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第9話 ティオ、ドリアンとラッキョに出会う

 リケも無事に立ち直ったところで、いざ出発、セロは三角巾で首から腕を吊り大事をとって大きいロズの背中に乗せてもらっての移動となった。


 しばらく進むと、賑やかな村にやってきました、ここでは、色々なお店が並んでいます。

 靴屋さんに、服の仕立て屋さん、果物屋さんに薬屋さん、お客さんも沢山いて賑わっています。

 人がたくさんいたので、セロはロズから降り、ロズは可愛いサイズに戻っていた。


「鍛冶屋屋さんは無いのかな」

 早速セロは、目的のお店を探しているようだ、でもいろんなお店があるものの、希望にあうような店は見当たらない。


 あちこち見まわしていると、ロズがセロの肩に乗って言った。

「いいの?ティオを放し飼いにしテ」

 しまった、鍛冶屋を探すのに夢中になって、何をしでかすか解らないアホの子の事をすっかり忘れていた。


 ティオはもう食べ物屋さんの前にいて、お店の人に話しかけている。

「いい匂いなのだ~、美味しそう~」


 そこは、野菜とか肉とかを美味しく煮てスープを振る舞っているお店のようだ、大きなお鍋の中で、いろんな食材がグツグツと煮えて、食欲をそそるいい香りが漂っていた。


「おや、可愛いお客さんだねぇ一杯どうだい?」

 スープを作っていた少し太めの、優しそうなおかみさんが、ティオに話しかけて来た。


 まずい、このままでは以前どこかで見たとのあるシーンの再現になってしまいそうだ。

「わぁーい、ありが――」

 そう言って手を伸ばそうとしたティオの頭にロズが乗っかって帽子ごと顔にのしかかる。


「こらこら、お金持ってないんだから、勝手に食べるんじゃないヨ」

「おやおや、可愛い猫ちゃんだね、話ができるんだね、かしこいねー」

 おかみさんは、大鍋のスープをかき混ぜながら笑顔で話してくれる、後から近づいて来たセロとリケにも。


「お金がないのなら、うちは体で払ってくれればいいんだよー」

「体でぇ⁉」

 思わず、包丁を手にティオの体を切り裂いてスープの材料にせんとする恐怖のおかみさんの恐ろしい姿、を想像して震え上がるティオであった。


「何想像してんだよ、この子は」

「すいませんこの子アホの子なもので、体で払えとは、つまり何かお手伝いをすればいいという事なんですね?」

 ティオの頭をしばきながら、リケが上品に話しかける。


「よく分かったねぇ、あんた賢い子だねぇ」

 おかみさんは、ふくよかな笑顔をリケたちに向けると。


「この店の裏にうちの畑があるんだよ、そこで野菜を採ってきてくれないかね、そうしたらお礼にスープを分けてあげるよ」

「本当に⁉やったぁ、頑張ってねリケ~」

 ティオに、他人事のように応援された。


「バカ、あんたも手伝うんだよ!」

 セロはケガをしているので、お店で待たせてもらうことになった、リケは頭に大きなたんこぶを作ってノビているティオを引きずって裏の畑に向かう。


 お店の裏は、広大に広がる畑だった、

 今が食べごろのジャガイモを採ってきて、との事でリケとティオ二人分二つのかごを借りて来た。

 しかしここで大きな問題が。

 偉そうにティオを引っ張って来たリケだったが、広い広い畑には、太陽の光を浴びた様々な野菜たちが鎮座している、でも、どれが何だか分からない、もちろんジャガイモ自体は見た事がある皿の上でなら、だがこの中からお目当てのものをどうやって探せば……。


