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週末は異世界で~俺的伝説の作り方~  作者: 三毛猫
閑話「ひみつのはなし」
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まずは酒場でいっぱい その2

 間が空いてすみませんでした。

「いらっしゃいませ~」

 酒場に入った俺達を出迎えてくれたのは、木で出来たお盆を持ったねこみみちゃんだった。

 みぃちゃんのような、ねこのおみみが生えている。艶のある黒い毛並みで、しかもみぃちゃんと違って素敵な細長いしっぽまで生えていた。

 うむ、くろねこさんと呼ぶことにしよう。ってゆーかしっぽさわさわしたい。

 ……いや、やらないけどね。

「ちびどらちゃん! お久しぶり!」

 くろねこさんはどうやらリアちゃんと知り合いだったらしい。リアちゃんを見てぱぁと顔を輝かせて駆け寄ってくると、リアちゃんの手をとって上下に振った。

 チビドラってなんだろう。リアちゃんのあだ名みたいなものだろうか。

「クローネ、久しぶりだ」

 リアちゃんが苦笑しながら、小さく手をあげてくろねこさんに応える。

 ……ってくろねこのクローネさんですか。あたらずといえども遠からず。

「ちびどらちゃんが、誰かと一緒に来るなんてめっずらし~ぃにゃ~?」

 くるりと俺達を見回してくろねこさんが小さく微笑んだので、ども、とこちらも小さく頭を下げる。

「そうか?」

 どこか不本意そうにリアちゃんが首を斜めにする。

「ふふふ、六名さまごあんな~い」

 くろねこさんはリアちゃんの手を握ったまま、俺達をカウンターの側にある小さな丸テーブルへと案内してくれた。

「昼の定食を人数分。あとルラ様とレラ様にはオレンジジュースを」

 飲み物は?と聞かれてテーブルの上を見るがメニューらしきものはなく、ぐるりと店内を見回してみるが張り紙のようなものも無く。しかたないので「何か冷たいお茶を」と答えた。

 リーアは『コーラがいい』と書いたが流石に異世界にコーラはないだろうと、リーアの分はオレンジジュースにしてもらった。すらちゃんとリアちゃんも何か頼んだようだったが、聞きなれないもので何を頼んだのかはよくわからなかった。

「……メニューとかないんだな?」

 疑問に思ってリアちゃんに聞いてみる。

「こういうところで扱うものはだいたい決まっていて、どこでも同じだからな。他に食べたいものがあれば、例えば焼いた肉がいいとか、魚を煮てくれなどと具体的に言えば大抵何とかしてくれるぞ?」

「ふーん。なんでもやってくれるからメニューがないってことなのか?」

「昼の定食は日替わりで決まったものを出している。今日は……野菜の炒めか」

 リアちゃんがすんすん、と鼻を鳴らした。どうやら匂いでメニューに見当をつけているらしい。

 いや、さっきのクローネさんだっけか。聞けばよかったのに。

「あと料金表とか無いのが、すごく怖いんだが……」

「まぁ、初めて入る店ならそうかもしれないが。ここはなじみの店だから、私がだいたい把握している。そんなに高いものでもないから遠慮せずになんでも頼んでくれ」

 リアちゃんがテーブルに片手で頬杖をついて、にやりと笑う。見た目は幼女なのになんだかとても様になっていた。




「なんでぃ、ちびどらよう、お前さんよもや神殿騎士を首になったんじゃあるまいな?」

 しばらくして。

 木製のジョッキを六つ両手で抱えてやってきたのは、片目大きな傷のある、獣のような三角のお耳をした大柄な男だった。そのお耳は猫にしては厚く、毛がごわごわしているようだ。犬か、もしかしたら狼のような獣人なのだろうか。

 ……うむ、おおかみみさんと呼ぶことにしよう。

「なんだ、マスター自ら給仕か? そんなに私が来たのが珍しいか?」

 おおかみみさんを見てリアちゃんが笑う。どうやらこちらも知り合いのようだ。

「そりゃおめぇ、神殿勤めになったらほとんどウチに顔出さなくなったじゃねーか。薄情なやつだよな。さんざんっぱら面倒みてやったっつーのによ!」

 がははとおおかみみさんが豪快に笑ってジョッキを配る。

「マスターには悪いが、神殿の食事もなかなかうまいのでな」

「なによりタダってかっ!」

「まあな」

 リアちゃんが苦笑しながらジョッキを受け取る。

「しかし周りのは神殿のヤツじゃねぇみたいだが、どういった知り合いだ?」

 おおかみみさんが、俺達をぐるりと見回して首を傾げる。

 お店の人に驚かれるくらいリアちゃんって友達いないのか?

