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終末の血族  作者: 天津千里
4章:研がれし刃
32/38

第32話 研がれし刃VII

【帝国紀元1799年5月16日 18:00】

【アルトゥイン伯爵領・アルトゥイン宿営地】(セリーヌ視点)


 戦闘から五日が過ぎ、街は少しずつ息を吹き返しつつあった。領主や領軍が不在の影響は深刻で、リディア軍が治安維持に奔走している。セリーヌまで歩哨に駆り出される始末だった。

 魔導部隊まで治安維持なんて……まあ、歩哨くらいならできるけど。

 街の空気、前よりマシになってきた。人々の表情に安堵が戻ってきて、商人たちも恐る恐る店を開けるようになっている。

 今日の巡回帰り、いつものパン屋で焼きたてのバゲットをおまけしてもらった。まだ温かい包みを抱えながら、セリーヌは隊長におすそ分けしようと足を向ける。

 オレンジ色に染まった街を歩いていると、屋台から湯気と一緒に香りが立ち上ってくる。香辛料の効いたスープ、肉を焼く煙――どちらも食欲をそそる匂いだ。お腹が空いているのに気がついて、足が自然と速まる。宿舎に近づくと、石畳を踏む自分の足音に混じって、どこからか柔らかな笛の音が聞こえてきた。

 笛……?  ルシアさんかな?  聞いたことない曲……すごく綺麗。

 綺麗な音に足を止めそうになるが、手の中のパンがまだほんのり温かいのを感じて歩を進める。ユリアの部屋の前で軽くノックした。


「セリーヌです。今、お時間いいですか?」

「いいわよ。入って」

「失礼します。パン屋さんからおまけをもらえちゃったので、おすそ分けに来ました!」


 袋を掲げると、ユリアが穏やかな笑みを向けてくれる。


「あら、ありがとう」

「わぁ、いい匂い!」


 瑞希がぱっと顔を輝かせた。部屋の中では三人が笛の音に耳を傾けていたらしい。やっぱりルシアさんの笛だったんだ。


「すみません、お邪魔しちゃったみたいで」

「いいのよ。ちょうど夕飯にしようと思ってたところだから」


 ルシアは笛を置く。セリーヌが視線を向けると、いつものように柔らかく微笑んでくれた。優しい人だ。本当に。


「せっかくだから一緒に食べる?」

「いいんですか?」


 声が上ずる。隊長たちと一緒に食事なんて。あの夜、初めは会った時の光景を思い出す――三人を包む圧倒的な魔力の輝き。


「気にしないで。せっかくだしね」


 ユリアの穏やかな笑顔を見ていると、あの時の恐怖が嘘のように思えてくる。ちょっと肩の力が抜けた。目を凝らせば、今でもうっすらと魔力の輝きが――


「いいですね!  わたし、セリーヌさんとお話してみたかったんです」


 瑞希が楽しげに手を合わせた。


「そういうことでしたら……」

「そんなに硬くならなくていいのよ」


 ユリアが軽く肩をすくめる仕草を見せると、セリーヌは背筋が勝手に伸びてしまう。


「は、はい!」


 だめ、また緊張しちゃった。


「もう……」


 四人で手早く夕食の準備を始めた。ユリアたちも屋台で色々と買い込んでいたらしく、テーブルには見覚えのない料理が並んでいる。パンを軽く焼き直すと、焼きたての香ばしさが鼻をくすぐって、ほっとする匂いが部屋全体に広がった。

 外では夕闇が深くなり、松明に火が灯され始めている。昼間の治安維持で張り詰めていた気持ちが、ようやくほどけていく。

 三人分にしては多い。四人で食べても余りそう。


「なんかいっぱいありますけど、誰か来るんですか?」

「いいえ?」


 ユリアは不思議そうに首を傾げる。


「ユリアも瑞希もいっぱい食べるからね」


 ルシアが笑った。なるほど、それで。


「えへへ、最近お腹空いちゃって」


 瑞希は頬をかく。照れたような仕草だった。それにしては量が多いような……


「へ、へえ……好みが合ったんですかね?」

「かな?」


 瑞希は首を傾げている。本当に分からないようだ。


「さ、準備できたわよ。食べましょ」


 ルシアが手招きすると、四人で温かな食卓を囲むことになった。外の騒がしさとは隔絶された、この小さな部屋だけの時間。魔導灯の柔らかな明かりが料理を照らし、湯気がゆらゆらと立ち上っている。戦場とは正反対の、心からほっとできる瞬間だった。

