魔法少女ムーンライトブルー
ついに梅西の口から真実が語られます。実はこの回は7月6日に既に完成していた回です。最終調整をしていよいよ投稿となりました。
楽しんでいただけると幸いです。よろしくお願いします!
ウチの名前は森川杏。中学3年生。そしてそんな私には誰にも言えない秘密がある。みんなにだけ教えるね。それは、ウチ魔法少女なの。魔法少女ムーンライトブルー。それがウチの秘密。ウチがどうやって魔法少女になったかって?ある日怪獣が街を壊してたんだよね。それで逃げ遅れた人を助けてたら、突然声が聞こえてきたの。ウチは声に導かれるまま魔法少女に変身しちゃったってわけ。最初めちゃくちゃ驚いたんだけど、今はみんなを守るために必要な力だから、この力をくれた神様には感謝してるんだよね!
このことは絶対内緒だよ?
「おーい!杏!遊びに行こうぜ!」
ウチに声をかけてくれているのは梅西隼。隼はウチの幼馴染で、家も近所。物心ついた時には既に一緒だった。そして隼の隣にいるのは築村溱。溱とは小学校の時に友達になったの。最初はとても内気で暗い子だったんだけど、ウチらと遊ぶようになってからは少しずつ変わってきた。いいことだよね?
ウチらはいつも3人一緒、何をするにもどこへ行くにも一緒だった。だから、誰かが欠けるなんてもう考えられないな。
ある日のこと、隼が何やらいつもと様子が違うの。感の良いウチは隼をバレないようにつけてみたのよね。そしたら―――
「ごめん!お待たせ!」
「ううん、私も今来たところなの。じゃあ、行こっか!」
隼にはいつの間にか彼女ができていたのです。とても幸せそうな2人を見ているとウチまで彼氏が欲しくなってきた。別にいいもん。羨ましくもなんともないもん。ウチには溱がいるもん。
「ねー溱っ!」
「ん?何か言った?」
「な、なんでもない////」
でも、ウチはまだ溱に気持ちを伝えられてないのよね。いつになったらこの気持ちを伝えられるんだろう。
隼に彼女ができてからは3人揃って遊ぶことがほとんどなくなってしまった。ちょっと寂しいな。
「大丈夫?元気ないけど」
そう言って声をかけてくれたのは溱だった。ウチは溱のこういう優しいところが好き。早くしないと隼みたいに彼女ができてしまうかもしれないってわかってはいるんだけど、なかなか勇気を出せないんだよね。
「ううん、なんでもないよっ!さっ帰ろっ!」
溱と別れた後、ウチは人知れず魔法少女として怪獣たちと戦い続けた。溱に隼、そして隼の大事な彼女さん。ウチの大切な人たちを守るためならどんなに敵が強くたって負けない。
「ブルームーンバースト!!」
ウチの必殺キックが怪獣たちを貫いていく。みんなは必ずウチが守りきって見せるから。
でも、ある日のこと。隼が浮かない顔でウチを人気のない場所に呼び出した。いつもとは明らかに違う隼の表情にウチは少しだけ嫌な予感がした。そしてウチの勘は的中することになった。
「杏……。俺は……お前を倒さなきゃならない………」
「どうしちゃったの急に?それに倒すって意味わかんないよー」
ウチはいつも隼と話すような日常なテンションを維持し、言葉を返す。
「そうだよな。意味わかんねぇよな。俺にもわかんねぇよ。でも、沙月のためなら俺は!!」
そう言って隼はポケットからウチが持っているのと色違いの紫色の変身アイテムを取り出した。
「隼、それって!?」
「変身………」
隼は紫色の魔法少女へと変身してしまった。そしてウチに襲いかかる。その目は真剣そのものでどうしてこんなことになってしまったんだろう。ウチも変身して迎え撃とうとするも、隼が相手じゃ戦えるわけがない。
「どうした杏!その程度か!」
「戦えない……。戦えるわけないよ!!」
「お前が戦わなくても、俺はお前を倒す!倒して沙月を救うんだ!!」
