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週末は異世界で~俺的伝説の作り方~  作者: 三毛猫
閑話「ひみつのはなし」
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まずは酒場でいっぱい その3

 ちょいえろ回ご注意です。すらちゃん大暴走。

 話をしている間に、野菜炒め定食が運ばれてきた。運んできたのは、うさぎのような耳の生えた女の子だった。うさみみさんだ。バニーガールだ。露出は多くないけれど。

 ぴょこんと伸びたおみみがすごくかわいい。なでなでしたいなぁ。

 しっぽは短いので流石にお尻なでるわけにはいかないし。でもしっぽもさわさわしてみたい。

 しかし、くろねこさんといい、おおかみみさんといい、ここの酒場は獣族の人ばっかりみたいだな。

「お待たせしました~」

 テーブルの上に皿が並べられてゆく。野菜炒めと、スープと、驚いたことに白米のご飯だった。いやマジで野菜炒め定食。前に神殿でごちそうを頂いた時はパンが主食だったから、こっちは普通にパン食かと思っていたけれど、米のご飯はありがたい。

「こちらは複数人でお越しのお客様へのサービスです」

 テーブルの真ん中に山盛り生野菜のサラダが、でん、と乗せられる。

 野菜炒めに野菜サラダかよ、と思わないでもなかったけれど。健康的でいい感じ?

「「「いただきます」」」

 ちみっこたちとそろって手を合わせ、いただきますをする。

 リアちゃんは神殿の作法らしく、なにやら小さく胸の前で印を切るようなしぐさをしていた。

 さっそく箸を伸ばす。異世界と言えどもあまり野菜に差はないようだった。あるいはちみっこどもがなんらかの干渉を行って、地球産でも持ち込んだのかもしれない。

 塩とコショウのような何かの香辛料で炒めただけのものだったが、とても美味しかった。火の通り加減がまたうまい。炒めすぎてグテグテにはならず、かといってきちんと火が通っている。

 おなかが減っていたこともあって、瞬く間に食べつくしてしまった。

 割と量があったのに、ちみっこたちも一人前を食べつくして、ご飯のお代わりまで要求する始末。

 なんでも頼めとリアちゃんが言うので、野菜ばっかりだったからと、から揚げみたいなものを頼んで、食後に飲み物をさらに追加してちょっとした宴会じみてきていた。




「……というわけでちょっと口を開けてください」

 なにが、「というわけ」なのかよくわからなかったが、満腹~と椅子の上でだらけていたら突然すらちゃんが俺の背後から両手をするりと回してきたので、言われるままに小さく口を開ける。

「どしたの、すらちゃ」

 言い終わる前に、何かを口の中に押し込まれた。

 指?

「んむ」

「噛まないで。そっと、なめるように、お願いします」

 すらちゃんの、人差し指が、俺の口腔に差し込まれていた。訳がわからない。

 指なめろって、いきなりなんだ?

 いや。すらちゃんの指先、なんか柔らかい丸いものがくっついてるな。

 舌先でつつくと、ちょっとだけ甘い味がした。

「こるぇ、なんだ?」

 飴玉をなめるように舌の上で転がす。デザートとかのつもりなんだろうか。それにしては指まで入れる必要は無いと思うんだが。

「……私の核のひとつですよ?」

「ぶはっ」

 思わず吐きそうになった。

「スライムは多核体です。私の場合、全部で十四の核が体内にあります。歳を経た個体ほど核が増えていきます。もっともある程度の大きさになると分裂しますので、核の数が必ずしも年齢を経ていることを示すわけではないですが」

 背後から俺の首に手を回したまま、淡々とすらちゃんが語る。

「私を殺したければ、この核を全て壊す必要があります。ひとつでも残せば、そこからいつかは元のように復活することになるでしょう」

「……なんの話なんだ、すらちゃん?」

 無理に口に押し込まれたものを吐き出すと、まるで汚いものと言っているようだから出来なかった。仕方なく、口に含んだままでそっと舌で押しやろうとしたが、またすらちゃんに押し込まれてしまった。

 すらちゃんのこの行為は……いったい何なのだろう?