 ふとした瞬間に三人の魔力が見えそうになって、セリーヌは慌てて視線を落とす。一緒に食事をしていると、三人とも本当に優しくて温かい。この人たちなら、私の特異性も受け入れてもらえるかもしれない。

 パンを千切りながら他愛もない話をしていると、ふと気になっていたことを思い出した。


「カラディンの出撃前の時のことなんですけど、ルシアさんに魔導銃との相性が悪いと言われたのですが、あれ、どういう意味だったんですか?」


 ルシアがフォークを置いて振り返る。


「ああ、あのときの。……そうね。私が見たところ、あなたは少なくとも熱魔法の適性は高くないわ」

「で、ですが、軍の適性検査ではたしか熱魔法が一番高かったはずです」


 声が上ずってしまう。軍の検査は間違いだったということなのだろうか。


「それは検査した中では一番だっただけじゃないかしら?」

「帝国標準の五属性検査ですよ?  熱、衝撃、光、音、雷の――他の属性なんて……」

「霧と精神は?」


 ルシアが静かに尋ねた。

 セリーヌは言葉に詰まった。


「あれは……エルフの使うもので人類は使え……え?」


 まさか。


「少し、調べたほうがいいかもね?」


 ルシアの提案に、セリーヌは困惑を隠せなかった。


「軍の検査でも調べられないのにどこで……」

「……明日、その"エルフ"に会いに行くわよ」


 ユリアが静かに口を開いた。


「え!?  こんな街中にいるんですか?」


 普通はあの大森林から出てこないのに……


「ええ。防衛戦で大活躍だったそうよ」

「たしかにエルフも変わり者は旅してたり移住する人もいるみたいですが……」

「ちゃんと護衛はつけていくわ。セリーヌ、あなたも護衛の一員という名目でついてこない?」

「それは……たしかに興味がありますけど」


 母はかつて「エルフの血も悪くない」と笑っていた。自分の中の不安は消えなかった。


「話に聞いた感じだと、ちょっと……いえ、かなり怪しいから私もついていくわ」


 ルシアが苦笑いを浮かべた。

 会話を聞いていた瑞希が、箸を止めて顔を上げた。


「その人、変わり者なんですよね?」


 瑞希が心配そうに尋ねる。


「ええ。それは間違いないわ。ただ、あの発想力は役に立ちそうだから、ちょっと話してみようと思ってね」


 ユリアが答えた。


「……ほんとに行くんですか?」


 瑞希の声に不安がにじんでいる。


「あれはおそらく"本物"よ。本物なら味方につけたいわ」


 ユリアがきっぱりと言った。


「もう……悪い癖よ」


 ルシアがため息をついた。


「いいじゃない。こんな時代だもの。きっと役に立つわ」


 息の合った二人だ。


「瑞希はどうする?  怪しいと思うなら残ってても……」

「私も行きます!  ユリアさんが行くのに年上の私が怖くて残りましたはダメです」


 瑞希がきっぱりと答えた。その気概にセリーヌは感心する。


「そ、そう」


 ユリアが少し戸惑ったように答えた。


「じゃあ、そういうことだから。明日のお昼に宿舎の前に集合ね」


 ユリアが話をまとめた。


「は、はい!」


 セリーヌは大きな声で返事をしていた。何か掴めるいい機会になるかもしれない――そう思うと、興味と期待で胸が高鳴っていた。



【帝国紀元1799年5月17日 13:00】

【アルトゥイン伯爵領アルトゥイン・ヴァルクス工房】


 翌日、ユリアはルシア、瑞希、セリーヌを引き連れ、指定されたヴァルクス工房へとやってきた。

 石造りの重厚な建物が目の前に立ちはだかっている。看板には確かに『ヴァルクス工房』の文字が刻まれていた。