「困ったなぁ」 

 独り言のようにつぶやくリケだったが、ティオは臆することなくズンズンと畑の中に入って行った、そして大きな緑の葉っぱが生い茂っている場所の前に立った。


 そこで、葉っぱの様子をあれこれ確認し、「これがいいかも」と言い出した。

「って、それ、ただの葉っぱじゃん、しかもしおれてて元気がないじゃん、そんなの芋じゃないでしょ?」 


 そう言ったリケの顔を、不思議そうに見る。

「な、何だよ……」


 ティオはそんなリケに目を細くしてちょっと嫌味っぽく言った。

「もしかして、ジャガイモが何なのか知らないとか?」


「バ、バカにすんな、あたしだってジャガイモくらい知ってる、食べると旨い‼」

 するとティオ、そこに生えている大きな葉を両手でグシャグシャと丸め、手のひらに包み込んだ。

「こうやって丸めて、芋になれ‼って言ったらジャガイモになるのも知ってるよね?」

「も、もちろん、そんなこと知らないあたしではないわ!」


 そう言って、本当に葉っぱをグシャグシャと丸めて「芋になれっ」とやってしまった。

 この反応に、さすがのティオもびっくりした、まさかこんな単純な手に引っかかるとは。


「そんな事デ、芋が出来る訳ないジャン」

 面白そうだと一緒に付いてきていたロズが、呆れた顔でリケを見上げている。

 確かに手のひらには、くしゃくしゃに丸められた葉っぱが手の中で青臭い匂いを放ったままだ、芋にはなっていない。


「なッ、ダマしたのか‼」

 顔を真っ赤にして起こるリケにティオは。

「リケって、もしかして、お嬢様育ちなの?」

「ゔっ……」


 図星、まずい、これ以上知ったかぶりをすると、変に勘ぐられて素性がばれる、かもしれない、そう考えたリケ、ここは素直に無知を認める方がいいかも。

「あ、あぁ、そうだよあたしは今まで畑の仕事なんかしたことないよ、悪かったな、ジャガイモの採り方教えてくれよ‼」

 開き直った。


「うん、いいよ、芋ってのはみんな、この土の中で成長するんだよ」

 よかった、ティオが単純な子で。

「だから、スコップで少しだけ土を掘り返して、後はここを持って引っ張る」

 二人で協力して、ツルを引っ張ってみた、すると大きなジャガイモがゴロゴロと沢山連なって出て来たのだ。


「すっごーい、こんな風に出来るのか」

「そうだよ、あと、美味しそうな芋の見分け方はねぇ……」


 楽しそうに教えてくれるティオに。

「でもなんでそんなに、詳しいんだ?」

「うんあのね、師匠と修行してるときは、ずっと自給自足の生活だったんだよ、だから畑にいっぱい色んな野菜を植えていたのだ」

「へー」


 リケは今までテーブルの上に並んだ料理しか知らなかった、野菜だって名前は豊富に知っていても、それがどこから来てどうやってリケの口に入って行くかなんて、考えた事も無かった、こんな風に育てる人がいて、それから収穫されて、それを食べられるように調理する人がいて、世界と言うのは、本当に奥が深い、栄養豊富な土がこんなにいい匂いがするのも初めて知った、旅に出て良かった。


