描かれる私 3
5分たって私は「山根?」と呼ばれる。
「立って戻っていいぞ~」
ゆっくりと誰とも目を合わせないようにして目を開ける。
全く…。一日こうやって各教科担任に呼ばれ、結構目立った感じの時間を過ごしてもまだ私は人見知りだ。
1年の時に、そして今もだけれど、サクラちゃんとミノリちゃんがいなかったら、私は本当に一人ぼっちで、恐ろしく楽しくない毎日を過ごしていただろう。
あ、何かクラス中が疲れているような気がする。そしてこころなしか、
どうでもいい、って感じの空気に包まれているような…
実際どうでもいいよね。
みんなにとって私の夢なんてどうでもいい。だいたい私自体がどうでもいい。
席に戻る間、私は誰の絵も見ないようにする。
ていうか見たくない。
キタが言った。「じゃあどうしようかな。この後色塗る時に山根がやっぱり前に居た方がいいって人~」
みんなキョロキョロしているが誰も手を上げない。
何だろう…自分でも、色を塗るのに私がまた前に出る必要なんてもうないだろうと思ってるのに、こうやって誰の手も上がらないと、もうあんたいらない、って言われてるような気がして、もやっとした変なショックを受けている自分がいる。
「じゃあ山根はどうする?」とキタに聞かれる。
何がだよ?「何がですか?」
前に出たいと言うとでも思ったかキタ。
「みんなが色塗ってる間、山根はどうする?」
どうしよう?
「じゃあ」とキタが言う。「山根は今から自分が夕べ見た夢を描いてみて?」
嫌だ。困った私がヤグチに屋上に連れて行かれた夢をここでどう描けと言うのだろう。
「ハイじゃあ、ちょっと休み時間ズレるけど、10分休んだらみんなパステル取りに来て、前置いとくから。一人3本までね。そいで、いる色があったら貸し合って。みんなさ、僕が今日いい課題なくて、いい加減に思い付いた題材だと思ってちゃらけて描いてるとまずいよ?」
ピタッと美術室が静かになる。
「期末試験の実技テストに加算されるから、今日のやつ」
また美術室がざわつく。
止めて!マジで止めて。
「先生!」
私は勢い余ってせっかく腰掛けた自分の席から立ち上がった。
「他のクラスは?そんな私の事を絵に描くとか、そんなの期末テストに加算されるなんて、何かみんなに悪いし、というかものすごく恥ずかしいし、他のクラスはどうなんですか?クラスごとで違う課題が期末テストに反映されて、それがうちのクラスは『山根の夢を絵に描くこと』で、例えばクラスの平均点が他のクラスに比べてガタ落ちだったりしたら…」
私はこれから相当いたたまれない。
「他のクラスもおんなじ感じだよ。面白いな山根、そんな事を気にするなんて」
いや、全然面白くないから。
ざわざわざわざわ、美術室はみんなの惰性のざわざわでいっぱいだ。
いたたまれない気になる。




