し距離を取ったところで手をかざしヒールを唱えた。
「癒しの力と祝福を・・・ヒール!」
かざした手から優しい光が溢れ、蛇の傷口へと降り注ぐ。
傷口は徐々にふさがっていった、まだ初心者のため傷跡は残ってしまっているが。
すると蛇はこちらに寄ってきて靴に頭を擦りつけ始める。
(なんか猫みてぇだな・・・もしかして気に入られたか?)
俺はさっきの干し肉をちぎって蛇に与えてみた。
ムシャムシャと食べ始める、なんか可愛くなって来た。
それから広場での修行に一匹の蛇が加わることになる。
名前は「オロチ」・・・なんかカッコイイやん?