「スライムの生態の話です。私は人の姿をしていますが、これは擬態で実際の所人間のような構造をもっているわけではないのです。だから、人間の感覚で多少おかしいと思うようなことを私がしてしまっても許してください」

「だから、なんなの?」

「ん、単に、……私の大事なところを、太郎さんに舐めてほしくなっただけです、よ?」

「ってすらちゃん、セリフがなんか危ないよっ?!」

 思わず振り返ると、すらちゃんが真っ赤な顔でふらふらと立っていた。

「……あれ? もしかして、すらちゃん酔っ払ってる?」

 わずかに、すらちゃんからアルコールの匂いがする。

「すらりん殿は私と同じものを頼んでいたようだが……まさかこの程度で酔いはすまい?」

 リアちゃんが少し頬を赤くして、ジョッキを持ち上げてみせる。

「いや、リアちゃんも酔ってるだろそれ」

 真っ昼間っから酒頼むとか、リアちゃん何気に呑んべえだな。

「構造が違います。アルコールで私が酔うことなどありません」

「いやアルコールって消毒とかにも使われるし、スライムみたいなのにかけたらまずいんじゃないの?」

「……まずいのでしょうか?」

 どうやら頭が回ってないらしく、すらちゃんの動きがおかしくなってきた。

「いいから、ほら、座った方が」

「はい」

 うなずいたすらちゃんが、俺の膝をまたぐようにして、向かい合うように俺の膝の上に乗った。

「……はい?」

「言われたとおりに、座りましたが、何か?」

「……いや、誰が俺の膝の上に座れって言ったよ?」

 いや別に、見た目ちみっこと大して変わらないすらちゃんを膝の上に乗せたところでどうということもないのだけれど、流石に向か合うように座るのはちょっと恥ずかしい。

「あら、ルラさんやレラさん、それにリーアさんはよく膝の上にのせているじゃないですか?」

 しなだれかかるように、俺の胸に頬を寄せてくるすらちゃん。

「いや、ほんとにどうしたのすらちゃん?」

 酔っているにしたって、あまりに行動がおかしい。

 額に手を当ててみるが、特に熱はないようだ。いや、元がスライムなんだから熱とか起き様が無いのかもしれないけれど。

「太郎さんの指、なめていいですか」

 俺が答えるのを待たずに、勝手に俺の右手を握って、すらちゃんがそっと俺の人差し指を口に含んだ。暖かく、柔らかな舌がそっと指先をくすぐって、ちょっとくすぐったかった。

 元がスライムなだけに、歯は形だけ整えているもののそれほど固いものではなく、せいぜいゴムのような触感で、赤ん坊がするようにちゅうちゅうと指を吸われるのはなんだかとても恥ずかしかった。

