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描かれる私 2

 右手の人差指で首のかゆい所をかく。1か所かくと体の、他のいろいろな所もかゆいような気がしてきて、あちこちに手を伸ばしたくなるがそれは我慢する。


 みんなどんなふうに描いてくれているんだろう。さっきよりはずいぶん気が楽になってきた。

早くみんなの描いたものを見てみたい。


 …座っている必要もないのにここにこうして居る私。

 …よくよく考えたら私、この教室にさえ居なくてもいいんじゃないかな。

 みんなが私の事を考えて描いてくれたら実際のここにいる私はいらない。



 私は誰かの夢の中に出演している自分を想像してみる。

 例えば江戸時代、着物を来て日本髪を結った私。

 例えば縄文時代。ドングリを拾って自分で作った土器に入れる私。

 例えば近未来。変に機能的な服を着て、わけのわからない乗り物を操縦している私。…そういうのたぶん、すごい下手くそそうだけど。

 例えば恋愛小説みたいな世界。勉強も友情もそっちのけで超絶イケメンに迫りまくられる私。



 …今この時が夢だと考えてみよう。

 一昨日桜井から『みんなの話を聞く』っていう話を聞いて、そして高森に変なお茶を飲まされて気分が悪くなって、実はあの後気分悪いまま私は気を失って、そして今ずっと夢の中にいる、と仮定してみよう。

 それからこれは誰かの夢なのだと仮定して見よう。


 …なんかこういうのあったよね?

 不思議の国か、鏡の国か、どっちかに行ったアリスの話の中に。

 どっちだっけ?…まあいいや、とにかく今私は誰かの夢の中にいると仮定してみよう。

 はっきりと、自分はここにいると感じるけれど、それでもこれは誰かの夢で、私は私の意思も持ったまま誰かの夢で誰かのために動く…



 「よし」とキタの声が私の斜め左前でした。

「後5分でいったん休憩な」

マジか!休憩の後またやるって事か。

「そいで」とキタが続ける。「その後はちょっと色塗ってみよう。もうそんなに描けてなくていいから」

描けてなくていいのか!

「絵具とかは?」と男子の誰かが聞いた。

「パステル用意するから」キタが答える。「それで適当に」

適当に!



 残りの5分間私は心を無にした。何も考えないようにして、まぶたの裏に集まった光を見るようにする。

 6月の雨が降りそうな空から来た、明るくない光。


 雨が降ったらバスで来ようかな、っていうツブツブからのメールを見逃したのが、今日の間違いの始まりだ。朝ツブツブともし一緒に来れていたら、私の今日の一日はやはり変わってきたのだろう。

 昼に送ったメール、ツブツブはもう見てくれたかな。

 やっぱ一緒に帰るように返事をしたら良かった。

 何も考えないようにしてもやはりこうやって考えてしまう。

 よく寺の修行とかで「心を無にする」とかってテレビでやってるけど、そんな技できっこない。

 少なくとも私には一生できっこない…


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