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ただしタカシ君は喋るものとする

 一度手合わせしろと言い出し、ケイタ、チトセ、エーレをあっという間に倒してしまった魔王ファフニール。そんな彼に対し、タカシは自己紹介を始めた。


「初めまして魔王ファフニール様。この度は貴重なお時間を割いていただきありがとうございます。僕はタカシ=カズノセといいます。」

「え?あ、うん、魔王ファフニールだ。よろしく?」

「ここまで僕の仲間と戦ってみて、どのように感じられましたか?」

「どうって、まあそれなりにやるなと思ったよ。あの前衛の2人はまだまだ未熟だけど、その魔術師の子は相当腕がいい。ぶっちゃけ私が封印魔法使えるって知ってたらわりとやばかったね。」

「左様ですか。ところで、先程陛下は、この戦いは我々の人となりを知るためとおっしゃいましたね?」

「まあね。どんなスキルや魔法を持ってるかも気になったし。」

「では僕はあえて戦わないことにします。」

「ほう?それはどういうことかね?」

「僕という人間を知ってもらうためには戦闘より対話の方が適切と考えたのです。」

「くくく、なるほどね。面白い。」


 これがタカシの選択である。ファフニールの考えは要するにこうだろう。


 自分と戦えば、相手は手の内を晒してくる。それらのスキルや魔法を参考に、相手の性格等を考察すればいい。


ならば自分に対しては無意味だ。確かにケイタ、チトセ、エーレの3名は強力なスキルと魔法を持っている。だが自分はどうだ?魔法は使えず、手持ちスキルは〈鑑定〉のみ。まあまあ珍しいスキルかもしれないが、分かる情報もあまり無いし戦闘では役に立たない。というか、情報を知るという点においたらエーレの〈情報公開〉の方がハイスペックだ。



「僕は戦闘はからっきしです。故に僕という人を知ってもらうためには会話の方が適しています。」

「なるほどね。では、何について話そうか。」

「はい。この度は陛下の対応について僕から提案したく思います。」

「聞こうか。」

「単刀直入に申しまして、戦いで相手を知るという陛下の対応は改めるべきかと思います。」

「は?」

「まず暴力的、これが1番の問題点です。陛下としては、相手に受けるか否かの選択権を与えているおつもりでしょうが、一般に市民は国王から『〜しますか?』と問われれば引き受けざるを得ません。つまり、陛下は相手の亡命を決められるという強みを利用して、相手に戦闘を強要しています!」


 ここまで魔王本人を批判できたのは、タカシ自身がファフニールを信用に値すると考えたためだ。


タカシとて立派な社会人だ。会社の利益のために、こちらの知ってる知らない、好き嫌いに関わらず何人もの人物と会って話さざるを得ない。目の前の人物がいい人か悪い人かの区別くらい簡単につく。

 そして、ファフニールはこの程度の批判ではキレないだろうと判断したのだ。


果たして、ファフニールの反応は如何に。


「ふふふふふ、ハハハハハ!いやー君面白いね、弱いけど。それで、散々批判するだけではただの迷惑な奴に成り下がるなんて君でも分かるだろ?こここらどう出る?どんな代替案を提案するんだい?」

「何をおっしゃいます?僕は陛下の対応を改善させるためにここまで来たのではありませんよ?」

「………ええ………?」

「そもそもこちらの目的は、我々の亡命を認めてもらうこと。先程の陛下の口調から考えるに、ケイタとチトセ、そちらで気絶している前衛2人とこちらの魔術師エーレに関してはお認めになったのですね?」

「あ、ああ。別に構わんよ。いくつか条件はつけさせてもらうけど。」


しれっと入国を認めるファフニール。


「そして、吸血鬼のリカイもよろしいですよね?」

「ああ、魔物(同胞)が助けを求めるなら応えねばならんからな。」

「では残るは、陛下がこいつを入国させても良いと考えうるだけの価値を示せてないのは、この僕タカシ=カズノセだけです!」

「うん、そうだn…いや、待て、それでいいのか?」

「いいわけないでしょう!だから、今から僕の価値をプレゼンします!」

「……プレゼン?」

「そうです!僕の長所をアピールし、その上で陛下に入国を認めさせます!」


「……なるほど。そういうわけね。聞こうか。」


ファフニールがふいに笑う。


「はい。端的に申し上げて、僕の長所はずばり、スキル〈鑑定〉です!」

「ふむ。」

「〈鑑定〉持ちは貴重だそうですね。であれば僕という人材のメリットは十分にあるかと存じます。それに、〈鑑定〉を使えば、このような暴力的な入国審査など必要ありません!」


堂々と言い放つタカシ。別に彼とてファフニールのやり方を否定するだけで終わりたかったわけではない。ただ社会人として、1円でも多く儲かる方へ動くべき人間として、自分の行動にそれなりの建前が欲しかったのだ。

 ちなみに自分がいないとリカイの食事に困るかもしれないという考えもあった。


 タカシが一方的に始めて終わらせたプレゼンを聞き終わって、ファフニールは笑っていた。


「プッ、ハハハハハ!何だい、つまりあれか?僕が彼らをボコボコにするのを見て負けを悟り、それでもただでやられたくはないからと、好き勝手話し出したと?」

「そうです。何か問題でも?」

「まさか、いいよ。君も含め、全員歓迎しよう。」

「……!ありがとうございます!」


こうしてタカシの勝敗が有耶無耶のまま、ファフニール戦は幕を閉じた。そして、タカシたちは晴れてヴェクタブルグ王国への入国を果たした。

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