「あー、トマトが真っ赤になって採れ頃だぁ、これも採っていってあげよう」

 辺りを見回していたティオ、が手際よく籠の中をいっぱいにしていった、さすがは畑仕事に慣れているだけの事はある。

 二人は、あふれんばかりの野菜が入ったかごを抱えて店に戻って来た。


「おう、お疲れ」

「あいよ、二人共ごくろうさんだったね、おや、トマトまで採ってきてくれたのかい、こいつも収穫しようと思っていたんだよぉ、気が利くねぇ」


 おかみさんは、かごの中のジャガイモを見て驚いている。

「おや、立派になったジャガイモばっかりじゃないか、よく見分けられたねぇ」

 褒められてエヘヘ、と照れ笑いのティオ。


「おばさんの手入れがいいからだよ、ピーマンは明日には収穫できるね、でもキュウリはもう少し水をあげた方がいいよ」

 テーブルに付きながら、ティオは厨房のおかみさんに話しかけている。


 するとおかみさんはすごく感心した様子で。

「あんたすごいねぇ、良かったらうちで働かないかい、良い畑師だよあんた」


「あはは、そうしたら毎日こんなおいしいご飯が食べられるから素敵だねぇ、でもボクはまだやらなきゃいけない事がいっぱいあるんだ、だから無理だよ、ごめんなさい」


「おや、そうかい、それは残念だねぇ」

 美味しいスープの他にもトマトのサラダまで付けてくれた、これもティオのおかげ。

 ただのアホの子ではない意外な一面、今だけはティオが立派に見える。


「ところでおかみさん、この村に鍛冶屋はあるかい?」

 セロがおかみさんに尋ねると。

「鍛冶屋かい、昔はあったんだけどね、もうこの村には無いねぇ」

「そうなんですか」


 やっぱり、モンスター退治の全盛期に比べて、武器を作ろうとする鍛冶屋はすっかりいなくなってしまったという事か。

「そういえば、一軒だけこの村のはずれのどこかにあるって聞いたような気がするねぇ」


 村のはずれならここからさほど遠くないであろうと思うのだが、それでもおかみさんはそれがどこにあるかは知らないんだよ、と、何とも頼りない。

「そうだ、金物屋をしている主人に聞いたらどうだい、昔は武器も少しばかり扱っていたからねぇ、鍛冶屋の事も知っているかもしれないねぇ」

「本当に⁉ありがとう、行ってみるよ」


 こうして、お腹がいっぱいになって食べ物屋を後にした。

 目指す金物屋はすぐに見つかった。

 バケツにお鍋、高枝切り挟みなどの金物の他にも、熊の置物や家具に調度品といった、いろんなものがゴチャゴチャと置かれている小汚いお店だった。


「いらしゃい、何の用だい?」

 店にいたのは、眼鏡をかけた中年の、細いおじさんだった。


「すいません、鍛冶屋を探しているんだが、今は何処にあるか教えてくれないか?」

 セロが尋ねると、店の主人は怪訝そうな顔をして、一行を見た。

「何だい、あんた達は」

「可愛い魔法使いと元気な戦士とケガをしてるハンターとロズとグレ子だよ」

ティオが元気に答える。


「ほぉ、あんたら、いまだにモンスター退治でもしようってのかい?」

「まぁ、そんなとこだ」

 苦笑いで答えるそんなセロに、主人はしばし考えて。

「まぁ、教えてやらない事も無いが」

「本当⁉どこ?教えて!」


「教えてやってもいいが、タダで教える訳にはいかないなぁ」

 そんな事を言うのだが、残念ながら金は持っていないと言うと。

「だったら、金になりそうな物でもいいぞ、何か無いかね?」

 すると、何かを思い出したティオは。

「これでよかったらあげるよ」


 と言いながら店主に差し出した物。

 それは、ティオが魔法で意味もなく出してきた、面白い顔の仮面だった、まだ持ってたのだ。

「うちに代々伝わる家宝のお面だけど、おじさんにあげるね」


 すると、主人は受け取った仮面を上から下から、まじまじと見て。

「ほぉーっ、これはまた立派なお面じゃないか、作りもしっかりしているし、保存状態もいい、それにこの躍動感にあふれた表情、いい仕事してるじゃないか」

 かなりの高額が期待できそうな鑑定。


「(どこが家宝だよ、魔法で出してきただけの仮面なのに……)」

 本当の事が言えないでいるが店主はかなり喜んでくれた、だからそれでいいだろう。


「この村を出て東にしばらく行った川の近くに一軒だけポツンと建った小屋がある、そこがそうさ」

「そうなんだー教えてくれてありがとう‼」


「――まぁ、でもそこの大将は、最近全く姿を見かけないからねぇ、今はどうなってるのか知らないけど――って、いねーし」

 話は最後まで聞いて行け、と金物屋の主人、でもまぁいいか立派なお面が手に入ったから。


 一行は村を出て鍛冶屋をめざす、しかし山道が続くばかりで肝心の小屋も小川も見えてこない、もしかして金物屋の主人に騙されたかもと思い始めた時、道の向こうに二つの人影が見えた。


