Ⅺ - 1
小川の一人暮らしが始まった。
厚木でバイトしてたファミレスが近所にあったらしく、落ち着いたら、土曜日だけバイトするらしい。
塾も近くにあったとか。塾って…
本厚木の駅近の塾に通ってたとか…
大学に行くのも父親の条件にあったらしいけど、やっぱりそうだよね。
「塾行ってないの⁉︎」
淡路は結構驚いた。須田はそれに驚いて笑っていた。
須田は部活があるので、通信教育をやってるらしい。塾は引退したら考えてるみたい。
須田は結構成績いい。10位以内にはいないが限りなくそれに近い、らしい…とクラスのヤツが言っていた。
「実際どうなのさ」
と聞かれ
「まあ、そんな感じ?」
と言っていた。11〜20位以内ってとこかな。
僕はこういう話ってどうなのかと思ってしなかったし、今まで話題にもならなかったけど、
思い切って聞いた。
「4月の進路志望って、あれってやっぱり大学だよね?」
4月の入学直後に進路志望調査書を提出した。
志望の学校(大学、短大、専門学校等)や企業があるのなら、記入する。
僕は悩んで、大学とだけ書いた。
「俺は大学って書いたけど、大学名書くの恥ずかしいっつうか、高望みって思われんのもやだなぁって思っちゃって…」
須田が言った。小川も
「わかる。俺も」
と言った。…と言う事は志望校決まってるわけ?
「三崎くんは?」
淡路に聞かれ、同じく、と答えた。
淡路は珍しく自分から大学名を言った。
須田と小川と僕も、ほえーみたいな声を出した。
「新聞学科があるんだよね」
「新聞学科?」
「うん、マスコミとかに強いんだ」
マスコミが淡路とイメージが合わないと言うか、以外だったけど
「出版社とかか」
と小川が言うと、淡路は嬉しそうに笑った。漫画に関わる仕事がしたいって言ってたもんな。 なるほどね。将来の仕事を考えたらそうなるよ。
将来何したいんだろう僕は。
小川や須田は国公立だろうなぁ。
父と兄は同じ私立大学だ。
祖父は高卒だけど、高校OBだ。ちなみに江ノ島の祖父もOB。
家で志望校の話は出ない。塾行かなくていいの、とか言われた事ないが、多分内心気にしてると思う。
と、言うのも二学期は三者面談があるからだ。話すきっかけになりそう。
面談は一学期もあったが、希望者だけで、母は申し込んでない。小川も須田も申し込まなかったとか。
今回の面談に向けても進路志望調査があった。今回は具体的な志望先を書く。
あと、将来就きたい職業。小さい頃はバスの運転手になりたかった。車高が高く眺めがいい。そんな理由だったと思う。
小学校の卒業文集に将来の夢コーナーがあって、探検家と書いた。
完全にゲームの影響。ゲームそのものは大好きだけど、それ以上に好きだったのが、その背景というのか舞台というのか、オープンワールドを巡るのが好きだった。もちろん戦っているけど、その最中にその景色に魅了されてしまい、ただ歩き回るという事をよくやってしまう。こっちは何かな、あっちはどうなってるのかなとか。それが楽しかったりしてる。だからと言って自分じゃとてもできないけど。
須田はやっぱりコンピューター関係で、電気系統の学部に進みたい。
小川は
「俺は文系かな、経済学部とか?」
と言い、須田が
「理系じゃないんだ」
と聞くと
「あっ、俺、理数系苦手」
と言ったので、三人で驚きの声をあげてしまった。
「てっきり、理系かと…」
「なんでよ」
「なんでって、なぁ」
須田が同意を求めてきたので僕は
「だって、満点で?」
と聞いた。
「あぁ、あれはひたすら暗記?」
僕は一気に疲れが出た感じ。二人もそう。淡路なんて半ば呆れてる。それができれば苦労はしないの。
「おまえはどうなんだよ」
「全然わかんない。父さんと兄ちゃんが行ってたところぐらいしか知らない」
本当です。
「青山先生と同じって事?」
小川が言うと、淡路はわぁって口を押さえた。
「青山先生もそうなの?」
「自己紹介で言ってたじゃんか」
と須田。覚えてない。
「前に三崎の兄ちゃんと大学までいっしょだったって」
と小川が言う。中高だけかと…
「マジか」
あー、まずい。はっきり言って、父たちと同じって無理。父も兄も政経学部だ。そういうの興味ない。
「だからって、おまえも一緒ってわけでもないんだろ?」
なんて優しく響くんだ、小川の声が
「うん、僕はどっちかって言うと、文系も文系だと思う、文学部?」
「教育系は?青山先生、教育学部だったらしいじゃん。教師とか」
「無理無理」
「そうかな、向いてると思うけど」
須田が真顔で言うのであたふたしてしまった。みんなから見るとそう思うの?
「いつだったかなぁ、錦に古文の文法教えてたじゃん。聞いててスッゲーわかりやすいなと思って、理解が深いのかなと思ったんだよね」
そんな事はあったけど、そうなの? 確かに嫌いじゃないけどね…