「ここがヴァルクス工房……たしか、民兵のリーダー、ベルンハルトの工房よね。あの二人、思ってた以上に仲がいいのね……」


 ユリアは建物を見上げながら呟いた。


「大きい工房ですね。こんな機械の塊みたいなとこにエルフのお爺さんがいるんですか?」


 瑞希が不思議そうに首を傾げる。たしかに、エルフらしい場所じゃないわね。


「そうみたいね。とりあえず入りましょうか」


 扉を開けると、事務所スペースが広がっていた。そこら中に図面や書類が散乱しており、秩序立った運営とは程遠い状況だった。少なくとも三つの異なる設計案が床に展開され、インクの染みがついた羊皮紙が机の上に重ねられている。

 事務員に案内され、部屋の片隅にある応接スペースに位置を取った。革張りの椅子は使い込まれている。

 ルシアが隣に座る際、微かに身構えているようだった。城館でのリオフェルの第一印象を聞いているからだろう。

 事務員がリオフェルを呼びに奥へと消えていくと、間もなく足音が近づいてきた。


「ユリア殿、ようこそいらっしゃいました」


 現れたのはベルンハルトで、どことなく無理をしているような、慣れない敬語で挨拶する。


「よく来てくれた!  ささ、汚いところじゃが寛いでくれ」


 その後に続いたのは、片眼鏡をかけた老エルフ――リオフェルだった。


「おま!  汚いは余計だ」


 ベルンハルトが慌てて制止する。


「お邪魔するわ。仲がいいのね?」

「小さい頃世話になってな……なりまして……」


 ベルンハルトが言いかけて、急に敬語に戻る。敬語に慣れていないようだ。ユリアは小さく首を振った。


「普段通りでいいわよ。私は気にしないわ」


 ベルンハルトがルシアの様子を伺うように視線を送ってから、肩の力を抜いた。


「ありがてぇ。どうも堅苦しいのは苦手でな」


 堅苦しい敬語から普段の口調に戻るベルンハルト。ユリアがルシアの方を見ると、ベルンハルトを強く見つめているようだったが、すぐにこちらを向いて微笑んだ。


「それで、今日はジジイの作った試作品を見たいんだったか?」

「ええ。役に立ったもの、立たなかったもの全て見てみたいわ」


 ユリアの返答に、リオフェルの目が輝いた。


「ほお、感心な話じゃな。なら全力を尽くさねばなるまいて」

「尽くすな。工房がなくなる」


 ベルンハルトの制止に、リオフェルが反発した。


「そんなヘマはせんわい!」


 リオフェルは一息ついて気を取り直すと、ユリアたちの方に向き直った。


「手始めに……というわけではないが、この片眼鏡を紹介しておこう」


 リオフェルが自分の眼鏡に手を当てた。


「今かけているそれ?」


 初めて会ったときもつけていたはずだ。確か魔視鏡……魔力を可視化する道具だったはず。


「そうじゃ。これは魔視鏡。まぁ要は魔力が見えるようになる眼鏡じゃな」


 いつも身につけているということは、よほど気に入っているのだろう。


「これでゾンビを見ると、薄っすらと全身に魔力が流れているのが見えるんじゃ」

「普通の人とは違うんですか?」


 瑞希が身を乗り出して尋ねる。


「いいところに気付いたのう、嬢ちゃん。普通の人は心臓の周りに少しだけ魔力が溜まっているように見えるんじゃ」

「魔法使いと呼ばれる連中は心臓から全身に線が張り巡らされているように見える」


 なるほど。魔力の流れ方で存在の種類を判別できるということか。特にゾンビが全身に魔力を流しているという点は興味深い。ということは、あの現象は魔法的な何かが原因なのだろうか。