「よう兄ちゃん、また会ったな!」

「この間は世話になったな!」

 ――見知らぬ男が二人立っていた、手に木刀を持って。


「誰だっけ?」

「誰だっけ、じゃねぇ、忘れたとは言わせねぇ、俺の名はミント!」

「そして俺の名はライム、二人合わせてモヒート兄弟とは俺たちの事だぁ‼」

 二人は息もぴったりとポーズを決めている。


「――誰だっけ?」

「お、覚えてろって言ったじゃねーか!」


 その言葉は、どこかで聞いたことがあるような、――思い出した、この間とある村で美人のお姉さんに絡んでいた、ガラの悪い男二人。


「あぁ、ボクを人質に取ったおっちゃんたちだね、そんな可愛い名前だったんだ」

「あの後セロに一撃で倒された奴らだ、どっちかっていうと、ドリアンとラッキョって名前の方が似合うけど」

「でも、直後に振られちまったんだよな、俺」

 それぞれに思い出した。


「――って、何事も無かったかのように立ち去ろうとするんじゃない!」


「なんだよ、俺たち急いでるんだが」

 そう言うセロに、ミントとライムは不敵な笑みを浮かべた。

「ここから先には通さねぇ」

「通りたければ、俺たちを倒してからだ」

「倒せれば、の話だがな!」


 いきなり襲いかかって来た男二人、ティオとリケを脇に避難させて、仕方ないなと思いながら銃を構えるセロ、片腕とはいえ、こんな二人すぐ倒せる、はずだったが。

「今日の俺たちは、いつもと違うぜ」

「お前はここで俺たちに負けるんだ」


 確かに、この間と動きが違う、怪我をして片腕だけの状態だからか、木刀で迫ってくる二人の攻撃を避けるだけで精いっぱいのセロ、銃を構え直し狙いを定めて撃つものの、すべて外される。


「セロっ‼」

 見かねてリケも飛び出してきたが、ミントとライムの攻撃してきた木刀を受け止めきれずに、弾き飛ばされてしまった。

「リケっ‼」


 そんなセロも、二人の攻撃をまともにくらい、後ろの大きな木に背中を打ち付ける。

「痛っ――」


 何だこいつら、この間とは比べものにならないくらい強くなっている、何があったのか。

「今の俺たちには、強い味方が付いてんだ!」


 どうだと言わんばかりに男たちが両手で指さす方向に、一人のバァさんが立っていた、黒い服を着てつばの広い黒い三角帽子を被りドクロが乗っかった魔法の杖を持った、見るからに魔法使いのおバァさんだった。


「こいつはただのバァさんじゃねぇ、かの有名な占いバァさまなんだぞ」

「占い?」

「この占いバァさまはなぁ、その占いが確実に絶対当たると有名なバァさまなんだぞ、恐れ入ったか!」

 恐れ入ったかと言われても……。と、セロ。


 この二人は、有り金全部はたいてこのバァさまに占ってもらったところ、自分たちが勝ってセロが負けるという結果が出た、だからこうして、あの時の一瞬で倒された屈辱を果たさんと、ここまでやって来たと言うのだ。


「だからというて、何でワシまで連れてきたのじゃ……」

 不機嫌そうに言う占いバァさま、占いが本当に当たるのか、もし外れたら承知しねぇと、無理やり連れてこられたのだ。


 それにしてもこの二人強くなりすぎ、勝てると言われてその気になった人間ほどタチの悪いものは無いという事か、しかしたかが占い、だったらそれはそれで、受けて立ってやろうじゃねーかと、セロも立ち上がった。