隼の攻撃が次々とウチに炸裂していく。隼の攻撃は今まで戦ってきたどんな怪獣よりも強かった。
「沙月ちゃんって隼の彼女でしょ?一体何が……」
「呪いをかけたのさぁ。俺がなぁ」
すると、黒い霧の中からコウモリの姿をした怪人が姿を現した。
「アナタ一体何者なの!?隼に何をしたの!!」
「お前は目障りなんだよなぁ。だから、お前を倒せる奴を探してたらよぉ、丁度いいやつを見つけたんだよなぁ。なぁ梅西ぃ。最高の舞台が整った訳だからよぉ感動的に友達同士で潰し合ってもらおうと思ってなぁ。まぁせいぜい楽しんでくれやぁ」
そう言ってコウモリ男は姿を消した。
「杏……。沙月のために死んでくれ…………」
そう言う隼は大粒の涙を流していた。
「隼………」
苦しそうな隼を見て、ウチは覚悟を決めた。
「いいよ!ウチを倒して沙月ちゃんが助かるなら、それでウチは構わないから!」
「杏………。すまない……………。滅殺!!!!」
隼の必殺技がウチの胸を貫いた。
「ゔぅあああああ………」
痛いのは一瞬だった。これで隼と沙月ちゃんが救われるならこんな痛みどうってことないんだから。そう思ってたのに。
ウチが倒れた時、溱がやってきた。
「杏!!!しっかりしろ!なんでこんな……。俺はまだ……お前に気持ちを伝えてないんだ!!頼む!目を開けてくれ!!隼!お前何やってんだよ!!どういうことなんだ説明しろ!!!」
溱が必死にウチに呼びかけてくれた。そのおかげなのかもうダメだと思っていたのに、少しだけ話せる力が戻ってきてくれたの。
「みな……と……。私ね……。溱のことがずっと好きだった………。今更言うのはもう遅いよね………。本当は…カップルみたいに……デートとか……したかったのになぁ……」
「俺もだ。俺も杏のことが好きなんだ!これから一緒にやりたいことがいっぱいあるんだ!だから、こんなところで死なないでくれ!お願いだ!杏ぅううううう!!!」
杏がそのまま目を開けることはなかった。動かなくなってしまった杏とそれを抱きしめる溱を見て、俺は取り返しのつかないことをしてしまったと後悔した。だが、これも全て沙月のためだった。俺はその場にいた溱と杏から目を背け、沙月のところへ向かった。
「隼!待て!!どこに行くんだ!!俺はお前を許さねぇぞぉおおおおお!!!」
その日から溱は復讐に取り憑かれるようになった。俺は病室で眠る沙月を迎えに行った。目覚めていると思っていたからだ。しかし、それはムルシエラゴの罠だった。
「よおぉ!待ってたぜぇ梅西ぃ!」
「何故だ!話が違う!杏を倒せば沙月を助けてくれるんじゃないのか!!」
「お前みたいな奴をそう簡単に手放すわけないだろぉ。ちょっと考えればわかるだろぉ。お前はこれからも俺の駒として永劫働くんだよぉ!!」
「そんな……貴様!!!」
俺はポイズンパープルに変身し、ムルシエラゴの喉を締める。
「うぐぅ!いいのかぁ?俺を倒しても愛しの彼女は未来永劫目覚めないしぃ、お前は友達から命を狙われる存在になるだけだぞぉ?」
「この外道が!」
俺はムルシエラゴを壁に投げつけた。
「死にたくなければ、二度と沙月の病室に近寄るな!!」
「契約完了だなぁ」
そう言ってムルシエラゴは姿を消した。それ以来、俺はムルシエラゴの言いなりとなり、魔法少女を倒し続けてきた。
「ぐうぅ!おのれぇ忌々しい魔法少女共がぁ!俺をここまでさせるとはぁ!」
ムルシエラゴとの決戦の日は近い。
続く。
初めて綾二以外のキャラ視点を書きました。その記念すべきキャラが杏というね。実は杏が話すのは今回が最初で最後でした。梅西編いよいよクライマックス!
今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!