「へぇー。じゃあ私は?  前測定したときは暴走しちゃってよくわからなかったんですけど」


 確かにあの時は暴走でわからずじまいだった。リオフェルの見解は聞いてみたい。


「……測定機で暴走か?  ……まぁこれだけ魔力の流れが強ければそれも当然じゃな。嬢ちゃんは要訓練じゃ。訓練せんととてもじゃないがあぶなかっしくて魔法なんて教えられんぞ」


 リオフェルの表情が真剣になった。瑞希の魔力は相当なもののようだ。地球では魔力はなかったように見えたのだけれど……。


「で、ですか……。魔法が使えるのは少し嬉しいです」


 瑞希が照れたように頬をかく。


「じゃ、じゃあ私は?」


 セリーヌが緊張した声で尋ねた。


「護衛の姉ちゃんか。……お主、なんで帝国の魔法兵をやってるんじゃ?  もったいない。とっとと魔術院にでも行って精神魔法なり霧魔法なり研究したほうがよいぞ」

「えっ……それってエルフの魔法ですよね?」

「そうじゃ。同族よ」


 セリーヌが小さく息を呑んだ。


「な……なぜ」

「そんだけエルフの血が濃いんじゃ、同族から見たら一目瞭然じゃぞ」

「そんな……まさか」


 セリーヌにエルフの血が混じっていて、先祖返りのように適性が特殊なのは分かった。なぜそれでここまで動揺するのだろう。リオフェルも普通に街で受け入れられているように見えるのだが。


