連れ合い
出立の時は直ぐそこまで迫っていた。これが終われば一つの時代が終わりを告げる。そして、始まるのは彼の時代。
「・・・・・・」
そこに必要なのは、私では無いのだと彼女は思う。なのに、彼女はそこに居る。不要なものがここに居て良いのだろうか。彼女の想いは彼には伝わらなかった。
「私は・・・ここには居られない存在なのに」
それが分かっていながら、そこから離れられない。彼女の想いがそれを邪魔してしまうからだ。必要では無い存在にしかなれないのだと彼女自身がよく分かっていた。
「・・・どうして」
動けないのだろうか。
「私は愚かだから」
これから一つの戦いが始まる。そして、終わりを迎えるのは何であるのか。それが知れ渡る頃には一つの時代が終わるのだろう。
「・・・よし」
準備は全て整った。これからの行動が未来を決めてしまう。それは恐ろしい事だ。しかし、退路は既に塞いでいる。そうする事でそれ以外の未来を捨てたのだから。
「・・・行くかな」
さぁ、己の手で掴み取ってみせろ。それが自分を育てた常識だから、そうする。
「・・・・・・」
それでも、残る不安を振り払う術をまだ知らなかった。知っていたらどうしたのだろうか。
「・・・大丈夫、平気だ」
勝つのだ。それ以外の未来ならば、捨ててしまおう。
自分で決めた事だから、後悔は無い。だが、それに巻き込まれる者達には何をすれば良いのか分からなかった。何を言えば良いのだろうか。それとも、何も言わない方が良いのか。
それでも、進む事を止めないのは決めているからだった。
向かうのは望んだ未来か、叶わなかった過去か。夜明けか、日暮れか。
「絶対に・・・」
暗闇の中を歩いている。でも、歩き続けた先には光があるのだと信じている。
「・・・ここは何処?」
「お前は誰だ?」
「私は・・・誰だろう」
「ここは夢の中」
「どうして?」
「現実じゃないからね」
「起きた方が良いのかしら」
「それを決めるのはアナタ」
歩き続けた先はきっと、明るい目覚めなのだと信じている。
だから、目を覚ますのだ。
夢から目覚めた彼女はゆっくりと瞬きを繰り返す。夢と現実の変化についていけない気がした。だが、霧が晴れていくような心地だった。
行かなければ。唐突にそう思った。
「・・・・・・」
何処へ行けば良いのだろうか。ただ、行きたい場所はあるのだ。
「私は・・・」
起き上がった彼女が向かう先は行きたい場所。そこに行けば、彼女の想いは届くような気がした。彼女の足は迷いなく探し始める。途中で行き会った人から怪訝な目を向けられたが気にしない。伝えたい言葉はそんな事では消えてなくならない。
キョロキョロと辺りを見渡す。しかし、見付からない。
「どこに・・・」
気は進まないが人に聞くしかないだろう。誰に尋ねれば良いものか・・・自身の立場を考えれば無暗に声を掛けるのは躊躇われる。出来るならば穏便に事を終わらせたいのだから。
「あ、あの・・・っ」
声を掛けたのは穏やかそうな女性であった。女としての盛りは過ぎただろう年頃だが、大層美しかったのが想像出来る。そんな人だ。
「あら・・・貴女は確か」
彼女を見た女性は目を丸くして首を傾げた。
「あの子が連れて来たのよね?」
「あの子?」
それは誰の事だろう。女性は困惑する彼女に笑い掛けた。いじめたりしないから安心して、どうしたの迷子になっちゃったのかしら。困惑の答えは返ってこないが安堵する事は出来た。穏やかな空気を感じられる女性である。
「私・・・探しているんです」
「そうなのね」
こっちよと女性は微笑む。手招く女性の後を彼女は進んだ。女性は彼女を何処へと誘うのか。