「めがみなのー」

「おなじくめがみなのー」

「すらいむです」

『ぺっと』

 ちみっこどもが両手を上げて答えるものだから、しかたなく俺もため息を吐いて答える。

「……えーっと。俺は一応、勇者ってことで」

「ほう、女神に勇者たぁ、なかなか豪勢だな」

 おおかみみさんが、歯をむき出しにして豪快に微笑んだ。

「メラさんの神殿に勇者が来るって神託があったらしいが、お前さんがその勇者かい?」

 じろじろと上から下まで俺を睨みつけて、おおかみみさんがあごに手を当てる。

「……なんでぇ、ずいぶん頼りねぇな」

「あはは」

 まあ確かに俺はまだかけだし勇者で、全然なってないので笑うしかない。

「マスター。たしかに見た目は少々頼りないが、タロウ殿は立派に勇者だ。失礼な言動は謹んでほしい」

 リアちゃんが口を挟むが、おおかみみさんは今度はリアちゃんを上から下までじっと見つめて笑う。

「ふん、ちったぁ色気づきやがったか? まさかこの勇者とやらに、オンナにでもしてもらったか、うん?」

「ま、ま、ま、マスター! なんということをっ!」

 リアちゃんが真っ赤になって怒鳴る。

「はっはっは。まぁ、そう怒んなって」

 おおかみみさんがまた豪快に笑って俺の耳に口を寄せた。

「(んで、実際んとこどうよ? てめぇちびどらに手だしやがったんじゃねぇだろうな?)」

 言外に、リアちゃんを傷付ける様な事をしたら許さん、というような迫力があった。

 自分はリアちゃんのことをからかうくせに、ずいぶんとまぁ。

「……リアちゃんは、大切にされてるんだな」

 俺はおおかみみさんに答えることなく、リアちゃんを見つめた。

「ふん、まぁいい。で、勇者ってことはお前さんがちびどらの仕える主ってわけかい?」

 おおかみみさんが、変わらず鋭い眼差しで俺を値踏みするように睨み付けてきた。

「いえ、今日は来ていませんが、もう一人勇者の女の子がいましてね。リアちゃんはそっちの子の従者なんですよ」

 視線をかわして、そ知らぬ顔で説明する。

 半分事故みたいなものとはいえ、リアちゃん脱がしたことがあるなんて言うわけにはいかない。

「ふ~ん?」

 何か感づいたのか、おおかみみさんは訝しげに俺を見つめてきたけれど、すぐに自分の仕事を思い出したらしい。

「まぁ、いい。定食はすぐに作ってやるから楽しみにしてろ」

「あ、マスター。後で仕事の話がある」

 立ち去ろうとするおおかみみさんにリアちゃんが声をかけた。

「おう」

 おおかみみさんは小さく手を振って厨房の方へ行ってしまった。




「仕事の話は、昼食のあとだな」

 リアちゃんが、カウンターの奥を指差しながら言った。

「だが今のうちに簡単な仕組みを説明しておく。カウンターの奥に、大きな板があるだろう? あれが依頼を貼る板だ。依頼人は、仲介料を払って依頼内容をあの板に下げてもらう。仕事をしたい人間がマスターに希望を伝えると、マスターが適当な仕事を振ってくれる、という感じだ」

 リアちゃんが指差した方を見ると、大きな木の板に小さな木の札がいくつかぶら下がっていた。紙とかではないらしい。

「……なんだか俺がイメージしていた冒険者ギルドに近い仕組みだな」

 ジョッキを傾ける。俺はお茶を頼んだのだが、運ばれてきたのはいわゆる日本茶とか紅茶じゃなくて、何かハーブティーのようなものだった。ちょっとスースーする。

「仕事を受けるのには金はかからないのか?」

「ああ、基本的に仲介料は依頼者が払う。報酬も依頼者が直接支払う仕組みだ。この酒場は単に仲介をするだけの場所だな」

「そんなんで成り立つのか? 報酬踏み倒しとかないの?」

「それは自己責任だな」

 ふむ……。最近よくあるゲーム的なシステムとしての「冒険者ギルド」というより、その昔テーブルトークRPGなどでよく使われていた「酒場で依頼を受ける」、という仕組みに近いのだろうか。あるいは原始的な冒険者ギルドと言ってもいい。

 実際、よくアニメや小説の類では国や大陸をまたがるような巨大組織として描かれることが多い冒険者ギルドではあるが、ほんとにそんなものが存在してたらそれって「世界を支配している」に等しいよね、とか思う。

「仕事の内容は多岐に渡るが、概ね雑用だ。しかし雑用にしたってそれなりに信用が必要だからな。タロウ殿が最初に受けられる依頼というものは、本当に誰でも出来るようなものしか受けられないと思ってほしい」

「つまり、家の掃除とか引越しの手伝いとかを依頼して泥棒されるようだと困るので、それなり信用されないと雑用すらさせてもらえないということか?」

 物の配達とか、そういう単純な依頼ですら最低限の信頼が必要だしな。

「そういうことだ。タロウ殿は理解が早いな。私はよく”なぜこんな簡単な依頼すらさせもらえないのか”とマスターとよくケンカしたものだが……」

「ん? あれ。リアちゃんってここでお仕事してたんだ?」

「あ? ああ。ある依頼で力を認められ、神殿騎士としてメラ様の神殿に勤めるようになるまでは、よくこの酒場でやっかいになっていた」

 なるほど、ウェイトレスさんや酒場のマスターとずいぶん親しいようだったが、そういう関係だったのか。チビドラっていうのは通り名のようなものだろう。

「ともあれ、誰でも出来る仕事であるがゆえに、危険を伴う仕事であることも多いので気をつけてほしい。具体的には魔法薬の実験台という依頼があるが、あれはやめておいた方が無難だ」

 うわ新薬の実験台とか、それって日本でもお金はいいけどヤバイバイトのひとつじゃね?

「さらには、先ほども言ったがこの酒場はあくまで”依頼を仲介する場所”であって、依頼の内容をすべて把握しているわけではない。殺人の依頼など、明らかに法に触れるものは最初から仲介をしないが、なんらかの犯罪に巻き込まれる可能性があることも留意しておいてほしい」

 まさかあの粉がなぁ、と遠い目をしてあらぬほうを見つめるリアちゃん。どうやら過去にろくでもないことに巻き込まれたことがあるようだった。

「……ええ。気をつけるようにします」


 このどらごん少女。いったい今まで何やって来たんだろう。

 ちょっと、気になってしまった。

 一回分で収まる内容だと思ってたのに、その4くらいまで行きそうな感じにふくらんできました……。異世界行ってるし閑話じゃなくて本編でやればよかったかなぁ。

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