「それで……隊長殿とそのお姉さんか?  二人はちょっと……」


 リオフェルの視線がユリアとルシアに向けられた。


「なに?」

「おい、失礼なこと言う気じゃないだろうな」


 ベルンハルトが慌てて制止に入る。


「言っていいわよ」


 ルシアが静かに答えた。


「そうか。……正直眼鏡で直視できないほどの魔力が全身を流れている。しかもゾンビと違って制御されてるように見えるんじゃが……ほんとうに人間か?」

「おまっ」


 ベルンハルトが慌てるが、ユリアが予想していたリオフェルの反応だった。

 そこまで見えるのね。


「構わないわ。私たちはただの異界人よ。今はそれで十分かしら?」

「……わかったわかった。異界人ならさもありなん」


 リオフェルが手を振って引き下がる。

 これはもう新兵器以前に取り込むべきかもしれないわね。


「さて、異界人の方々には次をお披露目するとしよう。奥に行くぞ」

「ベル坊も行くぞ。合作もあるんじゃ。しっかり助手を務めるんじゃぞ」

「もう坊って歳じゃねえ!」


 奥へと騒がしく消えていく二人を見て、ユリアたちも後を追った。微笑ましくもあり、頼もしくもある二人だった。

 作業場に足を踏み入れると、中央の机には先ほどの眼鏡や銃、杖のほか、用途不明の器具が所狭しと並べられていた。見たこともない道具ばかりで、発明家の仕事場そのものだ。


「まずは軍向けの物から紹介するかの」

「早速だがこの銃を見てほしいんじゃが」

「隊長殿の部隊が猟銃を使ってると聞いての。軍でも使える猟銃の弾薬セットじゃ」


 救援戦の情報を聞いて、それに合わせた商品を用意してきているのね。


「ほれ、これだ。この試作猟銃と合わせて使ってくれ」


 ベルンハルトが差し出したのは、基本的には見慣れた猟銃だが、反動軽減用のストックが追加されており、弾薬も明らかに異なっていた。


「へぇ……紙薬莢ね……実物は初めて見たわ」


 この段階まで発達しているのか。実用化されているなんて。


「なんじゃ知っておったんか。ライフル用のやつを猟銃用にしたのがこれじゃ」

「猟師には好評だったんで、軍で使っても悪くないとは思うぜ」

「今ある紙で包んだやつとはどう違うんですか?」


 瑞希が小さな声で尋ねてくる。応じて小さな声で返す。


「あれの次の世代のものよ。装填速度に利点があったはず。後装銃が出始めていることを考えたら、すぐ置き換えられるわよ」

「ユリアさん、なんでそんな詳しいんですか……」


 瑞希の疑問に、ルシアがさりげなくフォローしてくれる。


「昔いろいろあったのよ。狩猟とかね」

「ユリアさん何歳でしたっけ……」


 瑞希がさらに突っ込んでくる。


「昔ちょっとだけやったことあるだけよ」


 ユリアが苦笑いで答えると、リオフェルが次の品を取り出した。


「ほう。じゃあこれもいいかもしれんな。魔力感知器じゃ」

「魔力感知器……これね」


 ベルンハルトが指した杖は、複雑な装飾が施されており、明らかに高度な技術で作られている。

 これが防衛戦で使ったという魔力感知器か。


「それじゃ。5ケイミル先の魔力も嗅ぎつける、いわば魔法の猟犬のような道具じゃ」

「霧と雷、精神の3属性を使った複合魔力感知器じゃ」

「3属性!?  そんなもん誰が使えるのよ!」


 セリーヌの驚きようを見るに、相当高度なもののようだ。


「まさに打ってつけの人材が見つかったばかりじゃな」


 リオフェルの視線がセリーヌに固定される。


「わ、わたし!?」


 なるほど、それでセリーヌの適性を見抜いてから持ち出してきたのね。

 セリーヌの適性がここまで特殊だとは思わなかった。偶然とはいえ、いいタイミングで出会えたものだ。


「5ケイミルってどれくらいでしたっけ」


 瑞希の質問にユリアが答える。


「たしか、5キロメートルだったはずよ」

「5キロ!  遠くまでわかるんですね」


 瑞希の目が輝いた。

 5キロメートルの探知――これはかなり便利そうだった。


「……レーダーみたいね」

「レーダー...?」


 リオフェルが首を傾げる。


「異界にも似た概念があるんじゃな?」

「ええ。軍が使うものだけど」


 ユリアが答えると、リオフェルが嬉しそうに手を叩いた。


「ほれ!  どうじゃベル坊!  わしの目は曇っておらんかったじゃろ!」

「今夜の一杯はお前さんのおごりじゃな!」

「わかったわかった!  降参だ!」


 ベルンハルトが苦笑いで手を上げる。

 変わったコンビだが……面白い人たちだった。特にリオフェルは是非とも仲間にしたい。

 瑞希の訓練、セリーヌの指導、そして新技術の開発。一石三鳥どころではない。決めた。


「リオフェル、あなた、流浪の研究者とか言ってたわよね?」

「そうじゃ」

「うちの部隊に来ない?  顧問として雇いたいわ」

「……いいのか?  こんな変人エルフなんぞ雇って。どんな実験をするかわからんぞ?」


 エルフの技術者なら、それも含めて面白そうな気がする。


「それを補って余りあると判断したわ。姉さん、いいわよね?」

「ええ。部隊の傭兵雇用費は十分よ」


 ルシアが小さく頷いてくれた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 ベルンハルトが慌てて割って入る。


「この爺さんを野放しにするのは危険だ!  俺もついていく!」


 これは予想外だった。


「あなた、ここの工房主じゃないの……」

「留守を任せられる弟子くらい育ってる!」

「あなたがいいなら私としては願ったり叶ったりだけど……」


 急な展開になってきた。


「なんじゃ、ベル坊、寂しいのか?」

「ジジイが変なことしないようにお目付け役としてだよ!」

「えっと、よろしくお願いします?」


 瑞希が困惑しているのも無理はない。急展開すぎたのだろう。


「大船に乗ったつもりでいてくれい。嬢ちゃんの訓練も、護衛の姉ちゃんの教育も任せるんじゃ」


 瑞希とセリーヌの指導まで引き受けてくれるなら、本当にありがたい。


「期待しているわ」

「……えええー!?」


 セリーヌの驚きの声が作業場に上がった。

 エルフの魔法適性を見抜かれ、その指導まで申し出られるなんて、彼女は想像もしていなかっただろう。これで色々な問題が一気に解決しそうだ。

 思った以上にいい出会いだった。




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