「占いなんて、知ったこっちゃねぇ!」

 そんなセロに、占いバァさまは。

「言っておくが、ワシの占いは絶対じゃぞ、外したりはせぬ」


 不機嫌な割には、自分の占いには絶対の自信を持っているらしい。

「その証拠に、お前らが今日ここを通ることもすでにお見通しだんたんだよぉ!」

「どうだ参ったか!」


 ふはははと不敵な笑い声をあげるライムとミント、セロがそんな二人に向けて銃を打つがどれもかわされてしまう、それどころか、奴らの木刀に弾きかえされてしまうのだった。


 増々本気で銃を撃ちまくるセロに「無駄無駄っ、今の俺たちにかなう訳ねぇ!」と、増々弾きかえされる、弾きかえされ、周りにその流れ弾があちこちに飛んでゆく。


 その打ち返された弾の一つが、占いバァさまにめがけて飛んできた。

「危ないッ‼」

 その瞬間、セロが身をていして庇ってくれた、ボゥンと爆発音をあげてセロの背中で弾け飛ぶ銃弾。


「だっ、……大丈夫か、バァさん」

 ちょっと苦しそうなセロだが、おかげで占いバァさまはどこもケガは無く、無事である。


「ワシの事は心配しなくともよい、今のも、お前さんに守られる、と占いの結果が出ておったわい」

「そっか、そりゃぁ良かった」

 セロはそんな不機嫌なバァさまにも笑顔を向ける、その時リケの放ったコショウ爆弾攻撃が奴らの前でさく裂し、ライムとミントの周りが煙幕で何も見えない。


 そのスキに、とりあえずバァさまをみんなで安全なところに避難させることにした。

「セロ、大丈夫、ケガは?」


 リケもティオも背中に受けた弾を心配していたが。

「なぁに、心配いらねぇ、俺だってちょっと相手を脅かす程度の攻撃しかしてねぇからよ」

 そんな跳ね返った攻撃を受けたところで、ビクともしねぇから心配すんなと言う通り、ケガは大した事はなさそうだ。


「どんな攻撃も俺たちには効かねぇと言っただろうが!」

 二人はなぜか、ガスマスクまで用意していた、こんな攻撃も予想していたというのか。


「しかし、厄介な事になったな」

 思い込みだけで最強になってしまったとか、こいつらマジで面倒臭い。


 すると、占いバァさまが、コホンと咳払いをしてから。

「ワシの占いは確実に当たる、なぜならワシは言霊使いだからのう」


 占う言霊使い、つまり占いバァさまの占いの結果を言葉に出して言うと、全て本当の事になる魔法、占いの結果と言霊のコラボだ、だから誰もその結果を変える事は絶対出来ない、だがそれが解ったところで、どうすればいい、その時ティオは何かを思いついた。


「じゃぁ、占いの通りにセロが負けてあげればいいんだよ」

「ばっ、バカかあんたは、あいつらにやられろっての⁉」 


 リケは、そんなティオに怒鳴るように言ったが、セロはその意味を理解したらしく。

「なるほど、そう言う事か」


 コショウ爆弾の煙幕も消えて、無敵の男たちは、隠れているセロたちの元に近付いてくる。

「オラオラ、隠れても無駄だ!」

「大人しく出てきて俺たちに負けやがれ!」


 するとセロは、物陰から現れて男たちの前に立ち、持っていた銃を下に降ろすと、そのまま両手を上げ降参のポーズをとった。

「お前ら強ぇーな、さすがの俺も敵わねぇ」

 そして、胸を張って偉そうに叫んでみる。


「お前らの勝ちだ‼」


「――――え?」

「どうじゃ、ワシの占い通りになったじゃろう?」

 横から、占いバァさまも来た。

「――――はい?」


 たしかに、占いの結果は勝つとは言われたけれど、方法までは聞いてなかった、だがしかし今まさにライムとミントは勝ったのである、つまりは占いの通りになったのである、二人の背中に嫌な予感という冷たい風が吹き抜けた。