 ……なんていうか、ちょっと、えっちな感じだ。

「いや、ちょっと。誰か止めてくれよ……」

 真っ先に騒ぎそうなうちのちみっこどもは、なぜか両手を拳にして頬にあて、興味津々といった様子で俺の左右から見つめている。

「……べんきょうになるのー」

「こういうせめかたもありなのー」

「いやお前ら、何の勉強だっ!」

 こづいてやりたかったが、すらちゃんに擦り寄られた状態では身動きできない。

「……ん、太郎さんは幼い容姿が好みかと思っていましたが違うのですか?」

 もぞもぞと俺の膝の上ですらちゃんが動いて。

「お望みなら、こんな姿も」

 重さは変わらなかったが、膝の上のすらちゃんが、背伸びをするようにあごを上げると、すらちゃんの姿が、まおちゃんと瓜二つになっていた。

「いやいやいや」

 確かに姉妹くらいには似てると思ってたけど。見た目だけならまんま同じだ。性格の違いかなんとなく目の配り方や、微妙なしぐさが違うのでかろうじて別人だとわかるけれど。

「……もともと私は魔王ちゃん様のコピーのようなものですから。でも、ん、流石にこの姿では魔王ちゃん様に不敬でしょうね」

 またすらちゃんが俺の膝の上で身じろぎするように、身体をそっと震わせて。

 気がついたら、先ほどまで胸の前で俺を見上げるようにしていたすらちゃんの顔が、俺の目の前に合った。

「さらに四年ほど成長させてみましたが、いかがですか?」

 小中学生レベルなら、まだ子供がじゃれているようなものだったのだろうけれど、流石に高校生ベルになると、ちょっと笑っていられない。

「い、いや、だからすらちゃん、これ何の冗談なの?」

 まおちゃん、今でもかわいかったけれど、将来はさらに美人さんになるらしい。

「冗談? いえ、私は私がしたいことをただしているだけですよ」

 俺の指から口を離して、すらちゃんが俺の口からも指を引き抜いた。

「……人間としての知識では、とても恥ずかしいことをしているという自覚もあります」

 すらちゃんは、俺の口から引きぬいた指を自分の口に含んで笑った。

「先ほどのは、私の、スライムとしての欲求です。スライムは、人のように交わりはしません。互いの核を交換し合うことで遺伝子の多様性を得ます」

「……?」

 んー。なんか、俺、すっごくマズイことしちゃった気がする。

「お望みなら、この姿で人のような交わりを。もっとも、子を成すことはできませんし、切れ目をいれたコンニャクでするのと意味的に変わらない行為ですが」

 おい、どこでそんな知識を。って魔王ちゃん結構耳年増なんか。

「おー。すらちゃんはつじょうしてるのー」

「わお。ほんのーにちゅうじつなのー」

 ちみっこどもがどこからともなく取り出したメモ帳にペンでなにやらメモを取り始めた。

「……何をとち狂ってるんだかしらんが。目を覚ませ」

 俺はため息を吐いてすらちゃんを膝から降ろして立ち上がった。飲みかけのハーブティーがまだ残っていたので、すらちゃんに飲ませる。

「んむ」

 冷たいお茶を飲んだらちょっと落ち着いたのか、まだぽーっとした様子ではあったが、すらちゃんが大人しく隣の席に座った。そのまま、こてん、とテーブルに突っ伏して眠ってしまった。

「リアちゃん、酔い覚ましにいいの知らないか? 俺あんまり酒のまないんでそういうの詳しくないんだ」

 声をかけると、リアちゃんは真っ赤な顔で、船をこいでいた。

 寝てるし。

 リーアは何が起こってるのか全然わかっていないようで、小さく首を傾げて「――♪」と鳴いた。

 しかたなく店員を呼ぶと、にやにや笑いでおおかみみさんがやってきた。

「おい勇者にーちゃん、お前さん、真昼間っから酒場で女といちゃつくとかなかなか大物だなオイっ! うちはそういう酒場じゃねーんだが、必要なら奥を貸すぜ?」

「いやそういうのじゃありませんって。そっちこそ食事に変な物でも混ぜんたんじゃないでしょうね?」

「……んー? この娘、さっきはもっと小さかったよな?」

 高校生くらいになったすらちゃんを見て、おおかみみさんが訝しげに言った。

「わりぃことしたかもな。もしかしたら香辛料の一部が、なんかよくなかったかもしれねぇ」

「ああ、アルコールで酔っ払うのはおかしいと思ってましたが、そっちですか」

「一部の香辛料とかハーブなんかは、一部の種族に変な効果があったりするんだよ。流石に毒になるようなこたぁあんまりねーんだが。この娘さっきスライムとか名乗ってたが、マジでスライムなのか?」

「……マジすらいむです。ってゆーかハーブもまずいんですか?」

 なんかさっきすらちゃんの眠り方変だったけど。ハーブティーのせいかっ?

「流石にスライムに何が影響するかなんてわかんねーな。ま、奥を貸してやるからちびどらと一緒に寝かせて来い」

「あ、はい」

 言われるままにすらちゃんを奥に運んだ。奥はベッドがいくつか並んだ小部屋になっていた。

 酔いつぶれた人を寝かせるだけの場所……とも思えないから。そういう用途で使われたりもするのだろうか? あるいは従業員の仮眠場所?

 ちょっと考え込んだが、リアちゃんも一緒に隣に寝かせた。



 ……しかしすらちゃん、ほんとにどうしてあんなことをしてきたんだろう?

 単に酔っ払っただけであんなことをするとは、ちょっと思えなかった。


 設定とゆーか思いついてしまっただけというか。指なめるのってなんかえっちぃですよね……。

 すらちゃんの裏の心情を明示するかどうか現在思案中。

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