 セロは、足元に置いた銃を足で蹴り上げ受け止めると、怒りのオーラをまとった飛び切りの笑顔で二人に向かって。

「で、このまま二回戦と行くかい?」


「――ついでじゃ、次はどっちが勝つか占ってやろう」

 そう言うバァさまに、リケがボツリと。

「いや、もう遅いですって……」


 見守られることも無く一瞬にして倒され、情けない格好で転がっている二人を見て、占いバァさまは、やれやれとひとりごちた後、ツカツカと歩み寄って見下ろす。


「ドリアンとラッキョと申したか」

「ライムです」「ミントです」

「今日は隣の爺様からもろうた新茶とおはぎをを頂こうかと思うていたところじゃったのだ、だからワシは今すこぶる機嫌が悪い」

「はい、すんません……」


「腹立ちついでに、貴様らの今後を占ってやったから、よく聞くがよい」

「は、はい⁉」


 占いバァさまは、ライムとミントを目の前に正座させると、コホンと咳払いをして、偉そうに言った。

「貴様らは今後、悪さをしたり他人を傷つけたりしようとすると、天罰が下る」


「て、天罰、ですか……」

「そうじゃ、貴様らの想像もつかぬようなそれはそれは恐ろしい天罰じゃ、覚悟しておけ」

「ひ、ヒエェェェ」

 バァさまにしわくちゃで迫力のあるどアップで言われたものだから余計恐ろしくて震え上がる、でもその後は、顔を離し、優しい顔になって二人を見た。


「だから、これからは人の役に立つことを成してゆけ、他人を笑顔に出来る人になれ、そうすれば、おのずと道は開けてゆくであろう」

「でも、どうすれば……」


 そう言われて不安そうな顔をする二人に、またバァさまのドアップ。

「それは自分らで考えるがよい、分かったら、さっさと失せろ!」


 バァさまの迫力におされ、ヒェーとばかりに、いちもくさんに走り去ってゆくライムとミントだった、そんな二人を見送った後、占いバァさまは、改めてセロたちを振り返る。


「お主らには、とんだ災難だったのう」

「いえ、そんな……」

 照れ笑いのセロ、横からティオが。

「でも、面白い兄ちゃんたちだったね」

 それを聞いて、みんな一斉に笑いあった。


「おかげでワシも十分楽しませてもらった、お礼に、お主らの事も占ってやろう」

「本当?嬉しいな~!」

 無邪気に喜ぶティオだったが、他の皆は「悪い結果が出たら嫌だな」と少し緊張気味。

「ほほっ、心配するでない」


 まずはセロを見て。

「お主は、熊にご褒美をもらう、と出たぞ」

「熊⁉なんだそれ」

 意味の分からない結果に少し戸惑っている様子のセロだった。


 次にティオを見た。

「お前は、雲外蒼天、じゃな、どんな困難も乗り越えた先には青空が見えるぞい」

「えー、意味わかんない、何だか難しい事言われたよ~」

 ティオも、不服そうにほっぺをプクーとさせている。


 次に、リケを見た。

「そなたは、女難にあうと出ておる」

「はぁ⁉何だそれ、あたしは女だぞ!何で女に難儀しなきゃいかんのだぁ‼」

 暴れるリケは、皆で取り押さえて宥めた。


「ほほっ、お主らのおかげで面白かったぞ、では、さらばじゃ」

「って、バァさま一人で大丈夫か、心配だから送ってやるよ」

 セロが言うと、バァさまは。


「そういう優しいところがお主の強さの素じゃ大事に抱えておけよ、お主らはこの道をまっすぐ行けばよい、その先はお主ら次第じゃが、幸運を祈っておるぞ」

 そう言って、背を向けて皆とは違う方向へと歩いてゆく。


「ありがとうおバァちゃん、気を付けてね~」

 ティオの可愛い声が響いた。


「ワシなら大丈夫じゃ、無事に一人で帰れると占いの結果が出ておるわい」

 そして、みんなから離れた後、ふと風に向かって独り言ちる。


「何を血迷うたかのう、あんな奴らにタダで占ってやるとは……このワシが、この年になって、あんな若造に胸キュンするとはのう、占いにもそんな事出てなかったぞい……」

 風は優しく木々を揺らし、木漏れ日がバァさまの歩く先を見守るように照らしていた。



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占いババ様さいこー! 彼女を仲間にすれば旅も安心。 すぐどこか行っちゃうティオくんもすぐ見つかる。 危険なキノコも食べなくて済む。 旅に勧誘してみてはいかがでしょう?
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